2013年1月16日
日本の魚は大丈夫か-
未来のために、持続可能な食べ方をしましょう。
- 三重大学資源生物学部准教授・勝川俊雄さん(農学博士) が語る。
1月12日(土)、 専門委員会 「おさかな喰楽部」 による新年勉強会。
テーマは、勝川さんの本のタイトルそのまんま、
「日本の魚は大丈夫か」。
場所は、魚といえば築地だと、「築地市場厚生会館」。
分かりやすい、一本気な魚屋たち。
予告でも書いた通り、
昨年8月18日に実施した 「放射能連続講座・第4回-海の汚染を考える」 で、
「勝川さんの専門領域の話をじっくりと聞きたい」
という要望がたくさん上がったことに応えて、おさかな喰楽部が設定してくれたもの。
今回は、放射能連続講座で訴えられた内容を、
豊富なデータを基に掘り下げる形で展開していただいた。
以前報告した内容 (8/25 「インフラ復旧の前に、産業政策を!」 )
とかぶるところは割愛しつつ、メモと記憶を頼りにいくつかピックアップしてみたい。
水産資源に関しては、国内外で時に真逆の論調がされることを、
まずは頭に入れておいてほしい。
たとえばクロマグロ。
その数は最盛期の5%にまで減少(95%減) したと諸外国は指摘する。
しかし日本では、3.6倍に復活してきている、という主張がなされている。
日本の主張は受け入れられるでしょうか。
国内では二つの論調がある。
ひとつは、日本人の魚離れが進んでいる、もっと魚を食べよう、という主張。
もうひとつは、水産資源が枯渇していってる、資源を回復させよう、という主張。
問題は消費ではなく、供給の側にある。
魚の消費量は、言われるほど減ってはいない。
そもそも日本人は、(海の周辺を除いて) 戦前まではそれほど魚を食べていない。
魚の消費量は、実は冷蔵庫の普及とともに増えてきたのである。
日本は世界第2位の漁獲量を誇りながら、世界一の水産物輸入国である。
漁獲量1位のアイスランドの自給率は 2,565 %。
かたや第2位の日本の自給率は 62 %。
いかに魚を食べているか、ということを数字は物語っている。
(自給量+その2/3ぶんを余計に消費している計算。)
戦後、漁獲量が増えていったのは、
マイワシ・バブルのような時代があったお陰だが、
それも80年代をもって崩壊した。
また60年代まではひたすら漁場を拡大できたが、
70年代の200海里設定で、日本は漁場から締め出された。
東シナ海は世界有数の魚場であったが、
戦前に開発されたトロール船による底引網漁で乱獲が始まり、
マダイなどの高級魚は10年で獲り尽されてしまった。
戦争によって一時的に資源の回復が進み、
戦後、過ちを繰り返すなと言われながら、結局同じ失敗の道を歩んだ。
今は、漁業者の9割が資源量の減少を実感しているのが現実である。
天然の魚がダメなら養殖があるじゃないか、という人がいる。
しかし実際には、養殖生産は頭打ちになっている。
魚の養殖は、ブリ(ハマチ)、マダイで9割を占めていて、
多様性がなく、天然の替わりにはなり得ない。
しかも餌は天然魚!なのである。
クロマグロを 1 ㎏太らせるのに 15 ㎏のマイワシやサバの幼魚が必要とされる。
70~80年代の養殖は、マイワシの豊漁で支えられたものだった。
つまり養殖とは豊富な天然魚の存在を前提とした産業であり、
天然より厳しい生産方式であることを知らなければならない。
(海藻などエサを不要とする養殖は別。)
しかも資源量の減少とともに、餌である魚粉の価格はどんどん上昇している。
すでに供給力は一杯一杯の状態で、ペルーのカタクチイワシによる魚粉は
EUと中国の争奪戦となっている。
今年、ペルーはカタクチイワシの漁を 70 %までに規制した。
タイやハマチの養殖では、原価の8割が餌代になっている。
これでは人件費は出ない。
この10年、漁業者は全体で2割減となっているが、養殖漁業者は3~4割減少した。
稚魚を放流して資源量を回復させる、いわゆる " 育てる漁業 " があるが、
成功した事例であるヒラメを見ても、実際は増えもせず減りもせず、という状況である。
そこで問いたい。
「日本人に、魚を食べる資格があるのか?」
2007年、ヨーロッパウナギの輸出が規制されたが、
食べ尽くしたのは日本人である。 資源はほぼ壊滅した。
日本のシラスウナギ(幼魚) は、河川の構造変化もあって減少の一途を辿り、
結果的に獲り過ぎとなり、価格が上昇し、鰻屋さんは閉店してゆく。
そもそも、鰻を食べるということは、文化的と言えるのか。
養殖が定着する前は、ウナギを食べることは特別なハレの食事であった。
しかし今は持続性無視の薄利多売の商品となっている。
何というお手軽消費であることか。
漁師たちが乱獲なら、消費者は乱食、ツケは未来に・・・
頼みとすべき水産庁が、消費拡大のために企画したキャンペーンが、
ファーストフィッシュ。
つまり、お手軽に食べられる水産加工品のコンテストだ。
何だか絶望的な話ばかり続けているね。
気持ちを切り替えよう。 とりあえず今日はここまで。