ピープル

「マルディ グラ」シェフ 和知さんちの朝ごはん Vol.9

和知さんちの朝ごはん/とろける秋なすの季節がやってきました!

なすが病を吹き飛ばす、三九日

ご近所の金木犀が一斉に花開いて、窓を開けるといい匂いが漂ってきます。いよいよ秋がやってきましたね。季節の変わり目は野菜の変わり目。大地を守る会のカタログに載る野菜のラインナップにも、少しずつ秋の野菜が混ざりはじめて、眺めるのが楽しいです。夏の間、毎週のように食べていた野菜も、食感が少し固かったり、筋張ってきて、ああもう、シーズンが終わるんだなぁと感じたり。

 

そんな、秋へと移行していく時季、ますますおいしくなるのが、なす。夏場のジューシーで瑞々しいなすも大好きですが、今ごろのパツッと実の詰まったなすもまた、たまりません。三九日(さんくにち、みくにち、みくんち)という言葉をご存知ですか?9月の9がつく日、すなわち9日、19日、29日になすを食べると中風(発熱や咳、悪寒など)を病まぬと、古くから言い伝えられているそうです。

三九日どころか、ほぼ毎日、なすが食卓に上がっているわが家。晩ごはんや人が集まるときなどは、麻婆なすなどの中華料理に、パスタやグラタン、以前、二人で旅をしたトルコのなす料理(なすをものすごく使う国なのです!)など、あれこれジャンルを超えて楽しんでいますが、朝ごはんは、やはり和風のおかずが落ち着きますね。

初秋の朝ごはん。蒸しなすの香味ダレに葉ねぎと干し桜海老の玉子焼き、いんげんの胡麻和え、きゅうりの鬼からし漬け、豆腐とニラのお味噌汁と寝かせ玄米

 

大定番の焼きなすは、魚焼きグリルに放り込むだけなので本当によくつくります。もう、わざわざ紹介するまでもない料理ですが。だし醤油とおろし生姜でシンプルにいただくほか、胡麻ダレをかけたり、赤だしのお味噌汁の具にしたりも。

蒸しなすも簡単。丸ごと蒸して冷やしておいたなすを大きく手で裂いて、細かく刻んだ長ねぎ、生姜、みょうが、大葉などを入れた香味ダレをかけるだけ。前日のうちに支度をしておけるので、慌ただしい朝にはうっけつけのおかずでもあります。

もう少し味にボリュームをもたせたいときには、こんなおかず。なすは油と相性がいいですよね。これは、「日本むかし野菜」で届いた埼玉青なすとししとうを胡麻油でじっくり焼いて軽く塩をしただけ。熱々を生姜醤油でシンプルに。時間をかけて火を通すと、なすの実がトロッと甘くクリーミーになって、焼いただけなのにごちそうに変身します。

「日本むかし野菜」のシリーズが大好きで、うす皮丸なすが届いたときには、トマトと一緒にオリーブオイルとバルサミコ酢でマリネにしました。朝ごはんのおかずに見えませんが、これは休日のブランチ。前日にカレーをこしらえたついでに、何か野菜の副菜をと、仕込んでおいたものです。ふだん、和知のリクエストもあって朝ごはんは和食中心ですが、自分ではこうした洋風テイストの料理が、つくるのも食べるのも好きなんです、じつは。

なすは味噌とも相性抜群。ゼブラなすの田楽には、自家製の柚子味噌をたっぷりのせて。わが家のあまり大きくない冷蔵庫の1/3は、らっきょうや新生姜の甘酢漬け、実山椒の佃煮など自家製保存食が占めているのですが、柚子味噌もその一つ。冬場の柚子がお手ごろなときに仕込んでおくと、こうして田楽にのせたり、酢でのばして酢味噌和えの衣にしたり、なにかと便利なのです。

家庭料理を受け継いでいくこと

なすの味噌煮は、祖母が教えてくれた料理の一つ。たっぷりの生姜と一緒に、こっくりと柔らかく煮たなすは、ごはんのおかずに最高なのです。秋なすは実が詰まっているせいか、煮崩れもなく仕上がります。なんてことない地味なおかずだけれど、子供の頃から大好き。味噌は、和知の実家から送られてくる自家製味噌です。

実家で慣れ親しんだ思い出の味を、今度は和知家に代々続く味噌を使って自分がつくること。新しい家族をつくり、家庭料理のバトンを受け取って、その人、その家の味として継承していくことの大切さって、きっと、こういうことなんだなぁと噛み締めながら、日々、台所に立っています。

さて、今年の1月から9月まで9回に渡って、わが家の朝ごはんを綴ってきましたが、ここでいったん、ひと区切りにいたします。また、お会いできることを楽しみに。読んでくださったみなさん、ありがとうございました。

 

text by 鹿野 真砂美

Photo by 和知 徹

 

「マルディ グラ」シェフ 和知さんちの朝ごはん 過去の投稿はこちら

 新連載スタート。肉料理の聖地「マルディ グラ」シェフ和知さんちの朝ごはん

 あの肉シェフ和知さんも、家では草食なんです

 肉シェフ和知徹さんが大好きな朝の卵料理あれこれ

 朝ごはんのひとときは、お互いの今を知る大切な会話の場でもあります。

 春から初夏を駆け抜ける野菜のおかず

 毎朝、一杯の“おみおつけ”に元気付けられる

 緑の食卓に元気をもらう、夏の朝ごはん

 体の中にひとときの涼を呼ぶ、盛夏の野菜

 

鹿野 真砂美
フリーライター。『dancyu』などの食雑誌ほか、レシピブックの執筆、編集を中心に活動中。『銀座マルディ グラのストウブ・レシピ』、『銀座マルディグラ流 ビストロ肉レシピ』、『銀座ロックフィッシュのストウブ・レシピ』、『銀座レカン 高良康之シェフのフレンチの基本』(すべて世界文化社刊)の執筆と編集、『シャトー ラグランジュ物語』(新潮社刊)、『これだけで、ラクうまごはん』(新星出版社刊)の執筆協力など。
東京都江戸川区生まれ。父、母方の祖父ともに、江戸前の海苔漁師だった。物心ついたころから台所に立つのが好き。十代のころは両親が居酒屋を営んでいたので、家のごはんは祖母と支度をするのが日課。結婚後、和知とのふたり暮らしの朝ごはんでつくる料理の多くは「おばあちゃんの味」がベース。

和知 徹
「マルディ グラ」オーナーシェフ。世界中を旅して、そこで得たヒントを自身の料理で表現するのがライフワーク。雑誌掲載、テレビ出演ほか、レシピの著書、共著も多数。カフェやレストランのメニュープロデュースも手掛ける。

Mardi Gras マルディ グラ
東京都中央区銀座8-6-19 野田屋ビル地下1階
電話 03-5568-0222
営業時間/18:00〜23:00(ラストオーダー)、日曜休み
料理はアラカルトのみ。岩手県山形村産短角牛を使った1キロ超えのビステッカなど、豪快な肉料理はもちろんのこと、パクチーどっさりの香菜の爆弾など、個性あふれる野菜料理も人気。

大地を守る会編集部

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。