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ぬくもり庵

北海道中富良野の生産団体「どらごんふらい」のメンバー、布施芳秋さん。
いま、廃校になった近くの小学校を、仲間と一緒に改造して宿泊研修施設をつくっている。

「ぬくもり庵」と命名された可愛らしい元小学校を覗くと、なんと教室の数が三つほどで、
元々から学年ごとに分かれることを想定していない造りである。
職員室も数名程度の小部屋。地方の分校というのもいろいろだろうけど、
この小ぢんまりさは……微笑むしかない。

そんなミニチュアのような小学校にも、奥に入ればちゃんと講堂が設えてあって、
足を踏み入れた途端、何処からか

「ここがボクらの学校です!」

という声が聞こえたような気がした。

何組の家族から始まった土地なんだろう。
一世紀も前、男も女も一緒になって死にものぐるいで森を拓き、大地を耕し、
吹雪に揉まれて冬を過ごした開拓者たちがいた。
そこに子供たちが生まれた時の歓喜はどのようなものだったろう。
喜び、希望、そして未来への責任感がこの学舎を建てさせたんだ、きっと。
小さくても胸を張ったことだろうね。

子供たちはこのおもちゃのようなステージで、精一杯声を上げて歌い、
大人たちを泣かせたに違いない。

紛れもなくここは「学校」だ。
子供たちが楽しく語らい、学び、遊び、泣いたりした姿を見続けてきた記憶を
柱や壁に残しながら、今は誰もいない「学校」。

布施さんが残したいと思った学校。
農業の未来を信じる人の力で新たないのちが吹き込まれつつある。

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