2011年5月28日
「月の会」で、原発と農そして食について語り合う
僕がここ数年愛用しているカレンダーに 「月と季節の暦(こよみ)」 がある。
太陰太陽暦、いわゆる旧暦にもとづいたカレンダーである。
このカレンダーを制作しているのは 「月と太陽の暦制作室」 という。
志賀勝さんという方が主宰されている。
4月のある日、その志賀さんからメールが入ってきた。
この暦を愛用する人たちで開いている 「月の会」 という集まりで、
震災後の状況や、特に原発事故の農業への影響などについて
話をしてくれないかという。
なぜ月の会が僕なんぞを・・・
と一瞬思ったのだが、理由は分からないではない。
(僕が適切な人選かどうかは怪しいが。)
この星のすべての生命活動は、何がしか月の影響を受けている。
月を愛でる人たちは、自然や風景というものへの感受性が奥深い。
当然のことながら食文化や農業・漁業のありようにも関心を寄せる人たちである。
志賀さんの著書 『月 曼荼羅 -384話月尽くし-』 にも、
月と動植物の生命活動との関係や、農業との深い関わり合いが随所に登場する。
月のリズムにしたがって農作業を組み立てるシュタイナー農法の紹介もある。
志賀さんのお話では、会の皆さんが今の状況を深く憂えているとのこと。
異例のテーマ設定ではあるが、この機会に、
日本の農業の行く末や、原発の問題などについてしっかり考えたいのだと。
「月の会」 はいつも満月の日に開いているそうなのだが、
何と今回は僕の都合に合わせて設定してくれた。 激しく恐縮・・・・。
そんなわけで、昨日の夜は、
蔵前の隅田川沿いのビルにある 「月の会・東京オフィス」 に
お邪魔させていただくことになった。
本来なら聞き手に回って、月にまつわるお話をたくさん伺いたいところなのだが、
それもこれも原発のせいだね。
座布団のカバーまで月が配われていて、まさにお月さん尽くしのお部屋。
そんな一室に集まっていただいたのは20人ほど。
なんとその中に大地を守る会の会員の方が2名おられて、嬉しくなる。
話を約1時間ほどさせていただく。
大地を守る会の簡単な説明から始まり、
今回の震災と原発事故後の、我々が行なってきた様々な取り組みについて。
それらを通じて、現地で見てきたこと感じていること、
放射能測定の結果と生産者の思い、これからの対策・・・などなど。
お題として指定された 「農業の行く末」 については、
被害自体がまだ進行形のなかにあって、なかなか明確に語れないことをお詫びする。
ただ、大地に降った放射能を取り除く対策に、最も前向きに挑もうとしているのが
有機農業者たちであることを、お伝えする。
すでに北半球全体が汚染の影響を受けているとさえいわれる中で、
私たちが 「食」(食べる) を通じてつながるべきは誰なのか、
この問いに対してだけは、僕は確信を持っていることも含めて。
そして、「原発は止めるしかないです」 。
農業のみならず、日本の行く末は、
自然再生エネルギーの技術大国になるかどうかにかかっている、と思っています。
お酒と料理が出されて、皆さんと語り合う。
志賀さんが直接取り寄せているという農家の名前を聞いてビックリする。
なんだ、いろんな形でつながっているんですね。
話は尽きず、おいとました時には10時をすっかり回っていた。
地球という星に寄り添って周回しながら、天空から僕らの振る舞いを見つめ続ける月。
満ちては欠け、消えては現れる月の姿に、人は太古より不死の願いを重ね、
豊穣の神として崇め、また時に夜(死) の恐怖と結びつけて様々な伝説をつくり上げた。
原子力は太陽崇拝の技術だと言う人がいる。
たしかに、このエネルギーを都市は礼賛し、空から月や星を排除した。
ゆっくりと月を眺めながら、きれいな空気と清涼な水に不安を感じることなく、
季節感ある食を楽しむ、そんな時間は喪われてしまっている。
月の復権は、本来あったはずの生命の律動を取り戻すこととつながっている。
植物は満月に向かって光合成を高めていくことが知られている。
病気に対する耐性も強くなるという。
志賀さんの本によれば、
多量の出血が想定される手術は満月の日は避ける、という話が医学でもあるという。
僕らは月のリズムで生かされているのだ。
志賀さん、今度はじっくりと月の話を聞かせてください。
「月と季節の暦」 -今月の句
俤(おもかげ) や 姨(をば) ひとりなく 月の友 (芭蕉)