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400年の味をつなぐ、料理人・奥田政行さん,NEWS大地を守る

【NEWS大地を守る6月号】400年の味をつなぐ

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シェフ 地域で古くから受け継がれる、多彩な自然の恵み。在来作物を使った料理を作り続ける、イタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行さんに、その思いを伺いました。  

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地元・庄内の食材を生かした〝地元イタリアン〟レストラン

届いた食材の確認から厨房への指示出し、ランチを食べ終えたお客さんとのおしゃべりなど、レストラン内を駆け回る一人のシェフ。彼が、山形県鶴岡市にあるイタリアンレストラン「アル・ケッチァーノ」のオーナーシェフ・奥田政行さんです。「アル・ケッチァーノ」には毎日、庄内平野が育む採れたての野菜や、前浜・日本海の新鮮な魚介類などが集まります。それぞれの食材の持ち味をできる限り引き立てるため調味料はほぼ使わず、その食材に秘められた物語を伝え続けています。取材当日も、レストランは全国各地から訪れたお客さんで満席でした。

山々を背に澄んだ空気が気持ち良い庄内の地。

築50年の居抜き物件を改装して開店したレストラン。

“掘っても掘っても”たくさん出てくる、庄内の孟宗(もうそう)筍たっぷりのアルフレッド風フェットチーネ。

  「父親がドライブインを営んでいたので、自然と料理に興味を持ちました。都内にあるイタリア料理やフランス料理のお店で修業した後、26歳の時に出身地の鶴岡に帰郷しましたが、家庭の経済的環境が厳しかったこともあり、食材を買うお金もなかったんです。なんとかお店を始めたものの、お客さんに足を運んでもらうための工夫も必要でした。『他の人がやっていないことをしなければ』と思っていたその時に再会したのが、小さいころから食べていた在来作物です」

在来作物の一つである山菜を採りに、奥田さんは今でも山に入る。「私たちが育てている『野菜』のおおもとはこれらの『野草』です」。

 

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在来作物が持つ空気感まで皿の上に丸ごと表現

在来作物とは、「ある地域で、世代を越えて、栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」です。味も見ためも個性豊かな在来作物は、栽培の手間はかかるものの、何よりおいしいと人々に親しまれてきました。かつては日本各地にたくさんありましたが、大量生産・消費、効率化の潮流もあり、今は主流ではなくなりました。そのような状況を鑑み、大地宅配では、「日本むかし野菜」として、日本各地で栽培され続けてきた在来作物をお届けしています。

埼玉県の「埼玉青なす」

群馬県吾妻郡高山村の「高山きゅうり」

山形県置賜地方の「曲がりねぎ」

  「庄内は在来作物がたくさん残っている地域なんです。北に鳥海山がそびえ、霊峰・月山を含む出羽三山に囲まれた庄内平野は、最上川の他にもいくつもの小さな川が日本海にそそいでいます。土壌も豊かで、日本の中でも四季がはっきりしていると言われており、雪に弱い野菜・果樹以外は栽培できます。また、江戸末期、庄内藩は戊辰戦争で最後まで幕府側に属していたので、明治以降、忘れられた地となっていきました。そのため、都会向けに大量消費用の作物を生産することなく、地元向けに在来作物を育てていたんです。江戸時代に花開いたと言われる庄内の文化が、400年~150年の時を越えて、今も続いています」。

初夏の訪れを告げる庄内の孟宗筍。

  地理や歴史にも詳しい奥田さんは、在来作物の研究者・江頭宏昌さんと、2003年に「山形在来作物研究会」を設立しました。次第に全国から研究者が集まり、これまで見向きもされなかった在来作物に目が向けられるようになったのです。また、当時始まったばかりのスローフードのブームも後押しとなり、「アル・ケッチァーノ」にも注目が集まるようになりました。

20年来のお付き合いがある生産者・山澤清さん(写真右)と、約160種類の在来作物やハーブを栽培する「大日本伝承野菜研究所」を合同出資。

「食材にもその時のコンディションがある」と調理前に必ず味見をする。

パスタをゆでたお湯に野菜をさっと通し、食感も生かす。

  「在来作物を料理に使ってみて感じたのは、全般的に苦味があること。実は、この点はイタリア野菜と似ているんです。料理では苦味を隠すことも多いのですが、この〝持ち味〟を生かそうと思いました。油を使って食べやすくしたり、苦味に異なる苦味を組み合わせてふくよかな味にしたりと、独自の料理を確立してきました」。 そう話しながら、あっという間に完成させたのは山菜とハーブのペペロンチーノ。お皿の上にはナズナ、ミブナ、ムラサキミズナ、インディアンレタス……。まるで目の前に山が広がっているかのような、すがすがしい見ためと味わいです。

山菜とハーブの生命力が感じられるペペロンチーノ。

 

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地域に根差すことで〝種〟を明日へとつないでいく

取材中も電話がかかってきたり生産者が訪ねて来たりと、忙しそうな奥田さん。それでも鶴岡にいる時は毎日、自ら生産者や地元の直売所を回り、食材を仕入れます。 「在来作物を料理に使い続けているのは、庄内という地域を守りたいから。豊かな自然、自然の恵み、それらとともに生きる人々の暮らしがここにあります。食で、庄内を元気にしたいんです。そして、それを次の世代につなげていきたい」。 この日も、旬を迎えているシドケやワラビ、孟宗(もうそう)筍などが並ぶ直売所で、奥田さんはお店の人やお客さんと笑顔で会話します。

「食べたいという顔をしていた」と、取材中に訪ねてきた生産者たちにパスタを作る奥田さん。

直売所

明日の料理の食材を直売所で購入する。

豊かな自然と暮らしを守り、受け継ぐ在来作物への思いが重なった大地を守る会と奥田さんは2017年、コラボレーションし、商品やイベントを企画しています。より多くの方に、在来作物や食を楽しんでいただきたいという願いを込めました。
シェフ

在来作物をはじめとした食にまつわるさまざまな活動に精力的に取り組む奥田さん。

  また、奥田さんは地元・庄内で、在来作物をメインに使った料理を提供するレストランの準備に追われています。6月のオープンを控え、地元や他県から集まった若者もスタッフとして参加しています。「奥田さんのもとで料理を習っているんですか?」と聞くと、「在来作物のことを知り、それを伝えられる人を目指しています」と若いスタッフ。奥田さんの思いはすでに、次世代に受け継がれ始めています。   奥田シェフ監修のキットも登場予定!「おやさいdeli kit」シリーズはこちら ※奥田シェフ監修のキットは130号(7月17日~21日注文書提出)から登場予定です。  

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。