2012年11月 7日

食品表示一元化問題 ~遺伝子組換え食品編~


前回の添加物編(→URL)に続いて、今回は遺伝子組換え食品編とします。遺伝子組換え食品は、

添加物と比べれば、法律的な位置づけなどもまったくシンプルで、争点も明確だと思います。

前回の添加物を理解していただけたみなさんなら、5分でわかっていただけると思いますので、

どうぞ気楽にお読みください。


消費者庁Q&A(→URL

厚生労働省(→URL

農林水産省(→URL


法律的な解説

添加物と違って、種類がたくさんあるわけではないのですが、一応、一通り、法的な位置づけ

などを追っていきたいと思います。


食品衛生法
食品が組換えDNA技術(酵素等を用いた切断及び再結合の操作によつて、DNAをつなぎ
合わせた組換えDNA分子を作製し、それを生細胞に移入し、かつ、増殖させる技術をいう。
以下同じ。)によつて得られた生物の全部若しくは一部であり、又は当該生物の全部若しくは
一部を含む場合は、当該生物は、厚生大臣が定める安全性審査の手続を経た旨の公表が
なされたものでなければならない。


遺伝子組換え技術を用いた食品は、一応、「安全性審査」を経て、認可される仕組みとなっています。

しかし、その実態は大変にあやういものだということがわかる事件(事柄)が、昨年、発生しました。

それは、遺伝子組換え技術で作成された微生物を原料とした、添加物の問題です。輸入品の中に、

認可されていない添加物(遺伝子組換え微生物由来)が混入していたことが発覚したのです(→URL)。

普通の市民感覚からすれば、厚生労働省はその販売業者に対しすぐに回収指示を出し、原因追及

などをすべきでしょう。しかしなんと彼らは、これらの添加物をたいした審査もせずに、後追い認可

したのです。行政がいかに業者よりであり、国民の安全を軽んじていることでしょう。これで、この

「認可制度」の信頼性も、一気に地に落ちた感がしました。



表示のはなし

ここまでは厚生労働省の食品衛生法の問題でしたが、ここからは表示になります。表示は、

今のところ、農林水産省管轄のJAS法で定められています。文章は長いのではしょりますが、

「JAS法第7条第1項」に規定されています。まず、上記の問題のような「添加物」の遺伝子組換え

食品は、そもそも表示の対象にすらなっていません。図1を見ながら、読んでください。

まずは、表示対象となっているものが何か、から見ていきましょう。まず、現在の日本で認可されて

いる遺伝子組換え作物は、大豆、じゃがいも、なたね、とうもろこし、わた、てんさい、アルファルファ、

パパイヤです。これら自体やこれらが原料となった加工食品が、表示の対象となっています。

認可されていないものは流通していたら、それ自体が違法だということです。

そして、加工食品にも表示義務となる対象群があって、納豆、きな粉、コーンスターチなど、

33品目群が指定されています。逆に言うと、遺伝子組換え作物が原料であっても、対象品目群

でなければ、表示対象となりません。今のところ、そのような商品が販売されている形跡は

ありませんが、逆に言うと、表示されないので見つけるのも不可能ということになります。


GMhyouji.jpg

































で、ここからは「駄目なルール」ばかりになってしまいます。

「上位3品目ルール」
今、加工食品は多種類の原材料から作られています。遺伝子組換えの表示ルールでは、上位3品目
だけが表示対象で、それ以外に遺伝子組換え作物が使われていても、表示されません。


「全体の重量に占める割合が5%以上」
上のルールに加えて、重量比が5%に達していない場合は、表示の対象になりません。遺伝子
組換え微生物由来の添加物などは、ほとんどの場合、1%未満しか使用されないので、対象に
なりません。


「混入5%許容ルール」
そして、アメリカ、及び事業者への最大の配慮から生まれたルールが、5%許容です。遺伝子
組換え作物の最大の生産国はアメリカです。特に、大豆、とうもろこしについては、アメリカの
畑の90%以上が遺伝子組換えになっています。アメリカから作物を輸入する場合、何ヶ所かの
港に集められ、コンテナに積み込まれ、大きな船で運ばれます。その作業場は、広大で細かい
分別まではできません。今、国どおしで、「分別生産流通管理」に関する規定が決められ、
「非遺伝子組換え作物」の流通が実施されています。この規定を使って流通したとしても、
先述のような理由により、一定の割合で遺伝子組換え品が混入してしまっています。最近の
調査では、3%前後の混入があるということです(伝聞で、根拠となるデータは持っていません)。
このような事態をふまえ、非遺伝子組換えの「分別生産流通管理」をしたものであれば、遺伝子
組換え品の混入(5%まで)があっても、「非遺伝子組換え」として扱っていいことになっています。


「非検出対象外ルール」
最後に紹介するのが、原料が遺伝子組換え品であっても、最終加工品に、組換えDNAやそこ
から生じたたん白質が、現在の技術で検出できなければ、表示対象外、というルールです。
これにあてはまる商品群が、「油」、「醤油」などです。油には「なたね」、「綿」、「とうもろこし」
などが、醤油には「大豆」などが使用されています。


非検出対象外ルール、があるために、実に多くの加工食品が、遺伝子組換え、の表示から

逃れています。輸入実績から見ると、日本はアメリカと並び、世界最大の遺伝子組換え食品

消費国です。しかし現実には、「遺伝子組換え」、と表示された商品は、日本にはほとんどあり

ません。これは、上記四つの例外規定のためです。つまり、今の表示ルールは消費者にまったく

何も示していなくて、「遺伝子組換え食品大量消費国」という事実を覆い隠しているだけ、

ということです。


では、私たちは何を求めていけばいいのか。その答えはすでにEUが出してくれています。EUの

ルールは、図2を見てもらえばわかりますが、完璧に日本の例外を排除するものとなっています。

上位3品目でなく全品目が対象なので、「添加物」までカバーしています(一部、加工助剤などでは、

表示対象にならない規定もあり)。重量比による例外規定もありません。そして肝心な点が、

非遺伝子組換え作物に混入している遺伝子組換え品の割合を、0.9%までとしている点です。

これで、アメリカからの輸入作物は、ほぼ全て「遺伝子組換え」と表示されます。最後に、

「非検出対象外ルール」でなく、トレーサビリティで遺伝子組換えが確認できるものは、表示対象

だということです。これらのルールにより、例えば日本で「遺伝子組換え」ではないとして販売して

いる商品が、同じ中身でEUに輸出されると、「遺伝子組換え」の表示で販売されている場合があり

ます。そういった実例を、「遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン」の方がベルギーで発見され、

会議で紹介されていました。

また、EUのルールでは、家畜飼料も表示対象です。そして、外食産業で遺伝子組換え商品が

販売される場合にも表示義務があります。そのままでなく、調理して出される場合は対象外です。

EUの表示についての参考サイト(→URL



EU.jpg



































コストもかからない、スペースもいらない

「遺伝子組換え」表示に関しては、消費者は、単純にその商品に遺伝子組換え作物が原料として

使用されているか否かが知りたいだけ。単純に、該当するものに「遺伝子組換え」と書いてもら

えればいいだけです。それには、コストもスペースもいりません。政治家、行政の判断だけです。

ぜひ、市民の思いをこれらの人々に伝えて、「遺伝子組換え」表示を実現させていかなければ

なりません。


新しい技術が新たな脅威に

表示の問題はまだまだ残っていますが、そんな中、遺伝子組換えに関しては、新しい技術を

使った遺伝子組換え微生物をメインにした開発が進んでいます。そしてその新しい技術に対して、

厚生労働省は、どんどんとお墨付きを与えてしまっています(→URL)。

それらは、「セルフクローニング」、「ナチュラルオカレンス」、「高度精製品」、「人口制限酵素」など

という言葉で表されるものです。

専門的なことについては、また別の機会にするとして、これらの言葉については、覚えておいて

いただき、報道などにも注意を払っていただければと思います。

市民運動としても、これらの技術に関しては、注視、監視していきます。


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