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洗練されていく東京の農地

【NEWS大地を守る4月号】東京有機模様

江戸時代から続く農家である、東京有機クラブ(小金井市)の阪本啓一さんの畑。区画ごとに綺麗に整理されたその模様は、いかにも東京らしい。

都道沿いの住宅街に囲まれたこの畑は、人々の暮らしと密接につながりつつ、都市ならではの“東京有機模様”を作りだしています。今回は都市農業の現状をリポートします。

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350年以上続く農家の営み

車や自転車、人が行き交う新小金井駅周辺の通勤ラッシュを抜け、都道134号である古道・連雀(れんじゃく)通りを歩いて3分ほどの所にコンビニエンスストアがあります。朝のにぎやかなコンビニとは対照的に、その裏にある門をくぐったそこに広がるのは、瓦屋根の大きな家、そして畑とハウスです。「おはようございます」と迎えてくれたのは、東京都小金井市で農業を営む東京有機クラブの阪本啓一さんです。

「もう何代目かも分からなくなっちゃう」と笑う阪本さんは、この地で350年以上続く農家の7 代目。江戸幕府の成立後、飲料水用として玉川上水ができた頃、阪本さんのご先祖が現在の地に移住し、雑木林を畑に開拓しました。阪本さんの父・吉五郎さんは、戦後、「東京うど」を中心に露地野菜を栽培していました。阪本さんが20歳で就農することをきっかけに、当時の大地を守る会でも初めてだった、雨よけハウスを利用した通年できる葉もの栽培に切り替えていきました。周りからは否定的な声もあったそうですが、ハウス10棟と畑を計画に回して栽培するようになったのです。40年ほど前からは大地を守る会とともに有機栽培も開始。父のパイオニア精神を受け継ぐ阪本さんは、ルコラや水菜、サラダほうれんそうなど新しい野菜も積極的に探求し、幅広い種類の葉ものを育てています。また、東京オリンピックを控えて2018年には、JGAP認証も取得しました。

発芽して7~8日(冬場)のべか菜。大地からまた新しい命が生まれました。
緑色のグラデーションは複数の異なる葉もの。組み合わせて植えることで、病気や害虫の蔓延を防止できます。

30 年前ほど前から、阪本さん一家、 同じく江戸時代から続く農家の川里さん一家(小平市)、藤村さん一家(府中市)で「東京有機クラブ」という生産者グループを結成。宅地化をはじめ都市開発が進む中、東京という地で、有機農業を営み続けています。

「けい兄」と呼ばれる阪本啓一さん(左)は、 実は川里賢太郎さん(右)といとこ同士です。
露地でほうれんそうを育てる藤村享子さん(左)、中田恵子さん(右)親子。翌日が雪の予報のため、急きょ収穫中です。

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変わるものと変わらぬもの

「昨日の朝は霜が降りて一面真っ白でした」。阪本さんがそう話しながら歩いて回るハウスの中には、青々とした収穫直前の葉ものや、愛らしい発芽したての双葉、綺麗にならしたふかふかの土などがありました。 「冬は約4か月、夏は約1か月で葉ものが育ちます。ハウスごとに種まきのタイミングを少しずつずらして、週2 〜3回に分けて収穫・出荷するので、年間を通して鮮度の高い葉ものをお届けできます。農閑期がないから忙しいけどね」。「ごんべえ」という名前の手押しの種まき機を使い、サラダほうれんそうの種をまく阪本さん。一直線にまかれた種の列はきっちりと並んでいます。

一直線にまかれた種の列はきっちりと並んでいます。

収穫直前のハウスを見ると、複数の異なる緑色の葉ものが植わっています。「左からべか菜、水菜、ルコラ、サラダほうれんそう。複数を組 み合わせて植えることで、病気や害虫の蔓延を防止できるんです。次の種まきでは、それぞれを左に一つずつずらします。これで連作障害を避けることもできます」。緻密な計画を立て、丁寧に実践し、農薬や化学肥料には頼りません。どの畑にも雑草があまりないことに気づくと、「ずっと雑草をとりながら育て続けているので自然と減りました」と阪本さん。毎日の積み重ねの結果です。

手の細かいしわまで茶色いのは、いつも畑と一緒にいる証拠。

整理されている農地。しかし、ここは大都市・東京。この地だからこその悩みもあります。ハウスの後ろには、敷地と道路の間に張ったネットのすぐ向こう側に住宅が立ち並びます。「建物が多くなると日陰になる部分が増えて、霜が溶けにくかったり作物の生育が遅くなったりします。『光害』も起きます。たくさんある電灯の明るさで、作物が夏と勘違いして、小さくても花を咲かせちゃうんです」。空き缶・瓶のほか、ベッドなどの大きなものまで敷地に投棄されることもあるそう。「でも、仕方ない。土が飛ばないようにネットを張ったり、目が合ったら挨拶をしたり、周りを配慮しながら自分ができることをやり続けるんです」。阪本さんはにっこりとした笑顔で落ち着いて言いました。

土や廃棄物が飛ばないようネットを張るなど、周りへの配慮を欠かしません。

翌日は雪が降る予報のため、川里さん一家、藤村さん一家も急きょ、収穫作業中でした。「24時間営業のお店ができてから、その前にある畑ではほうれんそうが育たなくなったけど、今度、枝豆を植えてみようと思っています」とは中田恵子さん。「畑の隣りの住宅街には、うちの子どもの友達も住んでいます。普段からコミュニケーションをとっているとお互いが理解できると実感していますね」と川里賢太郎さんも話します。

冬の露地栽培ならではの収穫姿。かごはあっという間にいっぱいに。「お鍋の具としてたっぷり入れるとおいしいですよ」。
スイスチャードはフォークで土を掘り起 こしてから手で取り、はさみで根を一つ一つ切り落とします。手作りのミニ腰掛が大活躍。
川里さんの父・弘さんはルコラを計量中。丸いテーブルに乗せて回すと、反対側にいる川里さんがパッキングするという流れです。

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都市・東京にある生命体空間

はさみや鎌を握る手を休めることなく、収穫作業をテキパキと進めながら、「よかったら家で食べてみてね」と採ったばかりの葉ものを手渡してくれました。阪本さんの水菜はシャキッとした食感、川里さんのルコラはスパイシーな風味、藤村さんのほうれんそうは甘みに、凛とした存在感があります。

東京の農業は、土や土に棲まう微生物、人、住宅街、はたまたアスファルトやコンビニの明かりまで、人々の暮らしや環境と有機的につながりながら、絶妙なバランスで保たれています。そこで営まれる“東京有機模様”は、阪本さんたちによって、ますます洗練されていきます。


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