大地を守る会: 2008年3月アーカイブ

2008年3月 1日

身近な環境セミナー

 

さて、別室で開催された 「身近な環境セミナー」 へと移る。

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ホールからセミナー室に入れば、

LESSON-1 『 "エコシフト" チャーミングに世界を変える方法 』 が続いている。

講師はマエキタミヤコさん。

自分を楽しく変え、社会をチャーミングに巻き込んでいくためのノウハウについてのお話。

 

(※上の写真はLESSON-3の様子です)

 

たしかに、最近のキャンドルナイトやフードマイレージ・キャンペーンといったムーヴメントは、

ちょっと古いタイプのワタシには、新しいセンスの登場を感じさせるものだ。

この仕掛けがあっという間に社会に広がったのには、彼女の存在も大きい。

 

質疑の最後で、参加者からこんな質問が上がっている。

「こういう集会に男性(熟年オヤジ) を参加させるにはどうしたらいいでしょう」


マエキタさんの回答はこう。

「無理やり引っ張り出そうとしてもかえって逆効果になるかも。

 その人の好きな話題や趣味、たとえば釣りとか、から

 こういった世界に関心を持たせるように仕向けていったらどうでしょう。」

 

このテーマには、実は私にも秘めたアイディアがある。

でも団塊の男たちを相手にすると考えただけで、あとが面倒くさい、

というのが我々世代の共通感覚でもあって、どうも前向きになれなかったりする。

 

それにしても、と出番を待ちながら思う。

俺には、こういうチャーミングな話題での司会というのが回ってきたことがないなぁ。

 

ま、考えるだけ無駄か、と気を取り直して、

LESSON-2 『遺伝子組み換え最前線』 に入る。

講師は 「市民バイオテクノロジー情報室」 代表の天笠啓祐さん。

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いまどんどん増加の一途をたどる遺伝子組み換え作物の状況。

すべての背景はグローバリゼーションにある。 みんなが "安さ" を求めているからだ。

バイオ燃料の需要で、生産量は増えているのに価格も上昇している。

需給バランスで動いてきたはずの価格が、投機によってつり上げられている。

コーンの連作により土壌バランスが壊れ、障害が起きてきている。

その対策に殺虫毒素を組み込んだりして、2種、3種の混合組み換え作物が出現している。

国内での分かりにくい表示の問題。

動物の世界では、3倍体のサケが実用化されようとしている。

こういった動向が伝えられる。

 

う~ん。 では私たちはどうすればいいのか。

それこそチャーミングに世界を気づかせる方法はないものか。

妙案はまだ霧の中だ。

 

無理を承知で、この間抱き続けている疑問を天笠さんにぶつけてみる。

「除草剤耐性+殺虫毒素といった混合遺伝子組み換えの技術はさらに複雑になってゆくだろうが、

 自然界では順次それに対する耐性が生まれ、

 品種改良と耐性のいたちごっこのスピードもまた速くなっていくと思われる。

 一方で土壌は疲弊していってる。

 どこかで作物生産自体が立ち行かなくなる崩壊の時が来るのでは、と思うのだが、

 天笠さんの見通しは?」

 

天笠さんの答え。

「それが分かるなら、教えてほしい。」

 

はっきりしていることは、

穀物の安定供給のためには、土の健全さを維持し、多様な種を保持することこそが、

持続可能な道であるということだ。

何としても、生産と消費のつながりで非遺伝子組み換えの世界を守り続ける。

そしてただ遺伝子組み換え作物を拒否するだけでなく、

生態系の多様性の保持を、「未来を保証する豊かさ」 として魅力的に語るための視点を、

そして言葉を、私たちは獲得しなければならない。

 

LESSON-3 『 「農の未来」の扉を開けよう 』

ひとつのヒントがここにある。

講師は 「農と自然の研究所」 代表・宇根豊さん。

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食の 「安全」 というが、安全は食べものの一つの価値でしかない。

その安全を、分析・検査や証明 (認証) で確かめなければならないような、

そんな社会をつくってしまったことこそ、農薬というものの最大の罪悪である。

安全証明を成分検査で確かめるというのは、そのモノの内部に向かっているが、

安全・安心を外側から確かめることだって可能なのだ。

 

たとえば赤トンボは日本じゅうで約200億匹生まれているが、

その99%は田んぼで生まれている。

カエルはその5倍はいて、カエルもまた98%が田んぼで生まれる。

たとえばアゲハチョウはセリ科の葉っぱを食べる。

無農薬で人参を育てると、アゲハチョウも育つ。

赤トンボやカエルやアゲハチョウを育てているのは、実は農業である。

(彼は 「農業」 とは言わず、 「百姓仕事」 と表現する。)

ただ人参の生産性だけを考えて農薬を撒けば、蝶との関係は崩れる。

安ければいいと輸入に頼って、この国から田が消えれば、赤トンボも消える。

 

そんな生きものの目から、食べもの (の価値) を見つめる、

そんな "まなざし" を取り戻したい。

それこそがいま提唱している 「田んぼの生きもの調査」 の意味である。

自然は生きものの生命で満たされていて、

生きものが賑わう世界、そこからこそ (安全な) 食べ物はつくられる。

(彼は 「作る」 とは言わず、 「できる」 「なる」 と表現する。)

稲は稲だけでは育たないのだ。

ホンモノの安全・安心の物差しは、生命とのつながりを見る "まなざし" のなかにある。

 

食べものは自然からの使者である。

人と自然は、食べものによってつながっている。

自然は毎日食卓に上がっている。

食べものが自然を伝えている。

 

百姓の仕事が、自然の風物や四季の風景をつくった。

風景を美しいと思うのは、そこに百姓仕事が生きているから。

百姓は、その仕事の楽しみで踏ん張ろうではないか。

仕事の中身で人生を生きてゆこうではないか。

 

「宇根ワールド」 の深い情念の世界を、僕はどうしてもまだ伝えられない。

でも少しは感じとってもらえただろうか。

前にも書いたけど、有機農業運動に宇根豊という人物を得たことは、とても幸運なことだ。

そして百姓仕事に誇りを持つ生産者とつながっていられることに、私たちの幸運もある。

我々運び手は、そのお米・その野菜がもっている "意味の全体" を伝える

まなざしと方法を、獲得しなければならない。

できればチャーミングに。

 



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