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創業106年 桔梗ヶ原の老舗ワイナリーを訪ねる

【NEWS大地を守る11月号】日本ワインを見つめて

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「五一わいん」でおなじみの林農園の代表・林幹雄さんは今年で87歳。

今、注目されている「日本ワイン」。長野県塩尻市のぶどうの歴史とともに歩んできた、創業106年のワイナリー・林農園を訪ね、日本ワインの今と昔を見つめます。

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始まりは、1本のメルロの木から

収穫を目前に控え、たわわに実るぶどう畑に佇む1本の大きな木。「これは、最初に植えたメルロの木です。60年以上経った今でも、しっかりと実を付けています。若い木に比べると果汁は少なめですが、味は濃くなるんです」。そう話すのは、長野県塩尻市の桔梗ヶ原で、創業106年を迎えるワイナリー「林農園」の代表・林幹雄さんです。桔梗ヶ原は今や世界的にも評価の高いメルロの産地として知られていますが、実は林農園と深い関係があるのです。

樹齢60 年のメルロの木。月日を重ねた幹には力強さが秘められています。

日本でワイン造りが始まったのは明治時代。雨量が多く湿度が高い日本では難しいとされる中、コンコードやナイアガラなどアメリカ系品種のぶどうを主に用いて、甘めのワインが造られていました。第二次世界大戦中には、ワイン造りの工程でできる酒石酸という成分が軍事利用されたため、酒石酸が抜かれた酸っぱい状態に砂糖を加えたワインも多く出回りました。 日本のワイン造りが模索を続けていた1911年、幹雄さんの父・五一さんは、桔梗ヶ原で桃やぶどう、りんごなどの果樹園を開園しました。中でも好評だったぶどうの余りを加工しようと思ったことから1919年にワイン醸造を開始。さまざまな品種を試験的に栽培していたものの、当時、国内で主流となっていた甘口のワインを造っていました。 戦後、父の仕事を手伝う幹雄さんが抱いていたのは、「ヨーロッパにあるような辛口のワインを造りたい」という思い。そこで1952年に植えたのが、山形県の農家から譲り受けたメルロです。「寒さや病気から守るため、幹をわらで巻いたり接ぎ木する高さを調整したりと、試行錯誤の連続でした」と幹雄さんは振り返ります。その苦労が実を結び、3年後、糖度が20度もあるメルロの栽培に成功します。メーカーに原料も卸していた林農園は、「ヨーロッパ系品種のぶどうはないか」という大手メーカーの相談にメルロを提案。そのメーカーのワインは国際コンクールで数々の賞を受賞し、桔梗ヶ原はメルロの産地として国内外から高い評価を受けるようになったのです。 林農園は、本格的なワイン造り、ひいては日本におけるワイン造りの礎を築いた一人と言っても過言ではありません。

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国産ワインと「日本ワイン」

今も変わらず、自社農園と地元の契約農園で育てたぶどうからワインを造る林農園。9月から収穫作業に追われている自社農園は、太陽の光がきらきらと降り注ぎ、下草が青々と茂っています。

下草が生い茂る畑で、ぶどうも豊かに実ります。

今年のぶどうの収穫も9 月にスタート。一つ一つ手摘みで、同時に病果や未熟果などをていねいに取り除いて選果も行います。取材当日はシャルドネの収穫日。遅採りするものと合わせ、フルーティーさと濃厚さを持つワインに仕上げます。

「搾ったあとのぶどうの皮や梗(こう)などを発酵させた肥料を土壌に混ぜ込んでいました。今では土壌内の成分バランスが整い、20年以上無肥料です」と幹雄さん。ぶどう畑のところどころに花を咲かせているバラは、「虫を寄せ付けない役割を担っています。また、ぶどうと似た病気にかかるので、バラに変化があったら注意するといった、バロメーターでもあります」。 ぶどうにふと目を向けると、列をなしてずらりと並んでいました。「これはスマート法といって、芽を一方向に伸ばしていく栽培方法です。太陽の光がよく当たるうえ、労力が40%省けるほど作業しやすく、農家の高齢化にも対応できます」。

「スマート方式」で一列に実る、果実味が豊かなメルロ。

  毎朝、農園の真ん中にある自宅からぶどう畑を歩いて出勤する幹雄さん。ぶどうの声に耳を傾けるように、異変がないか木や葉を見て、実を口に含み、いつもぶどうを見守り続けています。
生産者

ぶどう畑を歩き回りながら、ワイン造りについて何でも教えてくださる林 幹雄さん。ワイン造りに寄せる想いは今も変わりません。

取材当日の収穫量は800㎏で、契約農家がトラックで次々と運んでくるぶどうと合わせると20トンにもなります。基本的に、収穫したその日のうちに圧搾し、発酵・熟成と仕込んでいきます。
生産者

林農園がある地域では、作業する人の中で一番背の低い人に合わせて、ぶどう棚の高さを決めるそう。

収穫してすぐに仕込むので、収穫時季は大忙し。

ぶどう

白ワインは果汁のみ、赤ワインは皮と種も搾ります。

築88年の蔵にあるタンクに果汁を入れます。

酵母の力で発酵が静かに進み、完成。

  このように、生のぶどうからワインを造ることは当たり前のように思われますが、実は今、そうでない場合が多いのです。「日本で販売されているワインの70%は輸入ワインです。残りのうち20%は、海外産の濃縮還元果汁を使用して国内で醸造されたもので、『国産ワイン』と呼ばれます」とは製造担当の添川さん。「日本ワイン」と名乗ることができる、国産ぶどうを100%使用して国内で造られるものは、わずか10%と希少な存在です。

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日本ワインが歩む道

「ワインの消費量は伸び続けており、日本ワインへの注目も高まっています。近年、特に北海道と長野県で、ワイナリーの数も増えてきました。でも、今問題なのは、原料のぶどうが不足していること。農家の数が減り、高齢化も進んでいます。ぶどうがあってこその日本ワインはまさに農産品。ワインのことを考える時は、農業のことも考える必要があるんです」と幹雄さんは話します。 2015年の人口一人当たりの消費量はワインボトル約4本で、10年前に比べると1・6倍。一方、2015年の全国におけるぶどうの収穫量は18万9700トンで、10年以上も下降線を辿っています。 「できることの一つとして、5ヘクタールの自社農園を新しく拓きました。今後は、週末に畑仕事をお手伝いいただく機会やワインの木のオーナー制度があってもよいかもしれませんね。ぶどう栽培に多くの人がもっと関わることで、少しでも、日本ワイン、さらに地域も発展させていきたいです」。収穫と仕込みで活気があふれる林農園では今日も、地元の若者が一緒に汗を流しています。
生産者

多様な品種の収穫がリレーのように続くので、毎日待ったなしです。

「若い人には力があるね」とほほ笑む幹雄さんを囲む、収穫メンバーの青木陽平さん、沖村広樹さん、小林和矢さん、小松 篤さん、原 睦雄さん(左から)。

新酒の季節、そして年末年始。1杯のグラスから畑を感じる瞬間、日本ワインの道が開けていきます。   大地を守る会のワインはこちら  

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。