2012年7月 2日

NEWS 大地を守る2012年7月号 やっぱり止めよう。TPP

「ちゃんと、たべもの」宣言で、TPPにストップを!

 TPP(環太平洋経済連携協定)のニュースを見ても、「よくわからない」と感じる方が多いかもしれま

せん。環太平洋? 経済連携? 確かに、生活実感とは結びつきにくいですよね。けれど、TPPは、私

たちの生活と確実に深くかかわる問題です。「食」や「暮らし」の安心・安全が大きく損なわれる恐れ

があるからです。大地を守る会はこれまでもTPPに対して「NO」の意思表示をしてきました。今年4 月

には、生協や農業団体と共同で、国内全国紙に「参加反対」の意見広告を出し、農林業団体と消費

者団体と一緒に米ワシントンポスト紙にも意見広告を出しました。

 実は大地を守る会では、震災前にインターネットを利用して、だれもが気軽にたべものについて語り

合ったり、考えたりできる場「ちゃんと、たべもの、プロジェクト(TTP)」の構想をスタートし、昨年8月か

らこのサイトをオープンさせています。(/ttp/

 このサイト上では、ツイッターを利用して「ちゃんと、たべもの」宣言を投稿することができます。

一人ひとりの参加者が、日本のたべものへの思いや決意を発信する。それを見た人が自分なりの食

生活を考える。そんな交流が、TPPに対する「NO」の広がりにつながればと願っています。日本の

「農」や「食」を守るため、ぜひあなたも自分の言葉で宣言してみませんか。

※「ちゃんと、たべもの」宣言については3 ページをご覧ください。

TPPとは?
TPPは、例外なき関税撤廃をはじめ、参加国の金融や投資、医療、保険、労働などのルールを統一

しようという自由貿易協定。医療保険の範囲が狭くなるのではないか、自動車の安全基準が緩めら

れるのではないかなど、食・農業の分野以外でも多くの問題が指摘されています。米国が主導する

形で9カ国が協議中。日本は交渉に参加するかどうか検討中という立場。



私たちの大切な食や農業が危ない

TPPにまつわる7つの不安。

1 GDPが増えたとしても0.05%!?

 内閣府は、TPP参加の利益と損失とを相殺したGDP(国内総生産)の増加額を、10年で2.4~3.2

兆円になるという試算を出していますが、かなり水増しされています。仮に、この試算を認めたとし

て、真中をとって、10年で2.7兆円増えるとしましょう。1年当たりの増加額はわずか2700億円です。

日本のGDPは約500兆円ですから、2700億円というのは、0.054%増えるに過ぎないということにな

ります。

 年収500万円の人に例えるなら、いくら年収が増えることになるでしょうか。たった2700円程度で

す。お父さんが赤提灯でお酒を飲んだら使いきってしまうくらいの金額でしかありません。


2 輸入品が安くなって本当に家計が楽になるの?

日本の市場開放は進んでいて、農産物の場合、品目数の9割がすでに3%程度の低関税となってい

ます。そのため、野菜や加工食品はほとんど安くなりません。日本は農産物に高い関税をかけて保

護しているという指摘があれば、それは誤解です。

 TPPは、日本がこれまで堅持してきた関税の「最後の砦」も明け渡すような徹底した自由化を目指

しています。コメや乳製品、粗糖などがこの「最後の砦」に当たります。農産物は世界人口の増加や

耕地面積の減少などにより需給がひっ迫しています。日本が輸入を増やせば、国際価格も上昇し家

計を圧迫することを忘れてはいけません。


3 遺伝子組換え表示がなくなるかも
 
 TPPでは、貿易促進のためさまざまな分野で国ごとのルールを統一し、大幅な規制緩和を進めるこ

とになっています。そのため、遺伝子組換え、原産地などの食品表示のルールが、「非関税障壁」と

いう理由でなし崩し的に緩和されてしまうのではないか、という懸念が高まっています。

 実際に米国は、ニュージーランドとの交渉のなかで、遺伝子組換え表示を撤廃するよう圧力をかけ

ています。遺伝子組換え食品大国の米国からすれば、遺伝子組換え表示は、米国の食品を販売す

る場合の障害に当たるという考えからです。

 TPPの交渉で主導権を握っている米国流のやり方が統一ルールとなれば、日本が定めている食品

添加物の表示なども廃止、簡素化される可能性があります。


4 牛肉の安心・安全が脅かされる

 日本ではBSE(狂牛病)対策として米国産牛肉の輸入を生後20カ月齢以下としてきました。しか

し、輸入制限の緩和を求める米国の要求を受け、厚生労働省が生後30カ月齢以下に変更する案を

出し、現在、食品安全委員会で検討しています。TPPに参加する場合は、この月齢制限も撤廃され

る可能性があります。食のリスクにつながる問題はBSEだけではありません。米国では、安く効率よ

く家畜を育てるために遺伝子組換え技術で作った成長ホルモン剤も使われています。そのため、ホ

ルモン剤を使った乳製品や食肉が日本国内に輸入されたり、ホルモン剤自体が国内で使用解禁とな

ったりする可能性もあります。国内で使用禁止の抗生物質、体細胞クローンなど、家畜の安心・安全

にかかわる問題はさらに広がる恐れがあります。


5 農業大国が世界の食を独占する

 日本に対する農産物輸出の拡大を狙っている米国など諸外国は、日本と比較にならないほど農業

保護にお金をつぎこんでいます。例えば、WTO(世界貿易機関)に登録されている農業保護指標で

みると、日本の6400億円に対して、米国は1兆7500億円。しかも、米国は過小申告をしていて、本当

は3兆円以上あると言われています。

 農業所得に占める直接支払い(財政負担)の割合をみても、日本は平均15.6%ですが、米国は

26.4%。特に米国は、コメ58%、小麦62%、トウモロコシ44%など、穀物類に多額の予算を投じてい

ます。いかに先進国が農業を大切な産業と考えているかわかります。


6 主食米の90%が海外産に

 関税が撤廃されたら、国内の農産物の生産量は具体的にどう変わるでしょうか。農林水産省による

試算結果は、衝撃的なものでした。主食のコメの生産量減少率は何と90%。ほとんどが、国産米の

約4分の1の安さの外国産に置き換わり、生き残るのは、新潟コシヒカリや有機米など「こだわりのコ

メ」だけとみています。日本の水田の9割が失われると、水田が持つ洪水防止機能や水質浄化機

能、生物多様性の維持などの多面的な機能を大幅に失うことにもなります。

 牛乳・乳製品は56%減少となっています。業務用を中心に2割の飲用乳が外国産と置き換わる見

込みです。牛肉は75%減少で、5段階の肉質等級のうち、生き残るのは上位の2等級という厳しい見

方をしています。テンサイ、サトウキビなど砂糖の原料となる「甘味資源作物」は、品質格差がないた

め、国産が全滅するとみています(※下記コラム参照)。農業がこれほど大きな影響を受ければ、地

域社会の崩壊にもつながるでしょう。


7 日本の食料自給率は14%に低落

 日本の食料自給率はカロリーベースで40%ですが、政府は2010 年、「10 年後に50%まで引き上

げる」という目標を立てました。ですが、TPPに参加して農産物の輸入に歯止めがかからなくなるとど

うなるでしょう。農林水産省が2 年前に発表した試算によると、40%の食料自給率は14%程度に減

少するという結果が出ています(世界全体で関税撤廃した場合の試算)。

 食料自給率を引き上げるためにはコメや畑作の所得補償などに数千億円の予算が必要ですが、農

水予算は毎年削られているというのが厳しい現実です。そういう状況でTPPに参加すれば、食料自

給率アップは遠のき、命に直結する食料を9割近くも輸入に依存することになってしまいます。


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