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「頭縛り」で甘くなる、「越冬白菜」って何?

白菜

これからやってくる一年で一番寒い季節、毎日でも食べたくなるのがあったかい鍋料理。どんなタイプの鍋にも合う白菜は、この季節に欠かせません。代謝を促すカリウム、食物繊維が豊富で、低カロリー(100gで約14kcal!)という白菜は、栄養的にも、また飲み過ぎ・食べ過ぎになりがちなこの時期にもぴったりです。

 

今回はそんな白菜についてご紹介するのですが――ただの白菜ではありません。年明けから出荷が始まる、その名も「越冬白菜」。普通の白菜より甘くておいしいと評判のこの白菜の栽培には、独特の「頭縛り」という工程が欠かせません。そのユニークな作業がどんなものか、白菜の生産者に教えていただきました。

 

 

白菜

手間暇かけて越冬させるのはなぜ?

 やってきたのは、埼玉県日高市にある福井忠雄さん・一洋さん親子の畑。昭和30年代から有機農業にこだわり、大地宅配とは40年のお付き合いのある農家さんです。広い畑にずらーっと並ぶ「越冬白菜」は、9月に種をまいたもの。年を越えて1~3月の収穫を前に、まさに今、12月が、「頭縛り」を行うタイミングです。

 

福井さんが育てている白菜は、寒さに強い「晴(はれ)黄(ぎ)90」という品種。「90」という数字は「収穫まで90日かかる」という意味で、同じ「晴黄」にも「65」「75」など年内出荷が可能な「早生種」もあるのですが、「90」の方が葉質がやわらかく、甘みとうまみが多いのだとか。

 

白菜

 

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そうした白菜をおいしく仕上げるために欠かせないのが「頭縛り」です。読んで字のごとし、「地面に生えた白菜の上の部分をひもなどで縛る」という作業なのですが、大切なのは、周囲に“びらっ”と広がった大きな外葉で、本体を「巾着」のように包みこんで縛ること。これは寒さに弱い白菜の葉を守るための、いわば「お布団」がわり。でも、なぜこんな手間をかけてまで越冬させるのでしょうか?

 

寒さに耐える白菜の中で起きているすごいこと

 栄養成分も豊富な白菜ですが、一番多いのは水分(約95%)です。温度が低くなると水分が凍り、葉は枯れてしまいます。外葉の「お布団」はそれを防ぐため。でも、「布団があっても寒くて凍ってまうわ!」と思った(?)白菜は、自分の内部に蓄えた「でんぷん」を「ショ糖」に変えていきます。例えば、ジュースのように糖分の多い液体って、凍るまでの時間は水よりもずっと長くかかりますよね。つまり、寒い季節に「凍ってなるものか」と頑張った結果、白菜は甘くなるのです。

 

ちなみに、寒さによる変化は糖分の増加だけでなく、ビタミンも増加し、葉もやわらかくなるのだとか。植物のすごさには驚かされるばかりです。ともあれ「越冬白菜」、人間にとってはいいことづくめなんですね。

 

 

白菜

「頭縛り」の苦労も、すべてはおいしい白菜のため

 ということで今回は、福井一洋さんのご指導で「頭縛り」に挑戦してみました。以前は「ひとつ縛ってはひもを切る」という作業だったのですが、今は「列の端の白菜を縛り、そのひもを切らず、次々と隣の白菜に巻き付けてゆく」という方法をとっているとのこと。「以前に比べて、労力は半分くらいになった」と福井さんはおっしゃいますが……こ、これがなかなか大変なのです。

 

白菜の根元に左腕を差し込み、抱えるようにして大きな外葉を持ち上げ、その隙に右手でひもを――おっと、外葉が逃げる、いや、縛る場所が下過ぎなのか、あらっ、きゅっと縛れない……と悪戦苦闘。

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さらに、縛っては立ち上がり隣に移動、縛っては立ち上がり移動……というこの繰り返し。何かに似ている――と思ったら、「ヒンズースクワット」そっくり! 1時間半かけてようやく1列(約100個)を終えた頃には、お尻と太ももが筋肉痛でパンパンに。

 

聞けば、ベテランのお父さん・忠雄さんでも1列に1時間ほどかかり、1日で4~5列しかできないのだとか。ちなみに、福井さんが栽培する白菜の数は1万3000個……。おいしい白菜を作るために手間暇かけることをいとわない、そんな姿勢には本当に頭が下がります。

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年明けからやってくる一年で一番寒い季節は、まさにお鍋の季節。福井さんが手間暇かけて作った「越冬白菜」で、ぜひぜひおいしく温かくお過ごしくださいませ!

(取材・文)渥美志保

 

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大地を守る会編集部

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大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。