2013年1月26日

復興の道は、どっちだ? 

 

このブログを書くのは、だいたい夜になる。

しかし今週は頭から 3 連荘(レンチャン)。。。

夜が潰れると、どうにも書くようにならない。

 

日曜日(20日) は、池袋の立教大学にて、

日本有機農業技術会議と有機農業学会、出版社コモンズの共催による

原発事故・放射能汚染と農業・農村の復興の道

と題した公開討論会が開かれ、

終了後、関係者の方々と一杯やってしまう。

月曜日(21日) の夜は、丸の内・地球大学に参加。

火曜日(22日) は岩手・陸前高田のお醤油屋さんである、

八木澤商店代表・河野通洋さんが来社され、

夜、震災後の復興への取り組み等について

社員向けにお話しをしていただく時間が設けられた。

お話の後、これまた軽く一杯。

で、昨日(25日) は他団体の方からお誘いがあり、情報交換を兼ねて一席。

 

とまあそんな調子でネタがどんどん滞留してきて、気は焦るも筆は持てず。

端折りながらも、順次レポートしていかねば。

 

20日(日) の討論会は、なかなか重たい議論だった。 

放射能による農産物の汚染状況をどう認識するか、

「避難すべきか残るべきか」 「子どもに食べさせてよいか」

といった争点をどう整理すればよいのか・・・、など

何点かの論点をめぐっての本音トークが展開された。

討論者は、以下の4名。

 〇 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章さん。

 〇 有機農業技術会議代表理事 明峰哲夫さん。

 〇 茨城大学名誉教授 中島紀一さん(日本有機農業学会理事)。

 〇 福島県有機農業ネットワーク代表 菅野正寿さん。

コーディネーターはコモンズ代表の大江正章さん。

 

走り書きのメモを元に起こしているので、正確な発言とは異なるかもしれない、

と断った上で、以下、レポートしてみたい。

 

トップバッターは、小出裕章さん。

「農業者を前に、避難すべきか、食べるべきか、といった話はとてもしにくい。

 殴られるかもしれないが、私は科学者としての 「原理・原則」 に則って

 語らざるを得ない。」

 

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「 福島原発事故によって放出された放射性物質の量は、

 広島・長崎に落とされた原爆数百発分に相当する。

 しかも大地をなめるように拡がっていった。

 福島県のかなりのエリアが、法律上 「放射線管理区域」 とされる

 4万ベクレル(/㎡ ) を超えて汚染された。

 それは、そこを出る時には必ずボディ・チェックを受け、

 4万ベクレルを超えるものは持ち出してはならないという決まりのある、

 本当なら人間が生むべきではない場所であり、私は専門家として

 「住んでよい」 と言うわけにはいかない。 住んでほしくない。」

 

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一方、原発から 50㎞ の距離にある二本松市東和地区で

有機農業を実践する菅野正寿さん。

「 阿武隈山系のアブクマという言葉は、アイヌ語で  " 牛の背中 "  という意味。

 そんな中山間地の一角で、私たちの住む旧東和町は、

 かつては養蚕を基幹とした村だった。

 一時は養蚕業の衰退とともに桑畑は荒れる一方となったが、

 有機農業をベースに都市の消費者とつながって、

 新しい地域づくりを進めてきた。

 研修生や新規就農者も積極的に受け入れ、いろんな成果が見えてきたところで、

 原発事故というとんでもない災禍に見舞われてしまった。

 いま福島では、16万人もの人が県内外に避難しているという

 異常な事態である。

 

 家に戻り農業を始めてくれた娘は、

 ホールボディカウンターの検査で ND の結果をもらったが、

 それはあくまでも検出下限値以下という意味であり、

 不安が消えたわけではない。

 何Bq(ベクレル) 以下なら大丈夫なのか、明確な基準は存在しない。

 低線量内部被ばくの問題が、住民を不安にさせている。

 政府には、昨年6月に制定された生活支援法を早急に実施してもらいたい。

 学校給食では、昨年12月より地元産米が使われるようになったが、

 野菜については 「ゼロでも使ってほしくない」 という声があって、

 まだ復活できてない。

 

 住宅の除染も始まったが、なかなか思うように進んでいない。

 一ヶ月も経つと (雨や風の影響か) 元の線量に戻ったりしている。

 周辺の森林の除染を進めるべきなのだが、手がつけられていない。

 そもそも大手ゼネコンに丸投げしてしまっている状態で、

 本当は住民の手で進められるようにしたい。

 復興のプロセスに住民を参加させるべきではないか。

 

 森林の除染は難しい問題だが、

 キノコがよく吸収しているのを逆手にとって、

 伐採した木をチップにして敷き詰めて、カビや菌の力を借りて除染できないか、

 目下専門家とともに研究中である。

 

 福島では、出荷制限や自粛などによって耕作放棄地が増えている。

 セイダカアワダチソウの風景が広がっている。

 しかし復興が進んだのは、実は耕して米や野菜を作ってきた農地である。

 米の全袋検査では、99.8% が 25Bq 以下という結果だった。

 野菜ではほとんど検出されていない。

 まさに 「土の力と農人の耕す力で 『福島の奇跡』 が起きた」(中島紀一さんの言葉)。

 ふくしま有機農業ネットワークでは、米と野菜、雑穀については

 40Bq/㎏ 以下を基準にしようと提言している。 

 

 この問題を、ただ 「食べる・食べない」 とか、「逃げる・逃げない」 といった

 狭い議論で終わらせてほしくない。

 ゴミや基地や原発を地方に押しつけてきた日本の構造こそ

 見つめ直して欲しい。」

 

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「住んでほしくない (避難と生活保障は国の責任)」 という小出さんも、

" 食べる・食べない "  については、明快に  " 食べる "  派である。

「 私はとにかく、子どもを守りたいという一心である。

 一次産業も守りたい。 

 だから  " 社会的責任として、大人は食べるべきだ "  と主張してきた。

 チェルノブイリのときも、私は普通にヨーロッパ産のスパゲティを食べた。

 しかし子どもには食べさせなかった。」

 

ここで、小出さんは一つのグラフを示す。

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「放射線ガン死の年齢依存性」。 

1万人の人が1シーベルト被曝した場合が、1万人・シーベルト。

1mSv(ミリシーベルト) だと1000万人として、

それだけ等しく被ばくした場合に、

ガン死者数が何人になるかを年齢別に推計したもの。

左端の棒がゼロ歳児の場合で、15,152人。

右端が55歳で、49人。

全年齢で平均した場合の死者数 3,731人。

ほぼ30歳あたりが平均になる。

それ以上の年齢になると、放射線の影響は段階的に鈍化する。

 

小出さんの言う  " 食べる "  とは、たんに責任や覚悟を迫っているのでなく

(いや、それは相当に迫っているが)、

それなりのデータに基づいてもいる、ということである。

 

中島紀一さんが、現状把握の整理を提示する。

「 現状では、一部の果物や山野草、キノコ、タケノコといったものを除いて、

 ほとんど検出されなくなってきている。

 確率論的には、内部被ばくは相当に低いレベルになっている、と言ってよいだろう。

 

 降下した放射性物質よりもはるかに膨大な量の土が

 放射性物質をつかまえ、固定化させてくれた。

 土は放射線の遮蔽効果も発揮してくれている。

 また粘土だけでなく、堆肥や腐植といった有機物も

 固定能力が高いことが見えてきている。

 当初は堆肥を入れる有機農業のほうが危ないとも言われたが、

 " 土をつくる "  ことの意味がここにもあったということだ。

 そういう視点からも、" 復興の筋道・留まって耕すこと・食べること "

 の意味と価値を捉え返す必要がある。」

 

ここで哲人、明峰哲夫がマイクを握る。

 

あれぇ・・・

端折るつもりが、終わんないね。 それだけ慎重になっているのか。

スミマセン、続く。

 


Comment:

福島の農家の方には自分はかける言葉がありません
北海道に住んでいるのですが夏に福島産の桃がありましたので 買って食べました
とてもおいしかった
しかし原発の影響だと思いますが 他の産地よりはるかに安い
仕方がないことですが 余計に不安になります
安すぎる 大丈夫だろうか
他県の人間には まだまだ 難しいことなのかもしれません
自分は 今回の福島のことは 福島だけのことではないのだと天からいわれているような気がします
いずれ農業を軽視してきた行政のつけが 全国にまわってくるのだと思います
農業がなければ人間は生きていけないのだと基本的なことを教えてくれているのかもしれません

from "だんご" at 2013年2月12日 19:34

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