大地を守る会: 2010年6月アーカイブ

2010年6月20日

ダイアログカフェ & キャンドルナイト

 

沖縄レポートの途中だが、今日はキャンドルナイトの日。 

増上寺に行く前に、昼間、もう一つの集まりにも参加してきたので、

二つあわせて報告しておきたいと思う。

 

まずは午後1時から、青山学院大学で開かれた

「第2回 環境ダイオログカフェ ~食から考える生物多様性~ 」。

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昨年、米づくりと環境教育プログラムでお手伝いした 「NPO法人 たいようの会」 と、

青山学院大学小島ゼミの主催で開かれた。

小島ゼミとは、元環境省地球環境審議官の小島敏郎さん (現青山学院大教授) が

持っているゼミのことで、小島さんはたいようの会の専務理事でもある。

 

今年10月、「生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)」 が

名古屋で開催されるが、世間の関心はまだイマイチの感がある。

そこで学生から社会人までが一緒になって、

生物多様性を身近な 『食』 との関係から考えてみようということで召集がかかった。

 

大地を守る会もおつき合いのあるクリエイティブ・ディレクター、マエキタミヤコさんを

コーディネーターとして、ダイアログカフェという手法で進められる。

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写真前のテーブルの左にいるのが小島敏郎さん。

 

ダイアログカフェとは、まず立場や年齢や文化の異なる人たちが

小さなテーブルに分かれ、それぞれで意見を交わし、アイディアを出し合いながら、

そのテーブルでの合意を導き、ひとつの文章にまとめる。

スローガン的なコピーではなく、具体的で主語述語の整った文章にする。

次に最後に全体で討論しながら出された文章を加筆したり削除したり

別々のものをくっつけたりしながら、

会議全体の総意としてまとめ上げてゆく、というもの。

民主的な合意形成の方法として、昨今は国際会議でも採用されているようである。

 

今回の討議テーマは、次のように設定された。

「食」 に対しては、安心、安全、味、価格など多様な要求があるが、

それらの個人的な要求と 「生物多様性」 を共存させるための具体的提言をまとめてみよう。

 


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出された意見は、

できるだけ国産のものを食べる(自給率の向上)、地産地消の推進、

ゴミを出さない、メディアやネットを活用して多くの人に伝える、などなど

特段目新しいものはなかったが、討議の結果を全体の提言として文章にまとめる、

という作業の行程が面白い。

「もっと具体的に」 とか、「それで目的がどう達成できるのか」 と

キャッチボールが繰り返されているうちに、それなりの提言にまとまっていくのだ。

学生たちから 「(安全・安心や生物多様性保全のために) 農家に補助金を出す」

といった提案がなされ、それに対して社会人から 「安易な補助金頼りはいかがなものか」

といった反応が出る。

なかには 「(食情報の乱れに対して) マスコミに規制をかける」 といった意見が出て、

批判を浴びる場面もあったりして。

 

テーブルでのセッションは2回に分かれ、出された提言は40を越えていたか。

時間切れで、結局最後のまとめまで進められなかったが、

食と生物多様性というテーマに学生たちが感じ取っているレベルが推し量られ、

それなりに楽しい刺激を受けた会議となった。

 

会議後の懇親会はパスして、増上寺に走る。

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けっこう集まってきている。

なにより雨でないのが嬉しい。

我々スタッフの感覚では、それだけで成功である。

 

到着後、ただちに会場警備を指示される。

トランシーバーを渡され、境内をウロウロする係。

所定外ののところでロウソクをつける人がいたら控えていただき、

後ろが込み合ってきたら前に詰めるようそれとなく誘導し、

トランシーバーからは 「アーティストの写真撮影は注意するように」 と指示が入り、

迷子のお子さんの連絡が入るとそれらしき女の子を捜し、

東に喧嘩あればツマラナイカラヤメロトイヒ・・・・・

 

ま、このイベントに来る参加者は基本的に行儀がいいので、

さほどの仕事はなかったのだが、さて皆さん満足していただけたかどうか。

会場関係で見きれなかった点、至らなかった点などあったら、ごめんなさい。

 

17時50分、明星学園の和太鼓でステージ開演。

田んぼスケープでコラボさせていただいている文化人類学者・竹村真一さんと

大地を守る会会長・藤田和芳のトークが行なわれる。 

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続いて、Yaeさん+カイ・ペティートさん(ギター)、Skoop On Somebody さん

のライブ。

 

20時を前に、東京タワー消灯のカウントダウン。

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10,9,8,7,6,5 ・・・

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4,3,2,1,ゼロッ !

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お見事。

 

あとはゆったりと、中孝介さんの歌声を聴きながら

それぞれの時間を、ロウソクの灯とともに、どうぞ。

 

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我々は静かに見回りつつ、

石段に落ちたロウを剥がしたりしながら片づけに入る。

22時過ぎ、解散。

やっぱビールでも飲まないと、となって・・・・

いつになっても、俺たちにスローな夜は許されない。 

 



2010年6月 7日

守る会総会を終えて

 

6月5日(土)、2010年度の 「(NGO)大地を守る会」 総会を終え、

遅くまで職員たちと飲んでしまって、少々けだるい週の始まりである。

年に一回の最高議決機関を乗り切った安堵感も、多少手伝っているような。

役員の改選も紛糾することなく承認いただけたし。

 

前年度の活動報告に決算、今年度の活動方針に予算、

それぞれを審議いただき、承認を得る。

運動体としての 「NGO 大地を守る会」と、事業体としての 「株式会社 大地を守る会」 を、

車の両輪のように走らせながら運営してきたのが 「大地を守る会」 の特徴だが、

両者はけっして切り分けられるものではなく、

NGOの総会であっても、個々の質問はすべて両者にまたがっていて、

いつしか渾然一体となった議論になってしまう。

 


 

たとえば、ある活動部門で 「事務局員が足りない」 と指摘されれば、

受け手は 「そう簡単に社員は増やせないよ」 と考えながら回答していたりする。

 

たとえば、  " 有機農業を拡げる "  は会の基盤ともいえる運動理念であるが、

いろんな運動を展開しつつも、現実に生産者を増やし、

彼らの経営が安定していく力を与えられるのは事業部門のはたらきである。

つまるところ、運動の質や成果を議論する際には、

結果的に " 事業部門の今 " が問われるという形になり、

必然的に (株)大地を守る会に対して厳しい目が向けられる。

NGOで立派なことを言っても、やっていることは何よ! というわけだ。

 

この  " 運動と事業の両立 " という理念を成立させるためには、

生産と消費というやっかいな対立構造を、現実の流通 (売買) という場で

どう止揚していくかが常に問われるわけだけれど、農産物の場合、

生産者とは量も値段も契約したうえで、一方で消費者からは任意の注文制という形で

モノを動かしている以上、そのひずみは、常に余剰と欠品という現象となって現われる。

その悩みが時に集中的に表現されるのが、

「野菜セット・ベジタ」 (組み合わせお任せの野菜セット) といった

調整弁的な機能を持って設定されたアイテムである。

これがなければ 「好きな時に好きなものを」 注文できるというシステムの

根幹が揺るぐことになるのだが、これすらも消費者の支持がなければ持続できない。

 

都市生活者の需要(ニーズ) と地方の生産力をマッチングさせるには、

相応の市場機能的調整能力が必要になるところだが、我々の今の力では、

ただただ相当なストレスを消費者にも生産者にも与えてしまっていることになる。

 

しかもこれは量や値段といった問題だけではない。

当会の会員には、陰陽の考えにもとづく食養論を大切にするマクロビオティックの方もいれば、

食物アレルギーを持った方もいる。

あるいは環境負荷の視点で現実の矛盾が厳しく指摘される。

象徴的なのがトマトの旬の問題であったりして・・・。

圧倒的なトマトの需要と、冬場にトマトをセット野菜に入れてくれるなという

明確な思想的抗議を前に、僕らの説明は視点によってブレ続ける。

 

自給率を圧倒的に下げている勢力であるにも拘らず、

胃袋が集中する都市の要望 (圧力) は実に多様で、時にわがままである。

一方で、僕らが支援し育てるべき生産者は全国に点的に存在する人々である。

需給の規模や距離もアンバランスな中で、

この両者を上手につなげ、さばいていくことがまだできないでいる。

そういう意味で、この運動は常に成長の過渡期であり、

過渡期のストレスを乗り越えるには、知恵と工夫と、したたかな戦略が求められる。

大地を守る会が標榜する 「オーガニック革命」 に戦略はあるのか、

それは事業に反映されているのか、ということなんだろう。

 

総会では、ベジタの全面改定に向けた検討を開始していることを伝え、了解を願った。

一つの課題を乗り越える知恵と工夫に、「腹案はあります」 と言ったあとで、

縁起が悪いので撤回したが、ないわけではない。

 

こんなふうに35年、愚直に議論してきた団体である。

運動を語り合いながら、現実の流通を議論する。

生産と消費の圧力を受けながら、儲けると株主(=会員) に叱られる。

そんな組織って、他にあるだろうか。

実にしんどい。

 -といいながら28年になろうとしている。 そうとうM的人間になった気がする。

 



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