2013年1月18日
魚を食べる資格を取り戻す
「日本人に魚を食べる資格はあるのか」
- 勝川さんの話は続く。
日本の食卓は輸入に依存してしまっている。
しかし今や欧州の輸入単価が上がってきている。
すでに日本は90年代にアメリカに抜かれ、欧州に追いつかれた格好だ。
輸入量、金額ともに5年で半減した。
円高ならまだ買えるが、円安になると・・・ 魚は食べられなくなるかも。
では漁業資源は世界的に減っているのかと言えば、そうではない。
世界の漁業生産は、実は伸びている。
漁獲量上位15ヶ国のうち、この50年で減らしているのは日本だけ。
2048年に日本の漁業は崩壊する、という説がある。
最大値の10%を割るとその産業は消える、という論理だ。
このままでいいのか・・・
悲観してばかりいてもしょうがない。
方法はある。
漁業を発展させ、魚食文化を守るために、
ちゃんと資源管理を進めればよいのだ。
漁獲規制を行ない、漁船ごとに個別漁業枠を設ける。
そうすることで 「獲らなきゃ獲られる」 という悪循環の競争から脱却できる。
実際に資源管理で順調に伸ばしている国が存在しているではないか。
ノルウェー、アイスランド、ニュージーランド、オーストラリアなど。
残念ながら日本は崩壊中の国である。
ノルウェーが日本に魚を売って儲けている話は、以前に書いた通り。
獲り方とは、残し方なのである。
幼魚を成魚に育てて、食べる。
これは美味しい魚が手に入るという意味でもある。
乱獲スパイラルから脱却させ、利子で食えるようにしなければならない。
これは漁民個人のモラルではなく、制度の問題である。
太平洋クロマグロの9割以上は1歳までに漁獲されている。
6年泳がせれば自然と自給できるようになるのに。
乱獲をやめれば食卓も支えられるのに。
この国のもう一つの問題は、補助金にある。
「漁業振興のために」 使われる補助金の額は、日本はダントツなのだが、
その多くは港湾整備とかの名目で土木事業に流れる。
このままでは、いくら補助金を増やしても資源は増えない。
税金が、海のためでも漁師のためでも食べる人のためでもない何ものかに
吸い取られていく構造が、ここにもある。
変えるためには、国内世論が形成されなければならない。
政治はとても大切なことなのだが、
多くの国民は実態を知らされてないがために、無関心のままでいる。
欧米では、自然保護団体が大きな役割を果たしている。
外からのサポート勢力を育てたい。
消費者教育も大事なことである。
消費には責任が伴うことを、もっと考えてほしい。
" 持続的に獲る - 持続的に食べる " の関係を築きたい。
魚屋さんという存在も貴重だった。
昔の魚屋さんは、サカナの知識や食べ方というソフトウェアも一緒に売っていた。
今はただスーパーの棚に切り身が並ぶだけで、
消費者は 「魚離れ」 ではなく、「魚知らず」 になってしまっている。
関心がないワケではない。 知る機会がなくなってきているのだ。
「サカナくん」 なんていうタレントが人気を博す国なんて、他にない。
こんな国でもまだまだ希望はある、と思いたい。
「価格」 「味」 「鮮度」 に加えて、
「持続性」 という新しい価値を創造したい。
勝川講座レポートは、ここまで。
勉強会のあとは、丸の内のお店 「Daichi & keats」 で新年会。
勝川さんを囲んで、あるいはめいめいに輪をつくって、
海の問題、魚の問題、天下国家の問題、その他バカ話など織り交ぜながら、
大いにはずんだのだった。
帰宅し、出刃と刺身包丁を取り出して、久しぶりに研いでやる。
ゆっくりと、錆びつつある自分の根性も研ぎ直したく。