2012年9月18日

MOP6(インド・ハイデラバード)で何が議論されるのか


9月13日、「食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク」のよびかけで、院内集会が開催されまし

た。今日の報告は、ちょっと専門的な話しを含みますが、遺伝子組み換え作物についての重要な話題

があります。興味のある方はぜひご一読を。また、先にこちらの過去記事をお読みになるとよいです。


COP/MOP会議とは

この基本的な基礎知識については、ぜひ過去記事をお読みください。簡単に説明すると、COPが

「生物多様性条約に関する会議」、MOPがその中の「遺伝子組み換え生物バイオセーフティー議定書

に関する会議」です。この議定書を、締結した都市の名前で、「カルタヘナ議定書」といいます。

MOPとはすなわち、ザクッと一言で言うと、「遺伝子組み換え作物が及ぼす脅威に対して

世界的枠組みをみんなで考えて決めていきましょう」という会議です。

その6回目がインドのハイデラバードで今年の10月に開催されます。この国際会議には、環境省、

農林水産省の方々が出席されます。その会議に先立って、市民側から参加する各省の職員の方に、

日本の市民としての考えを知っておいてもらい、会議の進め方の指針としてもらおうというのが、

今回の院内集会の目的です。


MOP会議のこれまで

「遺伝子組み換え生物バイオセーフティー議定書に関する会議」、MOPは、2000年から始まり、前回

の2010年、MOP5が名古屋で開催されました。名古屋では、「責任と修復」という議題が議論され、

採択されました。これは、「遺伝子組み換え生物による環境への影響が明確にされた場合には、その

責任は開発企業にある」ことをうたったものです。この、市民レベルで考えて至極当然の議案に関しも、

実は各国での批准が進んでおらず、発足にはほど遠い状況にあります。


カルタヘナ国内法 → 雑草だけを守るための法律?

遺伝子組み換え生物(作物)の移動に関する規制を、実効的に取り締まるのは日本国内で2004年に

制定された「カルタヘナ国内法」です。この国内法にもいろいろな問題点があります。

1. 「人への健康」への影響については、実質的に適用になっていない
2. 「食品の安全性」は対象外 → 農作物は適用外
3. 昆虫や鳥、動物への影響についての評価を実質的に適用になっていない

今、日本で我々が問題にしている重要な案件が、ほとんどすべて対象になっていないのです。

1.→ 遺伝子組み換え生物(作物)の人への影響については、個別法でしか取り扱わない
2.→ 今、日本中に拡大している遺伝子組み換えナタネは農作物であるので、取締り対象外
3.→ 遺伝子組み換えナタネを食べた自然動物については知らんぷり

結果として、この法律は、「雑草を守るための法律」になってしまっているのです。カルタヘナ議定書

は、「遺伝子組み換え生物が生物多様性におよぼす危険を取り除くための法律」なのに、結果として

の実効的な法律は、「人」も「動物」も「農作物」も守れない法律になっているということです。


遺伝子組み換え生物(作物)は各地で生物多様性を脅かしている

現在、自然界にはびこっている最大の遺伝子組み換え生物は、やはり、除草剤耐性、殺虫性などの

遺伝子組み換え大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿などです。これらはモンサントなどの多国籍企業が

その種子を一極支配し、ブラジル、メキシコ、中国などの国に輸出しています。これらの国々では、

除草剤耐性雑草、耐性害虫が発生し、農薬使用量が増大しています。また、おおくの野生種の

トウモロコシなどが遺伝子組み換え作物と交雑してしまい、種として存続できなくなりつつあります。

これらの現状は、まさしく生物多様性をはなはだしく脅かしているといえます。

しかしながら、最大の原因国であるアメリカが、実は生物多様性条約、カルタヘナ議定書に加盟して

いません。


新たに不安な遺伝子組み換え関連技術が開発されている

こちらも技術的に専門的な話題になるのですが、カルタヘナ議定書ではその取締りの対象となって

いない新しい技術が開発され、実用化されようとしています。

・セルフクローニング
・ナチュラルオカランス
・人口制限酵素

これらの技術(言葉)の説明はここでは省略させていただきますが、市民側としては、これらの新技術

についても、取りこぼすことなくカルタヘナ議定書の対象として欲しいとおもっています。


問題点はつきないのですが、この日はこれらの案件について各省の担当職員と議論し、10月の会議

で議題としていただきたいという要望を提出しました。また、10月の会議には、「食と農から生物多様

性を考える市民ネットワーク」からも出向いて、会議の方向性を注視する予定になっています。

今回は法律の枠組みを含む複雑な話題でしたが、ぜひ市民の方々にも関心を持っていただくことが

最初の一歩だと思っています。





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