2012年10月31日

食品表示一元化問題 ~食品添加物編~


以前の記事(→URL)で書きましたが、来年の春の国会提出をめざして、消費者庁では、

「新食品表示制度」の素案を策定しています。大地を守る会も参加している

「食品表示を考える市民ネットワーク」としては、市民運動として、下記の三点を主張しています。


・加工食品の原料原産地表示の拡充

・遺伝子組み換え食品のEU並み表示

・加工食品の添加物表示の拡充


今回は、「添加物」について、みなさんとその全体像や問題点を考えていきましょう。

※添加物は、いろいろと複雑な点があるため、書き手の自分も完全に理解してはいないので、

もし、間違いなど、ご容赦ください。書きながら申し訳ないのですが、この記事をうのみにはせず、

ご自身で確認されますことを希望いたします。

なお、参考にしているのは、厚生労働省のこちらです→URL


法律的な解説

まず、「添加物」とはなんなのでしょう。単純な発想では、「加工食品などに添加されている物質」

となるのでしょうか? では、その物質の定義とはなんなのでしょう。そのあたりの点を、法律上の

位置づけから考えてみます。


法律上の定義(食品衛生法4条)
この法律で添加物とは、食品の製造の過程において又は食品の加工若しくは保存の目的で、
食品に添加、混和、浸潤その他の方法によって使用するものをいう。(4条2項)この法律で
天然香料とは、動植物から得られた物又はその混合物で、食品の着香の目的で使用される
添加物をいう。(4条3項)


添加物の指定制(10条)
人の健康を損なうおそのない場合として厚生労働大臣が薬事・食品衛生審議会の意見を
聴いて定める場合を除いては、添加物(天然香料及び一般に食品として飲食の用に供され
ている物であって添加物として使用されるものを除く)並びにこれを含む製剤及び食品は、
これを販売し、又は販売の用に供するために、製造し、輸入し、加工し、使用し、貯蔵し、
若しくは陳列してはならない。


既存添加物(条文なし) 1995年5月24日改正時の附則
現に販売、製造、輸入、使用などが行われている添加物(化学的合成品を除く)を既存添加物
名簿に収載する。(附則2条)既存添加物並びにこれを含む製剤又は食品には、指定制を
適用しない。


法律としては、食品衛生法が関係しているのですが、根本の定義は上の三つになります。

法律には、その下に、附則とか省令(省庁からの命令)、通知といったものや、別添の表が

数多く存在して、それら全体で構成されています。食品衛生法4条で添加物が定義されて

いますが、基本は、単純な発想の定義と大きな差はないように見えます。詳しく見ていきます。

10条で規定されているのが、添加物は基本的に、「指定制」をとっているということです。

「薬事・食品衛生審議会」で安全性が審査され、それを通過したものが、「添加物」として食品

への使用を許可されるのです。「図1」での「指定添加物」にあたります。2011年現在、423種が

指定され、実際に使用されています。その一部の「香料」にさらに3102種類(類指定の香料)が

あります。本来的な意味での安全性には議論があるとして、一応、制度上の安全審査を通過

した物質だということです。


指定添加物リスト→URL

類指定の香料リスト→URL


次に、10条で「天然香料」とされているものです。天然だということで、指定ではないものの、

添加物として許可されているものです。「図1」で「天然香料基原物質」となっているもので、

約600種があります。


天然香料基原物質のリスト→URL


次に、「1995年5月24日改正時の附則」で定義されている「既存添加物」。これらは、

食品衛生法の改正時点で、政府が添加物としてお墨付きを与えた一群の物質です。

これらの安全性の確信度は、「指定添加物」より劣るのかもしれません。

2011年現在、365種が表に記載されています。


既存添加物のリスト→URL


最後が、「10条」で、「一般に食品として飲食の用に供されている物であって添加物として使用

されるもの」となっているものです。略称として「一般飲食物添加物」と呼ばれています。

この一群も、政府が添加物としてお墨付きを与えた一群の物質です。一般飲食物添加物には

企業よりの抜け道があり、省庁からの「通知」によって、任意(好き勝手にではないでしょうが)に

追加できます。この中に、最近の「健康食品ブーム」で有名になった物質が、たくさん入っています。

L-カルニチン、コエンザイムQ10、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イコサペント酸(EPA)などです。

まだ指定添加物として「安全性審査」を経て加わるものは、最低限のラインにあるとしても、

「一般飲食物添加物」として「通知」によって、任意に追加されていくのは、問題がありそうです。


一般飲食物添加物のリスト→URL

通知で非医薬品とされた品目(4ページのアルブミン以下のもの)→URL




bunrui.jpg


































実際の表示について

添加物を法律の問題で考えても、実際的ではないですよね。現実に世の中にある商品の表示に

ある添加物を見てきましょう。写真は、ごく一般的にスーパーなどで販売されている

「インスタントラーメン」の表示です。(当然ですが、商品名などはわからないようにしています)


ramen.jpg











































写真を書き出すと、


めん(小麦粉、食塩、植物性たん白、還元水飴)、肉エキス(豚、鶏)、マー油(豚脂・大豆油・

ニンニク・その他)、食塩、粉末しょうゆ、香辛料、種類(ブドウ糖・砂糖・乳糖)、

動物油脂(豚脂・ゴマ油)、澱粉、たん白加水分解物、野菜粉末、ローストガーリック、

酵母エキス、魚介エキス、調味料(アミノ酸等)、かんすい、酸味料、クチナシ色素、

pH調整剤、カラメル色素、酸化防止剤(ビタミンE)

※原材料の一部にエビ、ゼラチン及び乳成分を含む


表示ですが、あるときから、「原材料」と「添加物」の区別がなくなりました。以前は、別々に表示

されていたのですが、ある都合(添加物を特別視して欲しくない)により、不明瞭になりました。

なので、ここでは「原材料」と「添加物」に分けてみます。また、それぞれの添加物が「図1」の

何に該当するかを分類してみました。


原材料

めん(小麦粉、食塩、植物性たんぱく、還元水飴)、肉エキス(豚、鶏)、マー油(豚脂・

大豆油・ニンニク・その他)、食塩、粉末しょうゆ、香辛料、種類(ブドウ糖・砂糖・乳糖)、

動物油脂(豚脂・ゴマ油)、澱粉、野菜粉末、ローストガーリック、魚介エキス、

酵母エキス、たん白加水分解物
 

添加物

調味料(アミノ酸等)→ 既存添加物

かんすい → 指定添加物

酸味料 → 既存添加物

クチナシ色素 → 既存添加物

pH調整剤 → 指定添加物

カラメル色素 → 既存添加物

酸化防止剤(ビタミンE) → 既存添加物


とこんな感じになります。さてここで、またまたわからない点があります。「たん白加水分解物」や

「酵母エキス」です。これらは、添加物ではないのでしょうか? たん白加水分解物には、

塩酸を使って加水分解するものもあります。しかしこれらは、食品衛生法では添加物に

指定されておらず、「食品」扱いになっています。


さていよいよ添加物のほうです。調味料(アミノ酸等)となっていますが、これは一体なんなのか?

実はここに、一つ、表示のトリックがあります。図2で示しているように、「添加物の省略表記」と

いうものがあります。調味料は、「一括名」として表示できるのです。調味料(アミノ酸等)に分類され

ている郡には、数十種類の化合物があり、それらのうちどれが、何種類入っていても、一つの表示で

OKなのです。これってかなり、「丁寧じゃない」、ですよね。一括名には、調味料のほかにも

全部で14類があり、それらは何種類入っていようが、何が入っていようが、一つの代表名で

表示されます。


今回のラーメンの例には、この一括名が、「調味料」、「かんすい」、「酸味料」、「pH調整剤」の

四類入っています。表示は四つですが、何種類入っているのか、何が入っているかは不明です。

実は、これらの物質の中には、特定の病気や特殊なアレルギーなどに関係しているものもある

と言われていて、そういう人たちは食べられないのです。

この一括名以外にも、図2のような「簡略名」表記もあり、何が入っているのかが不明な場合があり、

上記と同様の問題が発生しています。


一括名一覧→URL

簡略名一覧→URLURL



syouryaku.jpg

































これらの要望(指摘)に対し、事業者側は、「スペースがない」、「コストがかかる」と言って

反対しています。スペースがないということは、現実にそれほど多くの添加物が入っている

ということでしょうか? EUでは、スペースの問題については、記号表記、で対応しています。

すべての記号について知る必要はなくても、かかりつけ医から、「あなたはE512は食べちゃ駄目」

とか注意を受ければ、それを避けることができる仕組みです。(E512は架空のものです)

また、内容がわからずとも、記号がたくさん入っている商品は、ちょっとやめておこう、とかいった

ことにつながります。


添加物の問題はこれらだけではない

食品表示を考える市民ネットワークとしては、「簡略名」や「一括名」の表記については、可能な

範囲で物質名を表示していくよう求めています。食べる側としては、入っているものの物が

わからないと、安心して食べられません。


こらら以外にも、「栄養強化の目的で使用されるもの、加工助剤及びキャリーオーバーについては、

表示が免除」という抜け道があり、これも大きな問題して残っています。


また、表示で最近特に流行しているのが、「糖質ゼロ」、「ゼロカロリー」、「ダイエット○○」といった

強調表示。あたかもこれらの商品が健康に良いかのように、消費者は誘導されてしまっては

いないでしょうか?

これらの商品は、確かに糖質やカロリーはゼロかもしれませんが、その分、人口甘味料など

多くの添加物が入っている可能性もあり、逆に身体に負荷をかけてはいないでしょうか。


あと、「保存料不使用」、「合成着色料不使用」などの表示。たしかに、表示のような物質は

使っていないのだろうけど、実は、保存料の役割をする添加物はほかにもあるし、「合成」じゃ

ない着色料は使ってあったりする。


優良誤認を招きかねないこれらの表示も問題ありといえるでしょう。


また、添加物は、年々、その登録物質が増えています。日本(+輸入品)での添加物の使用

実態(どの物質がどの程度使用されているか)は、なかなかつかめません。日本は今、景気が

いいとはいえません。長いあいだのデフレ圧力で、多くの企業が価格抑制に必死になっています。

そのような環境にあって、本物の代用品として、多くの添加物が使用される背景は整っています。

まずは、きちんと表示すること、消費者の「知る権利」を求めていくことが必須です。


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