2012年6月16日

エネルギーを語る 梅

 

『 キャンドルナイト @ 増上寺 』 の日。

大飯原発再稼動決定の報道をカーラジオで聴きながら、

群馬・高崎へと走る。 いや、榛名町へ、と本当は言いたい。

市町村合併は、どうも日本人から土地感覚を奪っていくような気がしてならない。

住所から榛名の文字は消えたけど、

やっぱ僕としては、高崎ではなく、榛名に向かっている、と言いたい。

 

榛名で訪ねたのは、梅の湯浅農園さん(代表:湯浅直樹さん) 。

無農薬で梅を栽培し、加工まで行なう。

かつ湯浅さんの自慢は、

太陽光発電をベースにしたエネルギー自給率の高さである。

 

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湯浅太陽光 「発電所」 と掲げるところに、湯浅さんの哲学がある。

太陽光発電によってハウス照明や保冷庫の電気を自給し、

電気自動車やフォークリフトを走らせている。

電力会社への売電では、昨年45万円の収益があった。

太陽熱温水システムでお風呂のお湯をまかなっている。

梅の剪定枝や間伐材などを利用した薪ボイラーによって冬の暖房を乗り切る。

バイオマスならぬ  " バイオモス (燃す) "  と湯浅さんは名づけている。

 

その上にある 「榛名町きのこ生産組合 上神支部」 は、

昨年、地域内のシイタケから基準値を超える放射能が検出されたことによって

地域全体が出荷自粛となり、ついに解散となった。

この問題の厄介なところは、今年たとえ 「不検出」 の結果を得たところで、

販売が元に戻る保証がない、という闇の中に置かれることだ。

この地域に対する評価を挽回するのにどれだけの時間がかかるのか、

誰にも見えない中、それに耐えるだけの体力 (経済力) が続かない、

と判断されての解散・・・ と聞かされた。

 

中山間地農業の経営における重要な柱がひとつ、折れてしまった。

電力会社からの補償は、シイタケ販売での1年の損失補てんだけ。

当地のシイタケの原木は、今も放置されたままだ。

地域資源の循環回復にこそ、

国や電力会社は責任を持たなければならないのではないだろうか。

まるで補償金という名の手切れ金みたいで、腹の底から怒りがこみ上げてくる。

 

シイタケでの出荷規制についても、僕は言いたいことがある。

昨年の事故直後での汚染による影響はともかくとして、

今そしてこれからは原木の除染が鍵となるだろう。 由来は原木なのだ。

基準を超えたシイタケが発生した地域をまるごと出荷停止にするという

「地域」 を単位にした隔離政策のような対症療法ではなく、

徹底した原木のトレース(出自を明確にし検査を徹底する) と浄化を実施し、

その安全性を確かめた原木で栽培されたものを供給する、

というシステムづくりに向かうことが、適切な施策というものではないか。

 

ナラ・クヌギなどのホダ木をシイタケ栽培の原木として使用する際には、

一度水に漬ける(浸漬) 工程がある。

ここでセシウムの除去試験をいろんな形で実施することを提唱したい。

(高圧洗浄機での洗浄では、40%程度セシウムが低減することが分かっている。)

 

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湯浅さんが太陽光発電システムを導入したのは、

阪神淡路大震災の翌年、96年からである。

震災の時、湯浅さんは

自身が理事を務める 「日本青年団協議会」 の視察団メンバーとして韓国にいた。

「食糧もエネルギーも輸入に頼っている日本の危うさ」 を、

外国にいて強く感じたという。

 

今日、湯浅さんを訪ねることになったのは、

梅の収穫までに訪問するという約束を果たしておきたかったことに加えて、

この日にひと組の消費者が千葉から梅の収穫のお手伝いに来る、

ということもあった。

一緒に話を聞かせてもらえば湯浅さんの手間も省けるだろう。

合わせて、湯浅さんが心待ちにしている一枚の紙、

放射能検査結果の通知書を持参した。

測定結果は 「 ND (不検出/検出限界値10Bq)」。

まずはひと安心。 湯浅さんの安堵した顔が見れて、こちらもホッとする。

 

収穫作業を楽しむ親子。 

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収穫した梅を、キズものを取り除きながら、

サイズによって選別する。 

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この日の梅酒用青梅の出荷先は有機野菜の宅配会社、

業界では老舗と言われる 「大地を守る会」 というところに、40 ㎏。

まだ昨年からの影響が残っている。 厳しい数字だ。

( なお、袋の口を閉じるテーピングが下手なのが届きましたら、

 それは大地を守る会のエビスダニという人のせいだそうです。)

 

お昼を食べた後しばし、湯浅さんの栽培へのこだわりや、

自然エネルギーへの取り組みなどを聞かせてもらう。 

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湯浅さんのテーマは、徹底した自給自足。

電気機器メーカーに16年勤めて家業を継いだ時から築いてきた。

有機農業によって 「食」 を自給する。

深井戸を掘り 「水」 を自給する。

そして 「エネルギー」 の自給を達成させる。

それは自ずと自然を汚染させない生き方とリンクするものとなる。

 

原発事故は、彼の目指す体系の糸を断ち切るものに他ならなかった。

怒りや悔しさは収まるものではないが、敗北はもっと悔しい。

完全自給システムの完成に向けて、湯浅さんの挑戦は続く。

 

大地を守る会でも、自然再生エネルギー社会の建設に向けて

提案型のプランを模索している。

湯浅さんの挑戦は、僕らにとっても一つのモデルとなる。

何かしら支援の形を考えたいと思う。

 

自然塩にもこだわる湯浅農園の梅はしょっぱい、昔梅干しの味がする。

夢への意思がぎゅうぎゅうに詰まった梅だね。

春の低温がたたり、今年の梅の収穫量は平年の半分くらい。

彼の心中は、去年からずっと梅雨の真っただ中にある。

 

いつか、梅雨は明ける。

その時に歓喜の雄叫びを上げるためには、ただ待つのでなく、

意思を持って進まなければならない。

耐えるんじゃない、鍛えるんだ。

 

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