2012年9月 3日

NEWS 大地を守る2012年9月号 やまけんの大地を守るうまいもん探訪

稲田コシヒカリ

鼻腔に抜ける甘やかな香りにびっく
 大地を守る会がWeb上で展開している「ちゃんと(T)たべもの(T)プロジェクト(P)」略して「TTP」をご存じだろうか。まことにけしからん「TPP」と真面目に対決するこの企画で僕は、福島県須賀川市の稲田稲作研究会を訪ねた。福島第一原発から70km地点で彼らは稲作を続けている。被災直後から、放射性物質を作物に吸収させない技術を追求し、収穫前・収穫後・そして精米してからの各段階すべてを高精度の測定器で計測してきた。その結果、世界で最も厳しいといわれるウクライナ基準である20Bq/kgを超すコメは一切出ていない! ちなみに、日本の基準は100Bq以下だけれども、稲田のボスである伊藤俊彦はきっぱりと言ったのだ。「俺たち福島で生きていこうという人間は、ただでさえ線量の高い中にいるんだから、食べ物に関しては安全性を追求しなきゃいけない。だから世界一厳しいといわれるウクライナ基準をベースとしようと思う。やっぱりチェルノブイリの事故を真っ正面から受けた国の知見は深いんだよ」
 僕はこの眼でしかと、籾付きの米の検査作業を観た。
その数値を観て、僕の中に少しくすぶっていた「大丈夫かな」という疑念は消えた。「新米、食べてくでしょ?」と炊きあげてくれたコシヒカリの艶やかなこと! 一口頬張ってビックリ、口に入れた瞬間に鼻腔に抜ける甘やかな香り、蠱惑的に歯にまとわりつく粘り、そしてすっきりとしていながら強く印象に残る旨み。「今年の福島の米を食べないのはもったいないことだよ」と誇らしげに言った伊藤さんの顔を今年も、来年も、ずっとずっと見てみたい。


山本 謙治(やまもと けんじ)
1971年、愛媛県に生まれ、埼玉県で育つ。農産品・食品などのコンサルタント会社(株)グッドテーブルズ・代表取締役社長。
『日本の食力? 国産農産物がおいしい理由』ほか。ブログ「やまけんの出張食い倒れ日記(www.yamaken.org)」が人気。

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