2012年12月 3日

NEWS 大地を守る2012年12月号 若手生産者特集

                           この春に大学を卒業して就農したばかりの23歳。



日本の農家の数は減少を続けています。

農林水産省の調べによると、2010年の総農家数は、252万8千戸で、5年前に比べて32万戸

(11.2%)減少※しました。また、農業就業人口の65歳以上が1.6%※を占め、高齢化が進んでいま

す。そのような状況のなかでも、若い世代が農業を仕事として選びがんばっている姿があります。

若き就農者が育てた作物を食べることは、就農者の生活を支えて自立を応援し、日本の食を支える

ことにつながります。大地を守る会は、消費者の皆さんとともに就農者を応援していきたいと考えてい

ます。いま、未来の日本の食の担い手たちが、どんな気持ちで農業に携わり、どんな未来を描いてい

るのか、率直な気持ちをお聞きしてきました。

※出典:農林水産省「2010年農林業センサス」


僕たちが答えました!

人の若手生産者へインタビュー!

黒瀬 友基さん       内田 健夫さん         小田々 仁徳さん



千葉畑の会 内田 健夫さん  23歳
  花嫁募集中!です。

PROFILE

千葉県八街市にある千葉畑の会は、大地を守る会のスイカの食味会でも

おなじみ。秋・冬は落花生や生姜、大根、ニンジンなど、夏はスイカやレタ

ス、かぼちゃなどを栽培しています。2012年春に東京農業大学を卒業した

ばかりの若き三代目です。


               祖父や両親のすごさを実感しています。


生育から販売までの過程を楽しんでいます

 うちは祖父の代から続く農家です。自分には兄弟がいないこともあって、漠然とですが、将来は家

業を継ぐのだろうなと思っていたので、自然と農大に入学しました。就活の時期になっても、自分は農

家を継ぐと決めていたので就職活動をしませんでした。卒業式の翌日から就農すると言ったら友だち

に結構驚かれましたね(笑)。農大でも農家の子どもって、結構少ないんですよ。たぶん自分の学科

の1〜2割ぐらいだったと思います。

 大学では植物病理学研究室に在籍していました。近頃は、化学合成農薬ではなくて微生物を使っ

た農薬が注目されています。研究室では、そういった時代の流れに沿って、微生物を活用した農薬

の開発や植物の病気の研究などをしていました。ただ、大学では理論分野がほとんどで実技が少な

かったこともあり、いま仕事をしているとわからないことも多いです。そんなときは、一緒に働いている

両親や近隣の農家の人に相談にのってもらっています。

まだ就農して間もないですが、農業はなかなか簡単にいかないものですね。この前もニンジンの種を

蒔いたんですが、強い雨にたたかれて発芽しなかったり...。

天候に左右されて思うようにいかないことも多いです。

その反面、自分が育てた野菜を販売する段階まで携われることはやりがいですし、その過程を楽しん

でいます。

求められる農業を追求していきます

 家の手伝いとしてやっていたときは、単純に作業を覚えるだけでした。いまは、どういう作物をどれく

らいの量つくるかといったことを意識して、経営をしていかなければと思っています。

 安全・安心な野菜をつくることは、当然のことです。ただ、おいしさに特化した品種のなかには、農

薬を使わないと収穫量が確保できないものもあったりするんです。安全・安心とおいしさを両立させて

いくのはとても難しいことなんですね。でも自分はこれからも農薬や化学肥料に頼らずに「求められる

農業」に挑戦していきたいです。


 例えば、若い人のなかには、皮をむいたり調理をしたりするのが面倒だからと野菜を食べない人も

多いようですが、そんな人たちにも野菜を食べるきっかけをもってもらえるように手軽に食べられる加

工品をつくることも考えています。インターネットの活用など新しいことも取り入れながら、これからの

農業を作っていきたいです。


みんなに愛された祖父・賢次さん

健夫さんの祖父・賢次さんが亡くなってはや4年。この写真は亡くなる

ちょうど1年前の商品カタログ「プロセス(現・ツチオーネ)」に掲載された

ものです。「内田のとっつぁん」という愛称で親しまれていた賢次さん。

「この人からスイカ作りを取り上げたら何が残るんだろう」とまで言われて

ました。そんな賢次さんのことを大地を守る会の農産担当たちは「スイカ

の精」と呼んでいたとか。賢次さんは、夏の人気イベント「スイカの食味会」

などを通じ、スタッフはもちろん、多くの消費者をいつもこの笑顔で迎え

入れてくれました。




大地と自然の恵み  小田々 仁徳さん 28歳

PROFILE

大地と自然の恵みは、過疎が進む高知県香美市にあり、生姜やオクラ、ニラ、青ネギ、ミニトマト、子

などを栽培しています。仁徳さんは、グループの代表者・小田々 智徳さんの息子です。就農4年目。


生命の力を感じる瞬間に素直に感動します

「大地と自然の恵み」は、高齢化で耕作ができなくなった農家の畑を借り受けて、有機野菜を栽培し

ています。

20〜30代の若いスタッフを採用して地域を元気にしようと、父やスタッフのみんなと一緒にがんばって

います。農業には小さな頃から興味があったんですが一旦、ふつうの企業に就職したんです。

でも、社会人になってから、ますます農業への想いが強くなって、4年ほど前に農家を継ごうと決めま

した。以前の会社では週休2日だったんですが、農家はそんなわけにはいきません。時間を惜しんで

農作業をすることもありますし、自分が自由にできる時間が限られるのは、大変なことの一つではあ

りますね。でも、野菜の種を蒔いて芽が出たときは素直に感動します。生命の力を感じるんですよ。

 日本にはファストフードが普及していて自分も食べることがありますが、最近は、妻のつくる料理が

いちばんおいしいと思うようになりました。農家をやっているとそういうことに改めて気付かされます。

これからの日本の農業を守っていきたいです

 TPPが結ばれると、農作物の価格を下げないと売れなくなってしまうのではないかと心配です。そう

ならないためにも、農作業や知識をしっかりと身に付けることで、日本の農業を守っていきたいです。

いまは、大地を守る会などを通じてたくさんの県外の人たちに野菜や果物を食べてもらっています

が、これからは、地産地消にも積極的に取り組んでいきたいですね。






ライスロッヂ大潟 黒瀬 友基さん 35歳

PROFILE

ライスロッヂ大潟は、湖を干拓して45年ほど前にできた秋田県大潟村にあります。有機農業でお米

(あきたこまち)をつくっている農家の二代目で、両親と妻、3人の子どもと共に暮らす7人家族です。



父と格闘しながら農業の奥深さを学んでいます

 大学を卒業して、そのまま東京でサラリーマンをやっていたのですが「農家を継いでほしい」という

父の強い気持ちがありまして、6年前に地元に戻って農業を始めました。正直、以前は作物を育てる

ことにそれほど興味がなかったんです。でも、いざやってみると農業はとても奥が深い。いろいろと新

しい発見がありますし、いまはとても楽しんで農業をやっています。いちばん大変なのは、父とのやりと

りですね(笑)。

もちろん農家としての経験や栽培技術は信頼していますし、学ぶことも多いのですが、「もっと言い方

を考えてくれたらいいのに」と思うことがあります。

息子には、つい言い方がきつくなってしまうのかもしれませんね。

感謝の言葉が何よりの原動力です

消費者の方々には、もっと「食」について興味や関心をもって、安全・安心なもを選んでもらいたいと思

っています。でも、そのためには生産者側が、安全・心な食品についてしっかりと考えて、消費者の

方々に対して能動的にコミュニケーションをとっていくことが大切です。お客さんから「おいしい」とか

「安心し食べられるお米をありがとう」といった言葉をもらったときがいちばん嬉しいので、そういった言葉

をもらえるように努力を続けたいです。

 大地を守る会の会員さんのように、食や農業について関心が高い人たちのお陰で、私たちは有機

農業を続けることができているんだと思います。ときには厳しいご意見をもらうこともあります。でも、そ

ういったことも含めて、農産物への感想や質問をもらうと、消費者の方とつながっていると感じられる

んです。

それが手間のかかる有機農業を続けようという原動力になっています。





友基さんの父・正さんは滋賀県出身で、1975年に大潟村に入植。
米の販売自由化以前から消費者に直接販売する産直運動の先駆者
として有名な方です。

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