2013年3月27日
学校給食全国集会
今日は朝から夕方まで飯田橋。
JRの駅に隣接する飯田橋セントラルプラザ17階にある
東京都消費生活センターの教室にて、
「全国学校給食を考える会」主催による 『学校給食全国集会』 が開かれた。
ここで大地を守る会の放射能対策についての報告をしろ、
とのこと。
つけられたタイトルが、「ゼロリスクがありえない中で、どう食べるか」。
何度見ても重たいお題で、逃げ出したくなるが、そうもいかない。
作成したスライドにはあえて 「何を、どう食べるか」 と付け加えさせていただいた。
「何を-」 は、ここでも重要なポイントだと思うのである。
会場には、学校給食の現場を預かる栄養士さんや調理員さん、
教員、児童・生徒の親御さん(学校関係者は 「保護者」 と呼ぶ)、
そして一般の方が、全国から集まっていた。
その数、100~120人くらいだろうか。
日々子どもたちと接する教育現場の方々を前に、放射能の話。
誰がこんな世の中にしてしまったんだろう。 ため息が出るね。
集会では最初に、
学校給食を考える会が発行する 「給食ニュース」 の編集責任者である
牧下圭貴さんが、「まずは、おさらいから入りましょう」 と
放射能に関する基礎知識から学校給食の仕組みと課題までを整理された。
放射能の世界というのは、初めて聞く人には難解なものだが (特に文系には)、
牧下さんはそれを分かりやすく解説しようと苦心しながら話された。
これが意外と難しいんだよね。
中途半端な知識ではなかなかうまく話せない。
彼は現在、大地を守る会が長く事務局を担っていた 「提携米研究会」
(前身は 「日本の水田を守ろう! 提携米アクションネットワーク」)
の事務局長も務められていて、
実は自宅の一室を改造して測定室にしたツワモノである。
測定室は 「生産者と消費者をつなぐ測定ネットワーク」 と名づけられている。
バックグラウンド(環境中の放射線) の影響をできるだけ避けるために、
機器の4方(&床下まで) をペットボトルに入れた水をレンガのように積んで
囲うという念の入れ方だ。
(水は放射線を吸収する、防護壁の役割を果たす。 水はエライ!)
学校給食の話では、
「教育としての学校給食」 が謳われながら、
一方で正規調理員の減少や栄養士の民間委託、大規模センター化など、
合理化によるコスト削減が進められていく現状が指摘された。
また設備対応が追いつかない中で衛生管理(食中毒対策) が強化されていること。
さらには学校給食に対する家庭からの期待が高まる一方で、
給食費未納(家計経済の悪化) という問題があって、
その狭間で予算(給食費) と質のジレンマが深まっているという。
・・・・・聞いてるだけで耐えられなくなる。
これが子どもたちの食を取り囲む現実の一端だとしたら、
この現実は、もっと社会で共有されなければならない。
栄養士さん、調理員さんは日々必死の格闘を余儀なくされているということだ。
彼ら彼女らを支えているモラルと使命感が薄れていかないことを願わずにいられない。
それには社会の支えが必要である。
加えて放射能問題、である。
僕がお話ししたこの2年間の取り組みや思いは、
一民間団体としてやってきたことで、
たとえ、仮に、それが立派な事例であったとしても、
上記のような現場で日々やりくりさせられている人にとって
どれだけ参考になったことだろうか。
最後に、子どもたちの未来&未来の子どもたちのために、
僕らはつながらなければならない、とエールを送って締めくくらせていただいた。
ここでは余計な話だったかもしれないけれど、
食や暮らしに侵入してきているリスクは実は放射能だけでないことも、
忘れたくない。
・ 人口爆発と耕作地の減少。
・ 近代農業(農薬・化学肥料依存型農業) による地力(=生産力) の低下。
・ 温暖化による自然災害の増大と食生産の不安定化。
・ 食システムの巨大化、寡占化。 それはリスクに対する脆弱化を進めていること。
例えば、病原菌による脅威の増大(耐性の獲得など) がある。
自由貿易の名のもとに進む食システムの寡占化は、
パンデミック -感染症・伝染病の世界流行- に対して
極めて脆弱になっていくことを意味している。
・ グローバリズムによる安全性管理の後退(事故や汚染の一触即発化)。
・ 生物多様性の崩壊現象。
・ 越えたとも言われるピーク・オイル
⇒ 近代農業の破綻(あるいは大転換) へと進まざるを得ない。
・ 使える水資源の汚染と枯渇、そして空気まで(例: pm2.5 など)。
- これらすべてがクロスし、リンクし合いながらグローバルに進んでいること。
原発もTPPも、
「地球の健康」 「未来のための安全保障」 という視点から
捉え直さなければならない時代になっているはずなのだが、
どうにも目の前の経済という難敵の呪縛から逃れられないでいる。
(そういう意味でも、脱原発からイノベーションへと進みたい。)
食育基本法という法律までできた時代なのだけど、
現場からは息が詰まるような話ばかりである。
お茶碗一杯のごはん(ハンバーガーでもいい) から世界が見える、
そんな機会を子どもたちに提供できないものだろうか。
しかし、四面楚歌のような状況にあっても、現場で工夫し、
あるいは粘り強い交渉力や調整力で成果を勝ち取ってきた事例もある。
埼玉県越谷市では、調理員さんたち(自治体職員) の努力によって
測定器が現場に導入され、しかもベテラン調理員たちが講習を受けて、
ローテーションで測定を行なうという体制まで敷かれた。
調理工程を熟知した人が関わることで、入荷した食材の測定と使用判断を、
作業を滞らせることなく進めることができる。
そのために雇用が(非正規ではあるが) 一人生まれた。
唸らせる報告だった。
世田谷区では一栄養士として積み上げてきた足跡が語られた。
保護者を巻き込むのにちょっとした工夫が加えられる。
これは公にすると手の内がバレたりするので、公表は控えておきたい。
全国各地で、子どもの健康を守るために頑張っている人たちがいる。
とにかく、孤立させないこと、つながることだ。
つながりながら、新しい社会と豊かな食を築き直していきたい。