大地を守る会: 2008年7月アーカイブ

2008年7月14日

今日はアフリカから-

 

最近とみに海外からの視察が増えている。

通常は、大地を守る会の国際局で対応するのだが、

農業分野での視察や研修内容によって、こちらに出番が回ってくることがある。

 

今日やってこられたのは、

ケニアとタンザニアで農業技術指導をしているという政府職員さんたち4名。

研修を依頼してきたのは、通称 「ジャイカ」 (JICA) と呼ばれる国の外郭団体、

「国際協力機構」 (Japan International Cooperation Agency) である。

青年海外協力隊を派遣している団体と言えば分かりやすいだろうか。

我ら農産グループ内にその協力隊出身者がいて、その職員を経由して

話が正式に舞い込んできた。

 

農村開発に取り組むアフリカの政府職員が、

なぜ有機農業の活動を行なう我々のところに?


その辺は自分もよく分からないのだが、

どうもこの国の農業に関するひとつの潮流として注目を頂戴したみたいである。

 

今回も例によって、日本の戦後の農業の歴史から紐解きながら、

大地を守る会とは何ぞや、を理解していただくのだが、

場所は本社の会議室ではなく、習志野物流センターで実際の物流ライン業務も

見てもらいながらの講義とする。

 

ここでも、彼らの目が輝いた (と見えた) のが、

大地を守る会の誕生から事業の拡大へといたるプロセスであったようだ。

加えて、生産者との関係と栽培情報の細かさ、だろうか。

 しかし、この間私が説明したアメリカ人ともオーストラリア人とも違うと思った

特徴的な反応は、「生産者が契約を守るのか?」 という疑問だった。

市場価格が高くなったら、そっちに出すのではないか?

僕の回答は極めて簡単で、

「そんなことをすれば、市場が安い時に (ウチに) 出せなくなります。」

どうやら、彼と彼女らの悩みどころは 「約束を守らない」 農民、というあたりか。

そこにはどうも、自分が想像し切れてないお国事情があるように思われる。

 

有機農業が近代農業と根本的に違うのは、

農薬や化学肥料を使わない、という単純なことではなくて、

それを可能にする技術と思想にある。

特に、地域資源を活かしながら環境を保全し、自給型の農業を考える際に有効である。

それは、交換価値を地域 (あるいは仲間) で回しあう、つまり自立につながる。

 

本来は最も豊かであったはずのアフリカを貧しくさせたのは、環境でも生産技術でもなくて、

モラルを喪った自由主義経済とそれを後押しした国際政治だと思っているのだが、

短時間の研修時間ではコミュニケーションできなかった。

 

おそらくは、彼らのお国の都市で大地のような宅配システムが有効とは思えない。

どうか、自前の生産技術の維持と、それを支える国民(消費者)という

独自の生産-消費モデル作りを進めて欲しい、と願ってやまない。

それが、この星の多様性を守ることになるはずだから。

 

もっと語り合いたいものだが・・・

とか思いながら、新しいトラックをバックに一枚撮って、お別れする。

e08071403.JPG

 

それにしても・・・・・最初から気になっていた。 どことなく元気がないのだ。

聞いてみれば、やっぱり。 この時期の、日本の湿度にやられたね。

「ニッポン、暑いです」

赤道直下の、しかも身体能力の高いアフリカ人も参らせる

アジア・モンスーンの凄さよ。

 

これをかつて (昭和3年)、和辻哲郎という哲学者が分析している。

『 湿気は最も堪え難く、また最も防ぎ難いものである。 にもかかわらず、

  湿気は人間の内に 「自然への対抗」 を呼びさまさない。 その理由のひとつは、

  湿潤が自然の恵みを意味するからである。』 

                -和辻哲郎著  『風土-人間学的考察』 (岩波文庫 ) より-

 

僕らの哲学は、80年前の和辻より進化したのだろうか。

小賢しい科学技術論で重箱の隅をつつきあうような論争はやめて、

この列島の気候風土と、それが育んだ文化に、もっと身体を近づけてもいいんじゃないか。

それだって、この国が果たせる国際貢献のひとつだと思っている。

 



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