2010年6月25日
全国米生産者会議-魚沼編
沖縄から帰ってきたと思ったら、次は新潟・南魚沼に向かう。
今度はお米の生産者会議である。
もう14回目となった 『全国米生産者会議』。
今年の幹事は、11年前から有機での米づくりを実践している 「笠原農園」 さん。
代表の笠原勝彦さんを中心に、8名の若いスタッフが常時雇用で頑張っている。
6月24日(木)。
会場は、その笠原さんのお米を使っているという旅館 「龍言」 。
将棋のタイトル戦の会場にも選ばれたりしている、当地の老舗旅館である。
北海道から熊本まで、約100人の生産者が集まる。
いずれも、米づくりにかけては人一倍プライドの強い猛者たち。
こちらが笠原勝彦さん。
まだ40代の若きリーダー。
就農した頃は 「魚沼だから」 と天狗になっていたそうだが、
全国米食味鑑定コンクールに出品するようになって、
もっと美味い米を作る人たちが全国にいることを知り、本気になった。
積極的に先進的な産地を訪ねては学び、
「安全で美味しい米づくり」 をひたすら追求してきた結果、
コンクールでは6年前から5年連続して金賞あるいは特別賞を受賞。
昨年はその栄誉を称えられ、ダイヤモンド褒章をいただいた。
99年から合鴨農法による無農薬栽培を始め、
2001年には有機JASの認証を取得。
これまで、合鴨、紙マルチ、チェーン除草、スプリング除草など、
あらゆる雑草対策を試してきたという勉強家でもある。
会議では、お二人の講演を用意した。
まずは、もうこのブログではお馴染みの、と言っていいだろう、
京都造形芸術大学教授、竹村真一さん。
「100万人のキャンドルナイト」 呼びかけ人の一人であり、
「田んぼスケープ」 でコラボさせていただいている。
前から米の生産者会議にお呼びしたいと思っていた方だ。 ようやく実現した。
講演のタイトルは - 「地球目線でコメと田んぼを考える」。
竹村さんとのお付き合いは古く、86年の 「ばななぼうと」 からである。
あの時、竹村さんはまだ東大の大学院生だった。
結婚して、息子さんがもう19歳。
「ウチの息子の体は、皆さんの作られたお米でできています。
皆さんに感謝の言葉を伝えたくて、今日はやって来ました。」
竹村さんが開発したデジタル地球儀-「触れる地球」 の映像をバックに、
竹村ブシが展開される。
「触れる地球儀」 は直径約1メートル。 地球の1千万分の1のサイズになっている。
私たちの生存を支える大気は地上1万メートルの上空まであるが、
この地球儀で見れば、それはたった1mmの薄い皮膜であることが感じられる。
この地球儀にインターネットが接続され、世界の気象状況や環境変化などの情報が
リアルタイムで映し出される。
太平洋の南で雲が湧き台風に成長していく姿が見え、
あるいは世界の気温変化が視覚的に確認することが出来る。
こんな地球の姿を子どもたちに見せたい。
「環境問題が語られない日がないという時代にあってもなお、まだ学校では、
16世紀に発明された平べったいメルカトル図法の地図が使われている。
何とかしたいですね。」
「宇宙船地球号とはどんな星なのか、今何が起きているのか、
誰も知らないまま船に乗っている。」
「アル・ゴアは 『不都合な真実』 と書いたけれども、
実はこの地球は 『好都合な真実』 に満ち溢れた、有り難い星なのです。」
数億年の時間をかけて生物が作りだしてくれた大気。
良い(いい) 加減に落ち着いた温室効果とそれによって維持される水循環。
生命の進化と生死の繰り返しは土をつくり、環境変化が炭素を閉じ込めてくれた。
それを今、短期間のうちに掘り起こして、CO2 濃度を急上昇させながら
使い切ろうとしている。 大気と水を汚染させながら。
原油の価格も上昇を続け、数年後に日本は、
石油を買う金額が国家予算に匹敵するようになる。
現代社会が抱える貧困や戦争、環境破壊などの問題の70%は、
エネルギー問題に起因していると言われる。
しかし竹村さんに言わせれば、本当はこの地球上に " エネルギー問題は存在しない " 。
太陽から地球に降り注いでいるエネルギー量は、なんと人類需要の1.3万倍ある。
たった1時間分で1年分のエネルギー需要を満たす。
「それだけのエネルギーを私たちは太陽から無償で頂いているのです。
このエネルギーの1万分の一を利用させていただくだけで、
ほとんどのエネルギー問題はなくなるでしょう。」
そしてそれはもう技術的に可能な時代に入ってきている。
我々の技術と社会はまだまだ未成熟なだけだったのだ。
しかし準備は整いつつある。
太陽エネルギーの効率的利用で、私たちは原発など古い発想に頼る必要はなくなり、
多くの環境破壊的な争いごとも乗り越えることができる。
そんな持続可能で、エレガントな未来社会が描ける時代を、私たちは迎えようとしている。
ヒトは地球にとってのやっかいなガン細胞として終わるのでなく、
生物の共存と共創のコーディネーターになりえるのだ。
そこで農業もまた、21世紀の新しい価値観で捉え直さなければならない。
循環する自然資源とともにある、生命創造産業の文脈で作り変える時期に来ている。
有機農業の発展はまさにその流れの中にあって、
とりわけ水循環と調和し、生物多様性とも共存できるはずの水田稲作は、
より高次の文明へと向かうための、地球のソフトウェアとなる。
ニッポンの有機稲作を牽引してきた皆さん、いかがでしょうか。
これが人類史の文脈でとらえられている田んぼの価値なのです。
分かんねぇよ、あるいは、なんとなくは分かるけど・・・・
という気分にもなるでしょうが、戦略づくりのためにも、
次のビジョンの方向を感知しておくことは必要です。
さて次は生々しく、激辛コメントでお馴染みの西出隆一師。
「米の品質・収量アップのための土作りの極意」 と題しての講演。
西出さんの場合は、生産者から出された土壌診断のデータをもとにに、
具体的に論評し、処方箋を下す、という進め方である。
ここからは 「アンタの田んぼは・・・・ああ、アカンな」 という展開になるので、
省かせていただくことにする。
竹村講演の解説で少々疲れたし。。。
二日目の今日は、笠原農園のほ場見学。
食味コンクールで金賞を取る実力者、笠原さんでも、
田んぼが 24ha にまで増えると、場所によって質が違ってくる。
昨日は西出さんからだいぶきつい批評を頂戴していた。
それでも、真摯に受け止め、
真面目に質問していた笠原さんの姿勢に、僕は好感を持った。
有機稲作生産者が集まると、まず注目するのが抑草技術である。
去年話題になったチェーン除草から発展して、今年はこれ。
スプリング除草。
道具の改良で競うのは、「百姓」 と呼ばれる " 生きる知恵者 " たちの
DNAのようなものだね。
合鴨が気持ちよさそうに泳いでいる。 いや、働いている。
フムフム、魚沼の笠原氏はだいたいこんな感じか・・・・
などと分析したりしながら、したたかなオヤジたちが太陽の下で解散。
お疲れ様でした。
来年は、魚沼とは違った意味でのライバル、
年々米の評判を上げてきている北海道での開催です。
解散後、
福島・ジェイラップさん(稲田稲作研究会) の車に便乗させてもらって、
磐越道経由で、猪苗代で降ろしてもらう。
明日あさってと、次なる会議が待っている。
今夜のうちに体調を戻さないと・・・
昨夜は誰かの部屋に大勢で詰め、尽きない話で延々と飲み、
誰かがサッカーを見始めて、そのまま・・・・となったのだった。