大地を守る会: 2007年12月アーカイブ

2007年12月27日

山藤 広尾店

 

昨夜は、今年最後の外での飲み会。

開店して間もない、大地の直営店 『山藤』 広尾店で締める。

 

『山藤』 の1号店である西麻布店はコース料理がメインで、

正直言って、我々には 'ちょっと軽く' という気分では入れないレベルである。

まあ、勝負どきに利用させてもらうって感じ。

 

一方、広尾店は単品料理で、値段もかなり抑えてくれている。

 

他団体の方との席だったので、料理の写真を撮ったり、は控える。

ま、もともとあまり、料理を前にして写真をバチバチ撮るのって、好きじゃない。

恥ずかしながら、料理を評したりするのも、実は苦手なのだ。

 

思うに、どんな料理であれ、

「まずい」 なんて言おうものならお袋から張り倒されて育ったのが、

すっかり 「料理」 を表現できない人間にしてしまったのではないか、

などと秘かに自己分析したりしているけど、

別に親には感謝こそすれ、不満も恨みもない。

 

終わりごろ、店内風景だけ撮らせていただく。

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定番の食材生産者の絵が飾られている。

 

葉物は東京有機クラブ。

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夕べは生産者の阪本啓一さんも来て、カウンターで知人と談笑されていた。

 

北浦シャモ農場。

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お米は神田長平くん。

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いただいたのは-

アジとイカの刺身に生ガキを1個、小松菜の煮浸し、キンピラ、里芋煮、

そして北浦シャモと短角牛の串焼き。

 

仕上げは、ご飯とお漬物。

 

どんなに褒めても結局は身内なので、賛辞は控える。

ただ、一緒に飲んでくれた方が 「美味い!本当に美味い」 と言ってくれたことは

お伝えさせてください。

 

特別に、一瞬だけ、と頼んで、厨房を覗く。

手前のお釜がイイね。

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いつもここにいるはずの、料理長のウメさんの姿が見えない。

 

雲隠れ?-まさかね。

年末最後の大勝負、『山藤のおせち』 の仕込みに取り掛かっているのである。

 

しばらく前に、おせち内容の仕様書が回ってきて、しげしげと眺めたことを思い出す。

 

通常の加工食品の場合は、「製造工程」となるのだが、

ここでその欄に書かれてきたのは、いわゆるレシピである。

 

レシピを見ても、ウメさんの腕の秘密が解き明かされるわけではない。

 

「焼き ⇒ 冷却 ⇒ 煮る ⇒ 煮る」 とか

「洗浄 ⇒ 浸漬 ⇒ 煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る ⇒ 仕上げ

 ⇒ 計量 ⇒ 金属探知機 ⇒ 品質チェック ⇒ 詰め」

を見たところで......

 

-いや、待て。

調味料の入れ時の違い、隠し味的な材料、

それに 「煮る ⇒ 煮る」 「煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る」 の行間あたりにも、

奥義の匂いを感じさせるものがある。

加えて、作業ごとの温度と時間の関係、特に時間だ。

 

最も時間をかけているのが、実は目立たない一品だったりする。

作業ではなく、その間の待つ (寝かす?) 時間だけで、しめて96時間!とか。

 

材料もすごいね。

揃えたくても揃えられる料亭はないのではないか。

 

山形村 (現岩手県久慈市) に住み着き、村の人々と山村の食文化に精通した

料理人・梅田鉄哉ならではの品揃えだ。

 

お値段も張ってしまって、ウチではちょっと......

我が女房どのは 「ムカつく!」 とか言ってるし。

まあ、いつか買えるよう、頑張って働くことにしよう。

でも数量限定だから、職員は注文しても、結局はじかれるんだろうけど。

 

ウメさんはいま、孤独に違いない。

集中力を研ぎ澄まして、命を捌 (さば) く。

お正月に喜んでくれる見たこともない家族の顔を想像しながら、

「煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る」 の作業を繰り返しているのだ。

 

頑張ってね、ウメさん。

 

どうか暮れぐれも、事故なく届きますように。

 

ちょっと 「種蒔人」 を飲み過ぎたか...

山藤のおせちには届かないけど、

贅沢な、年末最後の 「飲み会」 となってしまった。

 



2007年12月21日

だいちロード

 

......という名前の 「道」 が完成した。

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場所は、パレスチナ自治区-ヨルダン川西岸地区の北部にある

コフォ・ジャマールという村。

 

オリーブの畑に道路が引かれたのだ。


 

それまでこの畑、といっても岩山にオリーブの樹が点在する土地だが、

そこには道がなかった。

 

なにしろデコボコの岩山。

車は入れず、収穫する時も、肥料をやる時も、

すべて岩場を登ったり降りたりしながらの人力作業だった。

 

ここに道をつくろう。

 

昨年、取り扱いを始めたオリーブオイルの現地を訪問した際に、

オイルという商品の流通にとどまらない支援策が話し合われ、

「パレスチナ平和の道プロジェクト」 が立ち上がった。

 

これをきっかけに、大地を守る会の国際支援基金制度として

「DAFDAF(ダフダフ)基金」 が正式に設立され、

「道」 は最初の支援プロジェクトとして位置づけられた。

 

DAFDAFとは、

The Development Assistance Fund of Daichi for Asian Families の略。

「交流先の農民や家族の生活向上や農業の技術向上などのために支援を行なう基金」

というような意味合い。

20年くらい前から進めてきたアジアを中心とした海外の農民たちとの交流を

もう一歩進めて、

交流先の有機農業の発展を具体的に支援するプロジェクトを進めようというものだ。

 

「パレスチナ平和の道プロジェクト」基金の呼びかけが行なわれ、

応じてくれた会員数は1,487名。 集まった基金が1,449,000円。

 

そして、道が完成した。 全長1.3km。

 

もちろん大地からの基金だけでなく、

現地の人々も、ある人は土地を提供し、ある人はお金を出し、あるいは労働力を出して、

みんなの手でつくられたものだ。

 

道路の入口に立てられた看板。

「DAICHI WO MAMORU KAI」 の文字が、何だか面映い感じ。

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現地のオリーブ生産者やその家族にとって道ができたことは、

我々の想像したより遥かに嬉しい出来事だったようだ。

11月に現地を訪れ、道路を確認した大地のツアー一行は大歓迎され、

その道を歩くのに大勢の人がついてきたという。

 

畑まで、足元を気にせず行ける。収穫した実を車で運べる。

彼らにとって 「道」 は悲願だったのだ。

 

道の中腹で、関係者と記念撮影。

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生産者の代表から、感謝状ならぬ、

オリーブの「感謝切り株」 が藤田会長に手渡される。

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「道ができて、みんな喜んでいる。

 道ができてから、みんな元気が出て、村が活性化している。」

村長さんからは、そんな話もいただいたようである。

 

オリーブの収穫は、家族みんなでの作業となる。

子どもたちも手伝うのだそうだ。こんなふうに。

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ここではパレスチナの歴史や政治はあまりに重たすぎて触れられないが、

彼らはただ昔からこの地にいて、したがっていつまでもこの地で、

平和にオリーブとともに暮らしたいのだ。

 

私たちはテロリストなんかではありません。

そのことを日本の人たちに伝えて欲しい......

 

これが視察ツアー一行に託されたメッセージである。

 

ツアー一行は帰る前に、イスラエルの人たちとも会っている。

皆とてもいい人たちで、大地の取り組みにも理解を示したという。

日本人ということでの配慮も多少はあったかもしれないが、

憎しみや偏見や予断のないところでは、

人と人は自然に分かり合えるものだと思いたい。

 

問題は根が深く、あまりにねじれ過ぎてしまっているので、

これ以上、軽々しいコメントはできない。

しかし、平和はけっして政治だけで築かれるものではない。

その前に、人と人が分かり合い、助け合う 「道」 が作られなければならない。

 

ツアーに同行した職員から報告を聞いて、写真も借りられたので、

この場でもお伝えしたく、書いてみた。

いいお手伝いができたんじゃないか、と思う。

僭越ながら、ご協力いただいた皆さんに、改めて心から感謝したい。

おそらくは機関誌 「だいちMAGAZINE」 でもレポートされるはずなので、

その際はぜひご一読を。

 

報告を聞いたその日、

「パレスチナ子どものキャンペーン」 という教育や福祉面での支援をしている団体からの、

パレスチナ刺繍製品の審査を通過させた。

パレスチナを支援するNGO同士の横のつながりがないのが気になるところではあるが、

我々は我々のできる範囲で 'つながり' を深めていきたいと思う。

 

ちなみに、DAFDAF基金では、ふたつ目の支援プロジェクトが進んでいる。

ミャンマーでの有機農業の農場を支援する計画だ。

こちらにはすでに1,576,500円の基金が寄せられている。

 

いずれも複雑な国情をもつ場所だけど、

だからこそ民衆レベルでの元気が出る物語を編み出したいものだ。

 



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