2012年3月 1日

NEWS 大地を守る2012年3月号 環境百科

環境ジャーナリスト・天笠啓祐が身近な環境問題を読み解く

輸入食品添加物での違法行為相次ぐ食品添加物の輸入依存度が増しています。そのため不純物が多いものや、違法なものが大手を振って出回るようになりました。それを象徴する出来事が起きています。

 昨年12 月5 日、食品衛生法に基づく安全審査を受けていない遺伝子組み換え(GM)微生物を使って製造したうまみ成分を持つ添加物2 種類が大量に輸入され、流通していることが判明しました。輸入したのはキリン協和フーズなど4 社で、輸出したのは韓国に本社があるCJ 社。同社のインドネシア工場で製造されたものです。これらの添加物はカツオ節とシイタケの風味を出すために、たれ、つゆ、だし、かまぼこなどの水産加工品やハム、ソーセージなどの食肉製品などに用いられています。こうした添加物の輸入量は年600 ~ 700トン、食品としては180 ~ 200 万トン。多様なGM 食品添加物が堂々と違法流通していたことになります。

 さらに12 月22 日、安全審査を受けていないGM 微生物を用いて製造した添加物をBASF ジャパンが輸入していたことが判明しました。リボフラビン(ビタミンB2)は清涼飲料水やたれなどの着色料や栄養強化剤に用いられ、キシラナーゼはパンを作る際の酵素に用いられています。過去3 年間で、リボフラビンは医薬品原料として約82 トン輸入され、その内36 トンが食品添加物として使用され、キシラナーゼは0.6 トン輸入されていました。

 今回違法流通は、いずれも企業からの報告がなければ、そのまま流通していたと思われます。国にチェック能力がなく、企業からの報告頼みというのが現実です。しかも、違法流通が確認されても、添加物と食品の回収を命じたのは、3 年間でわずか0.6 トンしか輸入されていないキシラナーゼだけ。しかも、「販売された量が少ないため、パンの流通に影響はない」というコメントまで付け加え、企業側に配慮しています。

 さらに問題なのは、安全審査の手続きを開始したり、手続き開始を促し、承認を急ぐことで問題を処理しようとしています。これは本末転倒。輸入食品添加物が増えてきたことで、チェックされにくくなってしまいました。今回見つかった違法流通は氷山の一角にすぎず、遺伝子組み換えを含めて、まだ多数のずさんな食品添加物が流通しているものと思われます。
優先すべきは、国のチェック能力を上げることで、承認を急ぐことではないはず。また、違法行為を行うと企業は大変な損害を受けることを示さなくては、今後また、このようなことがまかり通ってしまうのです。

天笠 啓祐(あまがさ けいすけ)
ジャーナリスト。遺伝子組み換え食品いらない! キャンペーン、市民バイオテクノロジー情報室代表。著書に『遺伝子組み換え作物はいらないー広がるGMO フリーゾーン』『世界食糧戦争』ほか多数。

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