新農研の監査報告-追録
新農研の監査同行の出張で、僕は二つのことを教えられた。
監査の趣旨には関係ない話だけど、忘れないでおきたいと思う。
認証機関から後日提出される監査報告に付けるとすれば、
これはただの感傷的な「余禄」でしかないが、
僕の重要な価値基準に、つまり琴線に触れたこととして、
ここではあえて「監査-追録」とさせてほしい。
ひとつは、
監査を終え、青森空港まで送ってくれるという車に乗ってすぐ、
新農研代表・一戸寿昭さんが、「ちょっと見てってよ」と車を止めて見せてくれたもの。
これがウチ(旧平賀町)の「世界一の扇ねぷた」なんよ。
たしかに世界一巨大な「扇ねぷた」らしい
(個人的には図柄の素晴らしさに惚れたが・・)。
しかし、「ねぷた」はこの地方のものでしかないわけだから、
「世界一ってなんよ」ってなもんだろうが、一戸代表の自慢がふるっている。
青森の‘ねぶた(NEBUTA)’は、‘ねぷた(NEPUTA)’が訛(なま)ったもんよ。
発祥はこっちなんよ。
しかもですよ。弘前の‘ねぷた(NEPUTA)’とも違うんよ。
弘前はなんか、決められたマニュアル通りにやってる祭りだけど、
ウチは年々若いもんが、リズムを変えたりしながら楽しんで発展してるのよ。
祭りって、そういうもんでない?
一生懸命標準語(に近い言葉)で喋ってくれるときの一戸さんの抑揚は独特である。
この人は、暑苦しいくらいに、地域に誇りを持ってる。
であるゆえに、改革派でありたいと強く意識している。
新農研のメンバーは30人弱。そこに20代の若者が12人、後継者として育っている。
彼にとって後継者とは、地域の文化をつなぐ者たちである。
「新農研」30年の苦労と誇りが、世界一の扇NEPUTAに重なっている。
津軽モンの偏屈さを自嘲気味に語る一戸さんである。
農業の生き生きとした発展は、理論だけでは創造できない。
その地域の、土の匂いのようなものを伝える先人とのつながりが必要なのだ。
オレは太宰より葛西善蔵だな、と語る津軽モンの一戸さんに、
僕は、腹の中で団扇を扇ぎながら、秘かに14日の日記を恥じた。
もうひとつは、もっと大切なことだ。
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すみません。ガス欠です。明日に続く。