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試験操業の先に新しい漁業を見る

【NEWS大地を守る3月号】2018年、福島。少しの大漁

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朝4時に出た漁から戻り、冗談を言いながらホッキ貝をむく漁師。

あの日から7年。福島で漁業を営み続ける人たちに会いに、福島県の浜通り北部にある磯部加工組合(福島県相馬市)を訪ねました。  

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とれるけど、とれない。福島の漁業の今

小さな漁港に入ってくる1隻(せき)の船。船上の水槽ではヒラメが水しぶきを上げながらパタパタと動き、「大きいのもいるよ」と漁師たちは満面の笑みを浮かべています。

震災の津波ですべてを失うも、漁業倉庫や船などが再び並び始めた磯部漁港。

相馬の名産品の一つであるヒラメも漁を開始しています。

大きなものはなんと70㎝超え。

  ヒラメを樽に移し変えると、その量はわずか樽2コ分。続けて入ってきた船のホッキ貝もかご10コを満たしません。ヒラメとホッキ貝は、漁港の目の前にある磯部加工組合(福島県相馬市)の加工場へと運ばれていきます。 福島県の漁業では、東日本大震災以降、試験操業が続いています。試験操業とは、出荷が許可された魚種での小規模な操業と販売で、流通先の確保と出荷先での評価を調査するため、試験的に漁業を行うこと。対象魚種は2012年の3種から始まり、2017年の出荷制限魚種を除くすべてとなりました(※1)。大々的な漁を行ってきていないことから水産資源も豊富であるものの、漁獲量は震災前の約10%にとどまっています。以前は地元産の魚介類が並んでいた県内の魚屋や料理屋でも、県外産のものが多くなっている状況です。

明治時代から漁が始まり、1977年からは資源管理型で行われている相馬のホッキ漁。

  同時に、福島県で続けられているのが、放射性物質に関する検査です。県によるモニタリング検査では、国の出荷基準値が100Bq/㎏のところ、その半分である50Bq/㎏を自主基準とし、毎週150〜200検体を検査しています。漁協が自主的に行うスクリーニング検査では25Bq/㎏を基準とし、水揚げごとに1魚種1検体を検査。県のモニタリング検査において、2017年は不検出が全体の98.1%を占め、2016・17年の2年間は、国による出荷制限がかかる100Bq/㎏超えの検体は一つもありません(※2)。 しかし、ウミタナゴ、キツネメバル、クロダイ、サクラマス、シロメバル、スズキ、ヌマガレイ、ムラソイ、ビノスガイ、カサゴの10種類の魚には、今も国による出荷制限がかかっています。矛盾にも見えるこの状況の大きな理由は、同じ魚種を全く同じ場所で漁獲して検査しなければデータを更新できないため。9種類は2012年、1種類は2013年のデータのままとなっているのです(※3)。放射性物質をめぐる見方がさまざまある中、このような実態があまり知られていないことも事実です。  

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漁師、漁協、仲買、一丸となって

考えるべきことが多い状況下、地元・福島の漁業を再建するため、一丸となる選択をしたのが磯部加工組合の皆さんです。

おしゃべりと笑顔で明るい、磯部加工組合の加工場で働く皆さん。

  「6割の人が海辺に住んでいた相馬市の磯部地区では、津波で、区民の約5分の1、若者も多い漁師の約4分の1が亡くなりました。63隻あった漁船もすべてなくなりましたね」と当時を振り返るのは、相馬双葉漁業協同組合の参事・渡部祐次郎さん。「何もかも失った状態。でもだからこそ、助け合ってなんとかしないと、魚屋を続けないと、と思いました」と磯部加工組合の理事長・島寿雄さんは話します。

漁協職員の渡部祐次郎さんは、常に鳴る携帯電話を持ちながら、漁協と磯部加工組合を行き来します。

  水産業では一般的に、漁師・漁協・仲買を経て市場やお店に商品が流通します。磯部加工組合は、島さんを含む仲買を筆頭に漁師・漁協・仲買が一つとなり、利益も不利益も分け合おうと協同組合という形を選択。相馬市により整備された加工場を運営しています。放射性物質測定装置2台を導入し、自主基準25Bq/㎏を設け、この加工場から出荷するすべての加工品を検査しています。

ヒラメは水揚げ後すぐ、丁寧に血抜きを行います。

水揚げしたてのシラウオはハリがあり、透き通るような美しさ。

  水揚げしたてのホッキ貝が加工場に届くと、漁師たちが貝ナイフで一つ一つむいていきます。

昔から相馬の味として親しまれてきたホッキ貝。

軽トラックで運んできたヒラメとホッキ貝を、漁師たちと漁協職員で手際よく計量します。

漁師2人であっという間にホッキ貝をむき終えます。

手の平からはみ出んばかりの、ぷりっと大きいホッキ貝のむき身。

  手で身とヒモに分けるのは地元の女性たちの担当。「氷水から取り出してやるから、手がかじかむ」と言いながらも、は機敏に動き続け、おしゃべりで笑顔がこぼれます。

ホッキ貝の身とヒモが店頭に並ぶのは、地元の女性たちのおかげです。

  奥では、湯気が上がっています。釜から揚げられたのはタコ。水産加工の道30年以上の島さんも味見をしながら、若手の漁師、磯部加工組合職員、運輸業者が一緒にゆで加減を研究しています。

タコをゆでるのは漁師、磯部加工組合職員、運送業者と立場は違えど、福島の漁業を担う若者たち。

ゆで終えたタコは氷水にさらして身を締めます。

水産加工の大先輩である島寿雄さんに、ゆでダコを味見してもらいます。

すっと歯で切れる、しっとりやわらかな仕上がり。

  「今回はだしでゆでてみました。商品開発にも力を入れています」とは、SNSで磯部加工組合の情報発信も行う職員の菊地健太さん。「今後は、フィレ加工の機械も導入したいです」と話す渡部さんは、試験操業の先にある未来を見据えています。  

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自分自身で福島を考える

大地を守る会は磯部加工組合を通して、「福島応援」シリーズとして福島の魚を取り扱い始めます。自主基準のもと、自社での放射性物質測定も行います。 水産担当歴25年の浅海博志は話します。「実は、福島の魚を取り扱う準備を進めていた時に震災が起き、その話は中断となりました。水産物を扱う者としても食べる者としても、考えさせられました。福島県の生産者や、東北他県の大地を守る会の生産者などが経験している苦労も見てきています。考え抜いて、改めて大切だと思ったことは、事実を正確に伝えること。生産者と消費者をつなぐ者として、より一層それに取り組んでいきます」。

全国の水産生産者を訪ねて回る、大地を守る会水産担当歴25年の浅海博志。

  今、改めて私たちに必要なのは、自分自身で福島を見つめ、考えることです。   ※1 資料:福島県漁業協同組合連合会「対象種」 ※2 資料:福島県「表 放射性セシウム濃度が100Bq/kg超の検体数・割合と不検出の検体数・割合」 ※3 資料:福島県「試験操業対象種」 ※大地を守る会の放射能に対する取り組みや測定結果についてはこちらをご覧ください。   福島応援シリーズの魚はこちら ※該当商品の取り扱いがない場合があります。  

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。