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厳しさが力になる北の農業

【NEWS大地を守る1月号】大豆、枯れて輝く


何千年にわたり人に力を与えてきた大豆。その輝きに、私たちはどのくらい気付いているのでしょうか。北の大地で風を受けながら、大豆を育てる平譯 優(ひらわけ まさる)さん(北海道幕別町)を訪ねました。

 

4000年の歴史上岐路に立つ大豆

カラカラ、カラカラ……。風が吹くと、黄金色に輝く畑に軽やかな音が響き渡ります。「いい風だね。大豆が乾燥するには、湿度が低い風が必要です。この音は、水分量が減ってぎゅっと小さくなった大豆が、さやの中で揺れている音なんです」。風になびく大豆畑を見つめるのは、大豆の生産者・平譯 優(ひらわけ まさる)さん(北海道幕別町)です。


大豆は、4000年以上前から中国で栽培され、日本には約2000年前に伝わったとされています。豊富な栄養素を含み、昔から栄養食・保存食として重宝されてきました。味噌や醤油、豆腐、納豆など、日本の食文化の形成にも欠かせない大豆は、今日に至るまで私たちの食を支えています。

 

しかし、長い歴史を持つ大豆は今、岐路に立っています。国産大豆の自給率はわずか7%で、ほとんどを海外産のものに頼っています。その中には、日本への輸入が許可されている遺伝子組み換え大豆がある可能性も否めません。また、2017年4月、「主要農作物種子法」の廃止法案が成立しました。大豆を含む穀物の種子の価格が不安定になり、出回る品種が少なくなるともいわれ、これまで食べていた大豆が食べられなくなる可能性もあるのです。
 

目まぐるしい変化の中にある大豆の国内生産を支えているのは、全国の収穫量のうち約3分の1を占める北海道です。平譯さんは、広大な畑が続く北海道十勝平野の南西部に位置する幕別町で、35年以上農薬や化学肥料を使わず、大豆をはじめとしたさまざまな品種の豆や野菜を育てています。自然乾燥で一層引き出された大豆の味わい深さには、生きる力が秘められています。

収穫を行う息子・健一さん(左)を、平譯さん(右)はじっと見守ります。


北の地を力強く生き抜く

茶色のさやをパキッと割り、出てきた大豆を平譯さんは口に含みました。「こうやって噛むと大豆の水分量、つまり乾燥度合が分かります。ぐにゃっとしたら約20%以上、カリッとしたら約15%。日高山脈から吹き下ろす乾燥した風が水分量を減らしてくれます。雪や雨、霧はもちろん、風があっても太平洋からの湿度が高い風ではだめ。豆の中でも大豆は水分量が変わりやすいので、収穫するタイミングは天気と大豆の状況次第です」。

生命力が詰まった大豆は人類の栄養源。

 

一般では、大豆の水分量が20〜25%もある早い時期に収穫し、機械で乾燥させることが少なくありません。一方、平譯さんは、水分量が約15%になるまで風に当てながら、畑でじっくりと大豆を自然乾燥させます。「大豆は土から栄養をしっかりと吸収してうまみを蓄えます。機械乾燥では風味がとんでしまうことがありますが、自然乾燥ではうまみと香りを生かすことができるんです。早く大量に生産できる機械乾燥も便利だけど、やっぱり自然乾燥だね」。寒いけど風が吹くと嬉しくなると平譯さんは話します。

「豆は捨てるところがないよ」。枝やさやは土壌に混ぜ込まれ、肥料になります。

 

実はこれまで、枝ごと刈り取って畑に積み上げておく伝統的な「にお積み」で自然乾燥を行ってきた平譯さんですが、今は畑の様子が違います。「近年、北海道向けの農業機械の改良が進み、米に加えて豆と小麦にも対応できる収穫機が登場したんです。自然乾燥は続けつつ、収穫時の労力を軽減できるようになりました」。地元でも、畑でそのまま自然乾燥させてから収穫する光景が広がりつつあります。

 

農家を継ぐと決心し、今は主に収穫を担当している息子の健一さんが、収穫機を走らせます。選別担当の平譯さんは時に手伝いながら、その様子をじっと見守っています。全国で農家の減少・高齢化が進む中、幕別や北海道全体では、大豆農家が多く残っています。夏は草取りで延べ百人単位の人手が必要となり、冬は雪が積もれば溶けるまで待つしかないというのも、北の農業の厳しさです。

広大な大豆畑で収穫機を力強く走らせます。収穫するタイミングはその日の天気と大豆の状況で決まります。

 

そんな中で力強く育った大豆は収穫後、平譯さんが30年以上使い続ける選別機にかけられます。手動で調整する風に当てて選別した大豆には、うまみと香り、生命力がずっしりと詰まっています。

自宅の隣りに平譯さんが建てた豆の選別・出荷小屋。「マイナス10℃くらいだと指がかじかんで動かなくなる時もあるけど、豆の音を聞くとほっとするんだよね」。

選別機から出る風を手動で調整しながら、大豆を最後まで自らの目で見守る平譯さん。

畑になっていた時のように、透明感のあるすべすべの肌も輝きを放ちます。


“まめ”に向き合う姿勢が輝きを生む

家庭で調理する機会が減ってきている大豆。平譯さんの台所には、自らの畑で収穫した大豆で作った味噌や豆料理がずらりと並びます。「水で戻してすりつぶした大豆を、味噌汁に入れてひと煮立ちさせるだけでできる呉汁は、冬によく作ります。意外と簡単にできるよ」。厳しい環境を生き抜いた大豆のほっこりとした味わいが、冷えた身体をやさしく包み込みます。

「フードプロセッサーを使ってもいいよ」。

身体が温まる平譯家の冬の定番、呉汁。

呉汁や酢大豆など豆料理がずらり。

 

「大豆を育ててくれる大地や風にも、大豆を食べてくれる人たちにも、有り難いと思っています。そのおかげで、私は生きていけるからね」。そう言って平譯さんは満面の笑みを浮かべました。

 

新たな年、〝まめ〞に向き合ってみてください。きっと、大豆のように、私たちの暮らしにも美しい輝きが生まれるはずです。

 

平譯さんの大豆はこちら

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大地を守る社会貢献活動(CSR)をすすめる会

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