ヒストリー

走り続けて40年、大地を守る会の原点をたどる

【第22話】短角牛高騰!-試練は続く

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大地を守る会との取引開始から10年強を経て、村は自立に向けて舵を切り始める。

日本短角種だけでなく様々な村の資源を活かして、自分たちの力で村を活性化させていこう。その期待を一身に背負って、1994年1月、第3セクター「総合農舎山形村」(以下、農舎)が設立された。

村の最大資源である山形村短角牛をベースに県内外への販路拡大だけでなく、短角カレーや山ぶどうワインなど様々な加工品の開発に取り組み、この間に従業員は30名以上となった。その殆どが地元雇用である。

総合農舎山形村のみなさん

もちろん課題はいくつもある。農舎においても、まだ大地を守る会での販売に依存していることが大きいが、それは逆に見れば、安全基準のたしかな製品がつくられているということでもある。加えて恵まれた製造環境に、山ブドウやマツタケなど希少価値の高い素材がある。それらを活かした模索が今も日々続けられている。

安全な食材を手に入れ販売するだけでなく、短角をブランドに育て、地域の自立的発展という課題にも地道に応援を継続する。大地を守る会は、「山形村短角牛」を通じて「産直」という枠を超え、社会的ミッションを持つ団体として育てられてきたと言えるだろう。

大地を守る会が「社会的企業」と言われる所以がここにある。けっして様々な「運動」を展開しているからではない。「事業を通して新しい社会を創造していく」ビジョンを持つ組織だから、なのだ。僕らはこの宿命的な意味を忘れることなく持続させなければならない。

総合農舎山形村 

ここで直近の厳しい情報も付け加えなければならない。

かつては市場から見向きもされなかった「日本短角」も、“知る人ぞ知る短角”に成長し、健康志向の追い風もあって、今や赤身肉はブームとまで言われる。

それは一見喜ばしいことのようではあるが、事態は恐ろしい方向に動いている。短角牛の仔牛価格が異常な高騰を示しているのだ。

5年前は仔牛一頭10万円台前半だったものが、今年10月には平均価格48万8,203円(岩手県中央家畜市場)と、3倍以上にまで跳ね上がった。原因は仔牛生産を生業とする繁殖農家の高齢化による減少もあるが、赤身肉ブームに乗った大手の参入(大量買い付け)が影響している。

仔牛を買って育てる肥育農家にとっては、すでに採算が取れない価格構造になっていて、このままでは離農に拍車がかかることが懸念される。岩手県内最大産地である山形村においても、14軒あった肥育農家が来年は12軒に減るとの報告である。

一般より高い価格設定で支えてきた大地を守る会にとっても、この異常事態は厳しい。

一大成功モデルとして語られてきた山形村と大地を守る会の物語だが、目の前で進む構造的矛盾のなかで苦悩は深まるばかりだ。日本の風土にあった畜産と、生産・消費のバランスをどう守っていくか、最大の試練を突破する道はまだ見つかっていない。

放牧の様子

 

最後に余話をひとつ。

12月10日、静岡県田方郡函南町のフルーツバスケットで、ひとつの製品が完成した。商品名は『平庭高原 森の恵み・白樺の一滴』。白樺の樹液を詰めこんだものだ。

山形村の白樺林はその数日本一とも言われる。これを何とか活用したいと数年越しで検討されていたもので、昨年フルーツバスケットに製造の打診があった。何と今回の依頼は“3度目の挑戦”だという。

樹液は年に一度、雪解けが始まる3月下旬に採取される。味は水に近いが、カルシウム・マグネシウム・亜鉛・カリウムに加え、アミノ酸(グルタミン酸・メチオニン・アスパラギン酸など)が豊富で、ブドウ糖や果糖がほのかな甘みを添えてくれる。

白樺樹液

試作もクリアして製造が決まったという知らせを受けて、10月27日、山形村から元村長さん含め7人の関係者がフルーツバスケットを訪れた。

「やっと念願の白樺製品が生まれる」と、白樺樹液採取組合の柳平勝良代表も喜んでくれる。当地の第3セクターである「酪農王国オラッチェ」も視察して帰っていかれた。

大地を守る会の関連会社として村の挑戦にひと役買えて嬉しくもあるが、これも大地を守る会の総合力だと胸を張らせてほしい。

『森の恵み・白樺の一滴』は、1月より県内と東京のアンテナショップで販売開始とのこと。先が見通せない厳しい状況下での、一滴の明るい話題程度かもしれないが、販売が好調にいくことを願いたい。

 

【第19話】日本短角牛との出会い

【第20話】3頭の出荷から“村丸ごと”へ

【第21話】交流が育てた“短角ブランド”

戎谷 徹也

戎谷 徹也

戎谷 徹也(えびすだに・てつや、通称エビちゃん) 出版社勤務を経て、1982年11月、株式会社大地(当時)入社。 共同購入の配送&営業から始まり、広報・編集・外販(卸)・全ジャンルの取扱い基準策定とトレーサビリティ体制の構築・農産物仕入・放射能対策等の業務を経て、現在(株)フルーツバスケット代表取締役、酪農王国株式会社取締役、大地を守る会CSR運営委員。 2008年農水省「有機JAS規格格付方法に関する検討会」委員。2013年農水省「日本食文化ナビ活用推進検討会」委員。一般財団法人生物科学安全研究所評議員。