山藤 広尾店
昨夜は、今年最後の外での飲み会。
開店して間もない、大地の直営店 『山藤』 広尾店で締める。
『山藤』 の1号店である西麻布店はコース料理がメインで、
正直言って、我々には ‘ちょっと軽く’ という気分では入れないレベルである。
まあ、勝負どきに利用させてもらうって感じ。
一方、広尾店は単品料理で、値段もかなり抑えてくれている。
他団体の方との席だったので、料理の写真を撮ったり、は控える。
ま、もともとあまり、料理を前にして写真をバチバチ撮るのって、好きじゃない。
恥ずかしながら、料理を評したりするのも、実は苦手なのだ。
思うに、どんな料理であれ、
「まずい」 なんて言おうものならお袋から張り倒されて育ったのが、
すっかり 「料理」 を表現できない人間にしてしまったのではないか、
などと秘かに自己分析したりしているけど、
別に親には感謝こそすれ、不満も恨みもない。
終わりごろ、店内風景だけ撮らせていただく。
定番の食材生産者の絵が飾られている。
葉物は東京有機クラブ。
夕べは生産者の阪本啓一さんも来て、カウンターで知人と談笑されていた。
北浦シャモ農場。
お米は神田長平くん。
いただいたのは-
アジとイカの刺身に生ガキを1個、小松菜の煮浸し、キンピラ、里芋煮、
そして北浦シャモと短角牛の串焼き。
仕上げは、ご飯とお漬物。
どんなに褒めても結局は身内なので、賛辞は控える。
ただ、一緒に飲んでくれた方が 「美味い!本当に美味い」 と言ってくれたことは
お伝えさせてください。
特別に、一瞬だけ、と頼んで、厨房を覗く。
手前のお釜がイイね。
いつもここにいるはずの、料理長のウメさんの姿が見えない。
雲隠れ?-まさかね。
年末最後の大勝負、『山藤のおせち』 の仕込みに取り掛かっているのである。
しばらく前に、おせち内容の仕様書が回ってきて、しげしげと眺めたことを思い出す。
通常の加工食品の場合は、「製造工程」となるのだが、
ここでその欄に書かれてきたのは、いわゆるレシピである。
レシピを見ても、ウメさんの腕の秘密が解き明かされるわけではない。
「焼き ⇒ 冷却 ⇒ 煮る ⇒ 煮る」 とか
「洗浄 ⇒ 浸漬 ⇒ 煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る ⇒ 仕上げ
⇒ 計量 ⇒ 金属探知機 ⇒ 品質チェック ⇒ 詰め」
を見たところで……
-いや、待て。
調味料の入れ時の違い、隠し味的な材料、
それに 「煮る ⇒ 煮る」 「煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る」 の行間あたりにも、
奥義の匂いを感じさせるものがある。
加えて、作業ごとの温度と時間の関係、特に時間だ。
最も時間をかけているのが、実は目立たない一品だったりする。
作業ではなく、その間の待つ (寝かす?) 時間だけで、しめて96時間!とか。
材料もすごいね。
揃えたくても揃えられる料亭はないのではないか。
山形村 (現岩手県久慈市) に住み着き、村の人々と山村の食文化に精通した
料理人・梅田鉄哉ならではの品揃えだ。
お値段も張ってしまって、ウチではちょっと……
我が女房どのは 「ムカつく!」 とか言ってるし。
まあ、いつか買えるよう、頑張って働くことにしよう。
でも数量限定だから、職員は注文しても、結局はじかれるんだろうけど。
ウメさんはいま、孤独に違いない。
集中力を研ぎ澄まして、命を捌 (さば) く。
お正月に喜んでくれる見たこともない家族の顔を想像しながら、
「煮る ⇒ 火を止める ⇒ 煮る」 の作業を繰り返しているのだ。
頑張ってね、ウメさん。
どうか暮れぐれも、事故なく届きますように。
ちょっと 「種蒔人」 を飲み過ぎたか…
山藤のおせちには届かないけど、
贅沢な、年末最後の 「飲み会」 となってしまった。