2012年7月 9日
遺伝子組み換え(GM)ナタネ自生調査全国報告集会@福岡
大地を守る会では、1996年のモンサント社の遺伝子組み換え大豆の商業販売開始を
受けて、「遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン」と一緒に、反対運動を展開して
きました。同時に、当社として販売する品目にも遺伝子組み換え食品を使用しないことを
宣言しています。
「NEWS大地を守る」6月号、5ページ、で紹介した、遺伝子組み換えナタネ自生問題。
遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンは全国の参加組織に呼びかけて、
長年GMナタネの自生調査を実施してきました。2012の調査報告会が福岡で開催されたので、
その様子をお知らせします。
当日のプログラム(2012年7月7日、福岡建設会館)
全国に広がり続けるGMナタネ汚染
2005年から始まったこの調査なのですが、残念ながら、毎年、自生地域が広がり続けて
います。また、カラシナなどほかの野草との交雑、多年草化、ラウンドアップ耐性とバスタ耐性
品種どうしの交雑による両耐性化などが進行してきました。今年も900地点以上での調査の結果、
100を超す地点の自生ナタネがGMという結果となり、これまでにない高い割合で発見されて
しまいました。毎年、GMナタネが発見された地域の付近で自生しているタナネ様植物を積極的
に抜き取る作業も進めているのですが、自然の力には勝てず、根本的解決にはなっていません。
隠れGMナタネ問題
昨年、この市民による調査で初めて見つかったのが、「隠れGMナタネ」の問題。これまで遺伝子
組み換え食品いらないキャンペーンでは、次のような2段階でGMナタネを調査してきました。
①自生ナタネを見つけ、その場で「簡易キット」による検査
(ラウンドアップ耐性 or バスタ耐性 or 両方に耐性、のどれかがわかる)
→タンパク質レベルでの検査
②科学的信頼度を上げるため(念のため)、PCR法によりDNA情報を検査
→DNAレベルでの検査
基本は、①が陽性であれば②は陽性。①が陰性であれば②も陰性。しかし昨年、「遺伝子組み換え
食品を考える中部の会」と「農民連」から、①が陰性にも関わらず②が陽性のものが見つかりました。
(※この結果は、何十例かで確認されていて、単純な検査ミスでありまっせん)
簡単にいうと、①は薬局で販売している「妊娠検査キット」と同じ原理のもので、費用はかかりますが
キットさえ買えば普通の市民も実施可能だし、なにより野外でその場で結果がわかります。
しかし②のPCR反応は、専用の試薬と器機が必要なので、市民にはできないうえに、野外では
簡単にはできません。これまで①で陰性ならば大丈夫と思っていたものの中に、GMナタネが
混入しているということになります。これは、検出がやっかいというだけでなく、金川貴博教授
(京都学園大学)によると、もっと怖いことにつながる事態が裏に隠れている可能性があるそう
です。しかし、この「隠れGM」の問題、市民でそれ以上のつっこんだ調査をやるには、金川教授
の話しからすると、相当に困難なようです。ぜひとも専門の調査機関、行政の公的な機関
(大学など)にも積極的に参加してもらう必要があります。これから市民運動の力で実現して
いかなければなりません。
隠れGM問題について議論(左から天笠啓祐さん、金川貴博さん、農民連の八田純人さん)
遺伝子組み換えの問題の根っこは原子力発電と同じ!?
今回は、京都学園大学、金川貴博教授の講演がありました。金川教授は、遺伝子組み換えの
問題の根っこには原子力発電の問題と似たところがたくさんあると説明されました。
・原子は英語で「nucleus」、遺伝子組み換えの正体は細胞の核「nucleus」を操作すること。
・原子力ムラがあるように、「遺伝子組み換えムラ」がある。
といったアナロジーで講演が始まりました。
確かに、両方の問題は、根本的なところでも似ています。
・情報が開示されないまま、あるシステムを押し付けられる。
↓
・そのシステムの安全神話が形成される。
↓
・あることでシステムが崩壊し、市民が被害を受ける。
原子力発電問題
・原子力発電は安全で安価なエネルギーだから推進しようという一方的押し付け。
↓
・情報が開示されないまま、「原子力発電は安全だ」という神話の形成。
↓
・地震により福島原発が崩壊し、市民が被害を受ける。
遺伝子組み換え食品問題
・安全で安価で作りやすいというふれこみで「遺伝子組み換え作物」が押し付けられる。
↓
・情報が開示されないまま「問題が起こらないので遺伝子組み換え作物・食品は安全だ」
という神話の押し付け。
↓
・あることでシステムが崩壊し、市民が被害を受ける。
市民側としては、遺伝子組み換え問題についてのガバナンスがしっかりされるよう、
行政、政治、企業に対し、常に監視を怠らないようにすることが大切です。
①市民側からの啓蒙活動で、遺伝子組み換え作物が必要だというシステムの押し付けを
跳ね返す。国産のもの、遺伝子組み換えに頼らない有機農業で、十分においしい食品が
作られることを実践、広めていく。
②市民で集められる情報については積極的に集め、開示していく。
来年以降も自生ナタネ調査は継続的に実施され、その情報を発信していきます。