2011年8月 6日

ガンマ線スペクトロメータ、稲田で始動

 

7月29日(金)、

専門委員会・おさかな倶楽部を中心に、生産者・消費者・職員20数名による

「三陸応援炊き出し隊」(吉田和生隊長) が元気よく出発したこの日、

僕は僕で東北新幹線に乗り、福島県須賀川に向かった。

「大地を守る会の備蓄米」 の産地、稲田稲作研究会の生産者を束ねる

ジェイラップ(伊藤俊彦代表) に、測定器 「NaI(TI) ガンマ線スペクトロメータ」

を設置するためだ。 

 

わざわざ貴重な測定器を現地に据えるのは、

ただ我々にとっての大事なブランド産地を守りたいだけではない。

測定器を駆使して様々な除染試験データを取るためである。

光合成細菌、乳酸菌、海藻粉末、天然軟質多面多孔性凝灰岩、貝化石・・・・

賛否両論あるEM菌も、ごちゃごちゃ言い合っている場合ではない。

しっかり第3者の目で検証してみようじゃないか。

また稲の生育過程でのデータも、できるだけたくさんのほ場で取る予定でいる。

歴史的にも貴重なデータの集積になると思う。

我々なりの、明日につなげる挑戦である。

 

測定器メーカーのEMFジャパン代表、谷口明さんから説明を受ける伊藤俊彦さん。

右端は当社品質保証グループ長・内田義明。

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その光景を撮影しているのは、海外のTV局。

なんとあの、中東の 「アルジャジーラ」 の英語放送のスタッフである。

取材依頼のタイミングが合って、飛んできたのだ。

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我々の取り組みはインターナショナルに注目されている、

と偉そうに言っておきましょうかね。

 


ま、そんな話はともかく、

デスク左脇にこじんまりと、台車に乗っかるように置いてあるのが測定器。 

意外と小さいと思われるかもしれない。

しかしこれで、重さ200kgある。 

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このステンレス・カバーの内側に、厚さ50mmの鉛+無酸素銅3mmから成る

鉛シールドがブロック状に張り込まれ、外部環境からの放射線を遮断する。

そして中心部に、直径3インチ・長さ3インチのNAI(TI)シンチレータが格納される、

という構造になっている。

台車には4輪とも自在形のキャスターが付けられていて、免震機能を果たす。

 

組み立てて、PCやプリンターを接続させて、調整すること約4時間。

次に測定方法、データの読み方などを細かくレクチャー受ける。

 

器械が正常に働くことを確認したところで、早速、試験をしてみる。

試料 (検体) は、田んぼからとってきた稲。 

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手前の円筒型ポリ容器(330mℓ) に試料を詰める。

従来タイプだと、試料用容器はマリネリ容器と呼ばれる1または2リットル容量の

特殊容器が使われているのだが、体積(=検体の必要量) が大きすぎるのと、

移し替える作業に手間がかかったりする。

このポリ容器だと、土なんかを現地で詰めて持ち帰り、そのままセットできる。

器械を汚す心配がなく、そのまま保存しておいて

翌年同じ場所で採種したサンプルと比較することもできる。

 

本器械での定量下限は、15分測定で20Bq/kg、10分だと25Bq/kg。

定量下限や検出限界というのは測定時間によって変わることは知っておいて欲しい。

もし何かの検査結果を確かめるときには、

検出限界値と測定時間を確認しておくことは必須です。

大地を守る会では、この機器で1検体2時間かけている。

そこでの限界値は、セシウム134、137など核種それぞれで10Bq/kgである。

 

さて、結果やいかに。

稲田稲作研究会では、土壌に残留しているかもしれないセシウムを

稲に吸収させないために、ほ場全部にカリウムを投入した。

その成果は---、セシウム定量下限以下!

まったくキレイなのだ!

しかも、カリウムはしっかりと捉えている。

カリウム施肥の成果が数字になって現われた瞬間に、皆の目が輝いた。

 

ようし。 これでガンガン測っていこう。

伊藤さんの気合いが、さらに高まった。

 

ただこの試料はちょっと量が少ないです。

もっと小さく刻んで一定量をきちんと入れないといけません。

 - と、そこは冷静に抑えにかかる内田・品質保証グループ長。

 

アルジャジーラから取材を受ける伊藤さん。

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フクシマの農家の苦しみ、悔しさを語りつつも、

不安を抱いたままじゃない、出来る限りの手を尽くして前に進みたい、

と希望を語ることを忘れない。

ニッポン農家は、負けてない、と伝えてくれ。 

 

検査用サンプルを取る伊藤さん。

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この取り組みは、稲田だけで終わらない。 須賀川市全体に刺激を与えつつある。

俺たちの仕掛けは、まだまだ続くのだ。

見てろ!

 


Comment:

よかった!やっぱりカリウム施肥は効果があるんですね。
植物はカリウムもセシウムも選んでないから、カリウムがいっぱいあれば、カリウムをたくさん吸い上げるってことなんですよね。
福島のみなさんの希望の星ですね!
ありがとう、ジェイラップと大地を守る会の皆様!!

from "てん" at 2011年8月 8日 19:50

はじめまして。
大地の会員(もう6年ほどになります)です。いつも興味深く読ませていただいています。ジェイラップさんの取り組みは、TV(TBSとNHKだったかな)でも拝見しました。稲田を放射性物質から守る取り組みを頼もしく思います。私達は大地を守る会を信じて買い続けることで、日本の農業を支えていきたいと思いますから、ぜひこの取り組みを成功させてください。お願いします!

from "ゴールドラッシュ" at 2011年8月 9日 10:16

てん様 ゴールドラッシュ様

遅まきながら御礼申し上げます。コメント有り難うございました。
カリウム効果は証明できそうですが、他にもいっぱい宿題をつくってしまったので、まだまだこれからです。あまり持ち上げないでくださいね。プレッシャーに弱いんですから。それに失敗もあるかもしれませんし。

でもジェイラップも必死でやってくれてますので、心強いです。こういう時は、仲間が大切だとつくづく思います。ご期待に応えられるよう、しっかりタッグを組んで進めていきます。

from "戎谷徹也" at 2011年8月25日 09:34

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