ピープル

無施肥は作物の無限の可能性を開く

17年産の登録も開始しました「佐藤秀雄さんの自然農法の田んぼを訪ねた」

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佐藤秀雄さんの収穫前の田んぼを訪れると、稲穂の間に元気に育つ雑草たちが目に入ってくる。手入れがいき届かずに雑草がのび放題の田んぼとは一味違う。佐藤さんが草を受け入れ、草を活性化させた田んぼは、多様な命が溢れる美しい秩序ある田んぼなのだ。米どころ山形県の庄内平野で米作りを営む佐藤秀雄さんは、約300年続く米農家。約30年前から、米の無農薬栽培に取り組んでいる。自然と調和した佐藤さんは、除草剤などの農薬はもちろん、肥料も一切与えない「自然栽培」で米を育てている。7.5ヘクタールすべてを「自然栽培」で行うのは、佐藤さんの米作りに対する思いがあるからだ。(2015年11月掲載)

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森のしずくは森の神、田の神となる

 「祖父母がよく、山の神は、春になると山から降りてきて、田の神になると言っていたんです。田んぼに注ぎ込む水は、もとは「森のしずく」。森のしずくが田んぼを肥沃にし、稲を育てているんです。昔の人はそれを知ってたんですよね」。淡い黄金色の瑞穂で覆われた田んぼを眺めながら、佐藤さんはやさしい語り口で話す。

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「草を受け入れる」無限の可能性を、田んぼにかける

 佐藤さんは森のしずくと草を受け入れる意味についてこう説明する。「森の水は、森のミネラルと腐食物質フルボ酸とフミン酸を含んだ最高の水です。田んぼに入れば、前年の草をすき込んだ土の中で団粒構造と根圏微生物の発生を促し、さらに田起こしや田植え等の人が手をかけて上げることで、バランスの取れた土になります。水を張った後も、バクテリア、ミジンコ、カエル、タニシ、トンボなどの動物が田んぼに命を与え、稲と一緒に草も元気に育ちます。私は草も受け入れることが大事だと思います。草も稲にエネルギーを与えてくれると考えているから。肥料を与えないのは、肥料は与えた分しか力を発揮しないのですが、自然の力は無限だと思います。私は自然の力が最大の効果を生み出すよう手助けをしているんです」。

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 やさしい味の理由は、地球を思う心

佐藤さんの米作りの視線は、もっと遠い先を見つめている。「田の神をもう一度山に還すことも大切なんじゃないかなぁ……」。田んぼは生命を生みだすハンランゲンだと佐藤さん言う。「ハンランゲン(氾濫原)」は佐藤さんの田んぼを語る上で外せない言葉だ。語源は河川が氾濫を繰り返して作った平地を指すが、佐藤さんは田んぼの役割をこの言葉に重ねる。森の恵みを米作りに利用するだけではなく、田んぼを「ハンランゲン」として、水をさらに豊かにして川に戻し、海へ、そして雲となって森に帰らせる大切な役割だと考えているのだ。フルボ酸・フミン酸の話は「森は海の恋人」という言葉を生んだ、宮城県気仙沼の牡蠣漁師・畠山重篤氏の言葉と重なる。牡蠣養殖の漁師畠山氏が、牡蠣の生息に森から流れ出る水が大切だと訴え、「森は海の恋人」という言葉を生んだ。佐藤さんにこの言葉を知っているかと尋ねたら、知らないと答えた。畠山氏が森の水に含まれる腐食物質フルボ酸・フミン酸が牡蠣の栄養に欠かせない物質だという考えを、田んぼの世界で佐藤さんは米作りに生かしていたのだ。今も、佐藤さんの米を食べた人は、「なんだかやさしい味がする」と感じると言う。佐藤さんの、米作りを通じて地球がよくしたいという思いが、食べた人に共感を与えるからではないか。

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 一粒の米なかに、壮大な自然のドラマが詰まっている

 収穫前の、実った稲穂を見つめながら、「自然栽培に取り組んで、ほとんど食えない時期が10年くらい続いたかなぁ。」と振り返る佐藤さん。昨年は、大幅な減作に見舞われ、注文の半分も届けることができなかった。

今年、佐藤さんは収穫を無事に終え、出荷を待つ。自然農法に教科書はない。自然の声に耳を傾け、目に見えない大きな命のつながりをイメージし、ときには化学的な知見からヒントを探す。失敗と成功を繰り返しながら、自然の力にゆだねる農法を実践してきた佐藤さんの7.5ヘクタールの黄金色に染まった田んぼは、心なしかやさしく輝いていて見えたのだった。

 庄内平野の唯一無二の自然栽培米、佐藤秀雄さんのお米を、ぜひ味わってほしい。かみしめるたびに、豊かな命溢れる田んぼの情景が目に思い浮かぶことだろう。(2015年の情報です)

佐藤秀雄さんのお米はこちら

頒布会有機自然栽培山形コシ17年産 
頒布会 有機自然栽培山形コシヒカリ白米
頒布会 有機自然栽培山形コシヒカリ玄米   
頒布会 有機自然栽培山形コシヒカリ胚芽米  

 

 

 

大地を守る会編集部

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大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。