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2007年11月20日

全国土づくり生産者会議

記録-その2

11月15日(木)、第5回全国土づくり生産者会議。
千葉県山武市・さんぶの森中央会館にて開催。
今回の受入団体は、有機農業の生産グループとして組織されて間もなく20年という
さんぶ野菜ネットワーク (旧JAさんぶ郡市有機部会)。

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土づくり会議も今年で5回目だが、今回も講師は能登で農業を営む西出隆一さん。
東京大学農学部を卒業後、ひたすら現場主義で、
正確な土壌診断による健全な土づくりと高品質のモノづくりを追求して、かれこれ50年。

現場での歯に衣着せぬ辛口批評は怖いものがあるが、
実践に裏打ちされた西出理論をものにしたいと集う生産者は年々増え、
その風貌からは、 ‘カリスマ’ というより、はっきり ‘教祖’ と呼んだほうが似合っている。

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西出講座は、3年連続である。
「俺のほ場を西出さんに見てもらいたい」 と、
さんぶの生産者の強い要望でお招きした。

有機農業の基礎となる土づくりの、しかも本などではなかなか学べない
(学者の言う理論とも違ってたりする)、
具体的な処方(アドバイス)つきの勉強会である。
この開催の案内に、全国から100人を越す生産者が集まってくれた。

基礎とはいえ、土台の話である。
奥はひたすら深く、かつあらゆる人為の結果が複雑に絡みあって、今がある。

西出さんは挨拶もそこそこに、
「まずはほ場に行きましょう」 と皆を促す。

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畑に立ち、土を調べ、植物の姿を観察し、
土壌分析 (土の栄養成分の量やバランスの分析値) の結果を確かめ、
的確に問題点を衝いてゆく。

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栄養素のバランスを欠いた原因。
なぜここにこの病気が発生するのか。
その虫が湧いた理由は何か。

西出さんは観察を教える。
○○(たとえばカルシウムとか) が欠乏するとこうなる。過剰だとこういう症状が出る。
しかもただ足せばいいものではない。
相互作用もあり、すべてのバランスが大事なのだ。

「あんたの言っとる病気は違っとる。
 葉っぱの裏側をよう見てみい。違う病気や。
 病名が違うということは、原因も違う。 それじゃあ有効な対策は打てん」

何だか大地の生産者が素人みたいに聞こえるかもしれないけど、
それだけハイレベルな会話と思って欲しい。
科学を自分のものとし、植物の生理、土の状態を確かめながら、適切な手を施し、
農薬は使わず (安全性というより、土と植物の健全性のために)、
最後は品質と味と収量を上げるって、
これはなかなか至難の技なのだ。
 -なんて、並みいるプロの前で偉そうに講釈するのも恥ずかしいけど。

もしかしてプロとしての自負の強い人ほど、
「そんな絵に描いたように行くもんじゃない」 とか思ってたりしてるんじゃないだろうか。

手塩にかけた畑の前で 「何をやっとるか」 とか言われ、
質問すれば論破され、
よくできていると思われた畑でも 「まあまあ」 としか評価されず、
相当ムカついているかと思いきや、
生産者の反応は、

「いやぁ、参った」
「言われてみれば、すべて納得がいった」
「目からウロコ、でした」
などなど・・・・


後半は、座学。

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質問が途切れない。
西出さんはひとつひとつに、具体的な回答を出してゆく。
ホワイトボードが、科学で埋まってゆく。
しかしその奥には土と植物の姿がある。

西出舌鋒は、ついに大地にも及ぶ。

「あんたら大地様々じゃろ。そこそこのもんで取って (買って) もらえるから。
 大地もなっとらん。
 品質の高いものには、ちゃんと値段をつけてやらにゃ、やる気にならん。そうっしょ!」

「有機農業というのは、もう今の時代、「安心・安全」だけじゃダメよ。
 農薬撒かんから虫に食われる、で甘えとったらあかん。
 品質も味も良いものができんかったら、有機農業とは言えん。そうっしょ!
 何やっとるかと言いたい。」

まあね、だからこうして勉強会をやっているわけであって…
その意欲を持つ人たちをネットワークしてきて、今日があるんですよ。

あなたの理論を受け入れる、吸収力のある土壌をつくるには、
それだけの時間が必要だったんだと、
悔やしまぎれかもしれないが、言っておきたい。

それに、社会というものもまた、単純な理屈でモノごとが収まってはいなくて、
マーケットを支配している価値観は、品質ではない ‘何か’ であったりする。
社会科学だって、自然科学とは違う意味で魑魅魍魎とも言える綾取りの世界があるのだ。


畑を回る合い間に、富谷亜喜博さんのお庭で、おやつタイムが用意されていた。
奥さんたち手作りのパンやケーキや人参スープなどなどで、しばしホッとする。
どれも美味しかったです。

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おはぎではありません。紫いもを使ったケーキです。
ごちそう様でした。


いつか見返してやりましょうね、皆さん。
あの方の口が朽ちて、逃げ切られる前に。