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【吉本ばななさんの新連載「生きることは食べること」Vol.2】長い目で調整する

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 ベストセラー作家の吉本ばななさん。実は、大地を守る会の食材を長いことご愛用いただいています。そのご縁で、大地を守る会のホームページでエッセイの連載が始まることになりました。吉本ばななさんの食にまつわる思いや暮らしぶりに触れることのできる特別なエッセイで、今回は2回目になります。イラストは、吉本ばななさんのお友達で、絵本作家・イラストレーターの山西ゲンイチさんの描き下ろし、ぜひお楽しみください。

 

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長い目で調整する

 「これを食べるといい」「あれは良くない」「これを食べるとこうなる」「これはこのくらいならいい」などなど、食べものに関しては様々な意見がある。

 妊娠中のつわりの時期におかしなものが食べたくなるというのもよくある話で、お漬け物だけは受けつけたとか、ツナだけが大丈夫だったとか、わけがわからない話をあちこちで聞いた。私の場合はなぜか昭和の洋食だった。オムライスとか、ナポリタンだとか、ふだんはそんなに食べないケチャップ味をなぜか欲した。

 

 

 疑問に思って調べてみたら、野口晴哉先生がご著書の中で「自分が小さい頃に食べていたものの中にしか入っていない微量の何かを、妊娠中は体が欲するのだ、だからそれがたとえあまり体に良いものではないように思えても、頭で考える良いことよりも体が求めることをしたほうがいい」というようなことをおっしゃっていた。

 そうか、だからみな体に良くなさそうなもので、しかも人それぞれ全く違うものを求めるのかと妙に納得した。

 食べ物にまつわる良し悪しというのもそのことととてもよく似ている気がするのだが、どんないいものでも食べ過ぎたら体に悪いし、どんなに悪いものでもがまんして食べずにいたら他のものでは補えないから食べ過ぎてしまうのではないかと思う。体にまかせるのがいちばんいいんだと。

 

 

 処方された漢方薬の効きをよくするために食事を減らしていた時期があった。少ない食事で満足感を得るためによくかんでゆっくり食べていた。ひとつも悪いはずのないことなのに、なぜか私は調子が悪くなった。急に体重が減ったというのもあるだろうけれど、いつも気持ちが暗いし、食べることにまつわることが全く楽しくなくなった。

 いつかは慣れるだろう、体にいいんだから続けようと思って続けていたが、あるときすっかりそんなことを忘れて麺をすばやくすすってあっという間に食べ終えてしまったとき、ものすごい満足感がやってきた。量は少なくてもいいというくらい幸せだった。それで私は思い出した。そもそも私は早食いの家に育ったんだった。早食いの大食いになってしまうとちょっと問題だが、体によく聞いてみたら、年齢相応にさっと食べてすぐ満足しゆっくり消化する、それでもいいように思えた。一般的にいいことでも自分には良くないことかもしれない。体との対話はまだまだ続く。

 

Illustration by 山西ゲンイチ

「生きることは食べること」 Vol.1 はこちら

→ 【吉本ばななさんの新連載がスタート】「生きることは食べること」

 

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吉本ばなな プロフィール

1964年、東京生まれ。日本大学藝術学部文芸学科卒業。87年『キッチン』で第6回海燕新人文学賞を受賞しデビュー。88年『ムーンライト・シャドウ』で第16回泉鏡花文学賞、89年『キッチン』『うたかた/サンクチュアリ』で第39回芸術選奨文部大臣新人賞、同年『TUGUMI』で第2回山本周五郎賞、95年『アムリタ』で第5回紫式部文学賞、2000年『不倫と南米』で第10回ドゥマゴ文学賞(安野光雅・選)を受賞。著作は30か国以上で翻訳出版されており、イタリアで93年スカンノ賞、96年フェンディッシメ文学賞<Under35>、99年マスケラダルジェント賞、2011年カプリ賞を受賞している。近著に『下北沢について』『毎日っていいな』がある。noteにてメルマガ「どくだみちゃんとふしばな」を配信中。

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。