学ぶ

いけいけ! 極あま、 真南風(まはえ)にのせて

【NEWS大地を守る7月号】自給率5%。国産パインの底力

太陽と青空の下、背負ったかごに一つ一つ丁寧にパイナップルを入れて収穫します。

多くの人を魅了する南国のフルーツ、パイナップル。実は、国産パイナップルの自給率は、たったの5%です。沖縄県石垣島でパイナップルを作る真南風(まはえ)の会・平安名貞市(へんなさだいち)さんを訪ねました。

 

実は少ない国産パイン

椰子の木が立ち並ぶ道を抜け、サトウキビ畑を眺めながら辿り着いたのは、太陽が照りつける畑の真ん中にぽつんと現れた出荷場。パイナップルと箱がずらりと並び、濃密な甘い香りが漂っています。

重さ20kg 以上もあるかごを運ぶのも大変です。

たくさんの完熟パイナップルで、濃密な甘い香りが漂います。

 

「今日は約3,000コを出荷します。多い日は5,000コ近い時もありますね。完熟になってから収穫・出荷していますが、パイナップルは熟すタイミングを読むのがとても難しいんです。一気に穫れる時はもう待ったなしで、収穫も出荷も大忙しです」。そう話すのは、石垣島でパイナップルを育てる、真南風(まはえ)の会(沖縄県)の生産者の一人・平安名貞市(へんなさだいち)さんです。

「いい味に仕上がっています。さっき自分でも食べたけど、うまかった」と笑うお茶目な平安名さん。

 

地域のパイナップル生産者の分も集約している平安名さんの出荷場では、重さ20㎏以上もあるパイナップルが山積みになったかごを下ろし、計量・選別・出荷作業をどんどん行っていきます。

トラックが到着するたびに、手際良く計量・選別・出荷を行います。

みんなに「へんなさん」と呼ばれ親しまれる平安名さんのパイナップル。

出荷箱に入れたらすぐに空輸します。

 

店先で沖縄産と表示されたものも見ることのあるパイナップル。たくさんあるように思える国産パイナップルの自給率は、実はたったの5% (※)です。多くはフィリピンや台湾など海外産のもので、国産のものより低価格で出回っています。このような現状の中、希少な国産パイナップルの生産を、石垣島で父の代から守り続けているのが平安名さんです。

 

乗り越えるほど、おいしくなる

「1960年代、石垣島では、パイナップルはサトウキビと並ぶ二大作物でした。当時は缶詰の生産が主流で、父も加工用のものを育てていて、子どもだった私も手伝いをしに畑に出ていました。お年寄りまで働くほど盛んだったパイナップル産業は、沖縄の経済を支えるまでに成長していったんです。しかし、1971年に冷凍パイナップル、1990年に缶詰パイナップルの輸入が自由化されたことで大きな打撃を受け、パイナップル関連の会社の多くは潰れていきました」。下降の一途をたどる故郷のパイナップルを見て、東京で働いていた平安名さんは石垣島に戻り、父の後を追い、パイナップル作りの道を歩み始めました。


酸性の赤土という限られた土地を好み、収穫するまでに2年もかかるパイナップルは、それだけでも生産が大変な作物です。年中暑い石垣島では、雑草の伸び方も半端ではありません。地道な努力を続けつつ、平安名さんは加工用ではなく、生食用のさまざまな品種の栽培に挑戦します。

生食用パイナップルは、最後の1年は肥料を切り、ぐっと味を高めます。

収穫までに2 年かかるパイナップル。小さい時は天敵の草をこまめに取ります。

 

ピーチパインと呼ばれる「ソフトタッチ」、スナックパインとしても知られる「ボゴール」、大きく樽のような形をしている「ゴールドバレル」……。「ゴールドバレルは、黄金色の果肉で上品な甘みを持ち、消費者の皆さんにもっとお届けしたいのですが、パイナップルの頭に付いている冠芽(かんが)がよく複数出る品種なんです」。平安名さんが見せてくれたのは、冠芽が3つ付いたパイナップル。生育や質に全く問題はなく、見た目が受け入れてもらえればもっと出荷できそうだと平安名さん。ちょっぴり愉快な光景でありながら、平安名さんを悩ませています。

冠芽が3 つ付いた、愉快な格好の「ゴールドバレル」。


目をつむってしまうほど眩しい日差しであふれる畑を見渡すと、パイナップルの収穫の真っ最中。「かつて加工用のものでは、肥料を多く与えてサイズを大きくすることに重きが置かれていましたが、生食用のものは、最後の1年は肥料を切ることでぐっと味を高めます。そして、雨が降ったりやんだりと適度にあると、一番おいしく仕上がるんです」。パイナップルは追熟しないため、平安名さんは完熟での収穫を貫いています。

熟度を見極める色は、角度を変えて見なければ分からない時もあります。

追熟しないパイナップルは、まさに食べ頃の完熟で収穫します。

 

そろそろ雨が降ってほしいと話していると、突然の雨。「おいしいパイナップルがまたできる!」と平安名さんは大喜びです。

 

パイナップルでみんなを笑顔に

父からパイナップル栽培を引き継ぎ、多品種の栽培や完熟での出荷など味にこだわった、島での生食用パイナップル作りを牽引してきた平安名さん。農家や地方の人口減少を見据え、会社も設立し、全国・海外から集まる若者と一緒に毎日働いています。「パイナップル栽培は、2年に1度の収穫や重労働などで大変ですが、その分おもしろく、おいしいんです。おいしいパイナップルで、食べる人や地域、これからを担う若い世代など、みんながうれしくなってくれたら私もうれしいです」。平安名さんはにこやかに話します。

明るい平安名さんのまわりは、いつも仲間と笑顔でいっぱい。

訪問者にはパイナップルを必ず出します。とれたての完熟の味です。


訪れる人に切って出してくれるパイナップルは、ほのかな酸味を抱いた極上の甘み。国産パイナップルの現状や石垣島での生産など厳しい環境で、まさに底力が生み出す味わいです。南から吹く風〝真南風〞にのせて、皆さんの食卓へお届けします。

 

※自給率の算出方法:国内出荷量÷国内出荷量・輸入量の合計。国内出荷量7,505トン①。輸入量150,598トン②。冷凍、缶詰、果汁の輸入量は除く。
① 農林水産省2015年「特産果樹生産動態等調査」「作物統計調査」参考。 ② 農林水産省2015年「農林水産物輸出入統計」参考。

 

「八重山のパイナップル(小)」はこちら

「八重山のパイナップル(大)」はこちら

 

大地を守る社会貢献活動(CSR)をすすめる会

大地を守る社会貢献活動(CSR)をすすめる会

大地を守る会は、社会的課題をビジネスで解決していくソーシャルビジネス(社会的企業)です。産地交流会、料理講座、講演会、他NGO・NPOと連携した取り組みなど、幅広いCSR活動をご紹介します。