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よみがえれ、ブナの森

ちょっと遡ってしまうけど、残しておきたい。
記録-その3

11月3日(土)、文化の日。
秋田は五城目町、馬場目川の上流部にて、ブナの植林が行なわれた。
毎年この日に開催され、今年で15回目となる。

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今では全国あちこちで聞かれる 「ブナの植林」 だが、
杉などの商業材が伐られた跡地をブナ (広葉樹) の森に戻す、という
直接的にお金にならない取り組みに先鞭をつけたのは、ここである。

馬場目川は、大潟村のある八郎潟に注ぐ川。
戦後最大の干拓事業と鳴り物入りで誕生した大潟村にとって、
村を囲む形で残された残存湖は、農業用水であるとともに生活用水でもある。
馬場目川は、彼らにとって文字通り生命線のような川なのだ。

その大潟村の米の生産者たちが、子々孫々まで八郎潟の水を守るために、
川の上流部を豊かな森として残そう、と始めたのがブナの植林活動である。
地元営林署はじめ、秋田県内の自然保護団体、ボーイスカウトなど
たくさんの団体が一緒になって活動を広げてきている。

大地が提携する生産団体 「ライスロッヂ大潟」(黒瀬正代表) もその主体団体のひとつで、
大地が応援して参加するようになったのは、黒瀬さんからの呼びかけによる。
たしか3回目の植林からだった。毎年少人数ながらお手伝いを続けてきた。

そして今年も、全国各地から約150名の支援者が集った。

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開会式の挨拶や説明もそこそこに、時折小雨がぱらつく中、植栽地に向かう。
黄葉したブナ林と清流が我々を迎えてくれる。
水は変わりなく、美味しかった。

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10班に分かれて、植林開始。

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下草が刈られ、植えるポイントごとに白い棒が立てられている。
道路の補修もされていて、これは事前の準備こそ大変だっただろうと思われる。

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親子で植えたブナ。
君がお母さんになった時にも、子どもを連れて訪ねて来るといい。
でっかい樹になってるはずだ。
その時も今と変わりなく、川には水が溢れるように流れていることだろう。
麓の田を潤し続けながら -と願わずにはいられない。

生産者の黒瀬正さんも、精を出している。

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植えたら植えただけですまなくなる。
夏の下草刈りなど、米作りの合い間に山の管理作業も入って、大変でしょう。

「ほら大変よ。ほなけど、しゃあないやんけ。将来のためやからなぁ」
関西弁丸出しの黒瀬さんは、滋賀県からの入植である。


15年で植えた数は、1万2,600本に達した。
もちろんブナという単一樹種だけでなく、ミズナラやカツラ、トチなどを植えた年もあって、
広葉樹の混交林として育てている。
14年前に植えた樹は、すでに幹周りは60センチ、高さ8メートルほどになっている。

若木の森では小鳥や野うさぎなど野生動物の姿も増えてきている。
ブナの実は熊の好物であるが、人間でも生で食べられるのだそうだ。

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水が豊富にある。しかも美味い。
これはすべての ‘安心’ の基盤である。

風景が心を癒してくれる。
この風景は、生き物たちによって構成されている。
生き物が多様であるほど、その風景は美しく輝くのだと、つくづく思う。

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植林後は、廃校になった小学校の体育館で昼食交流会となる。
餅つき大会に焼肉バーベキュー、汁物やおしんこがふるまわれる。

もうすっかり恒例になったソプラノ歌手・伊藤ちゑさんの 「ぶなっこコンサート」。
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我々もけっこう顔馴染みになっていて、いろんな方が
「今年も来てくれたんですね」 と声をかけてくれる。 嬉しいね。
事務局長の阿部さんから指名され、今年も挨拶をさせていただく。

最後は、これまた恒例となっている、「私の子供たちへ」の合唱。
日本でのフィールド・フォークの草分け、笠木透の名曲である。

   生きている鳥たちが 生きて飛びまわる空を
   あなたに残しておいてやれるだろうか 父さんは

   生きている魚たちが 生きて泳ぎまわる川を
   あなたに残しておいてやれるだろうか 父さんは

   生きている君たちが 生きて走りまわる土を
   あなたに残しておいてやれるだろうか 父さんは


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農業を営む人たちが、当たり前のことのように森を手入れする。
その結果として、当たり前のように手に入る ‘環境’ と ‘食’。

お米の値段には、山の作業費は含まれていない。
農業の再生産を支えられれば、
つまり農家の言う ‘当たり前の値段’ で食べてさえくれれば、水も守れる。
しかし世の中はそのように進んでいない。
今日の作業を税金で賄うより、ずっと楽なはずなのだが…

敷き詰められた落ち葉は、やがて土となる。
樹が、水をしっかりと蓄える土を増やしている。
みんな当たり前のこととして、静かに、生命を循環させている。

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本当に、奇跡の星だと思う。

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