2014年6月アーカイブ

2014年6月10日

5月31日(土) 自然エネルギー食堂~第1回・初夏~ @ Daichi & keats

「自然エネルギー」×「食堂」


 このキーワードで何をイメージするでしょうか。これまでも大地を守る会では、専門家とともに市民風車を見学したり、バイオマスボイラーをトマト栽培に利用する生産現場を訪れたり、太陽光発電の電気を日本酒造りに利用した「おひさまスパークリング(純米にごり酒)」の乾杯パーティーを開催したりしてきました。

■過去の活動の様子 ⇒ /blog/report/cat109/


 こうしたプログラムを連続的につなぎ直し、自然エネルギーを暮らし目線で捉え、関心のある人たちが集まり、そしておいしいものがそこにあるような場を提供していきたいと思います。それが「自然エネルギー食堂」です。5月31日(土)、丸の内の農園カフェ&バル 「Daichi & keats」にて、「自然エネルギー食堂 ~第1回・初夏~」を行いました。


 まずは学びから。講演のゲストは、環境エネルギー政策研究所の古屋将太さん。自然エネルギーの政策や事例を調査しながら、事業開発支援のため国内外を飛び回っています。


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                     前半は講師の古屋さんのお話に聞き入ります。


 お話の内容は、地域がつくる自然エネルギー社会。風力発電と太陽光発電を筆頭に、急激な勢いでエネルギーの最終消費に対する自然エネルギーの割合が増えているなか、21世紀型社会の方向性としては、中央集権型から地域分散型へ、供給プッシュ型から需要プル型へ、ヒエラルキー型からネットワーク型へなど、構造的な変化が起きていることが示されました。キーワードは「コミュニティパワー」。地域の人たちがそのプロジェクトの主体であり、意思決定をし、その便益は地域の人たちが得る。そうした原則です。


 日本では2001年ごろから市民風車と呼ばれる事業がいくつかあり、3.11以降その勢いは加速しています。古屋さんはそうした事業の立ち上げ過程こそが大切だと語ります。「地域のさまざまなステークホルダーが集まり、時間をかけて課題を洗い出し、協力して解決策を模索するプロセス自体に価値がある」「当初描いた主旨と目的を何度も問い返し、確認しながら前に進むことが大事」と。お話の内容は、参加者一人ひとりのなかにすっと入っていったようです。


 後半はお食事と交流会。大地を守る会が仕入れている有機農業団体の一つ、二本松有機農業研究会(福島県二本松市)から近藤恵さんと大内督さんをゲストに招きました。二本松有機農業研究会は、野菜やお米、油の原料を生産する40年の歴史がある有機農業団体で、2013年、顔の見えるエネルギープランコンペでも奨励先として選ばれています。

■顔の見えるエネルギーコンペの様子 ⇒ /blog/report/2013/05/23/


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      二本松のお二人からは、苦境に立たされている現状とこれからの抱負を語っていただきました。


 この日の料理には、同会の野菜やお米が使われました。例えば、「農園サラダ」のサニーレタス、リーフレタス、スナップえんどう、さやえんどう、「玄米おにぎり」の玄米などです。濃厚にんじんジュースもご提供いただき、ウェルカムドリンクとして振る舞われました。


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                  二本松の濃厚にんじんジュースをウェルカムドリンクに。


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           農園サラダにも、二本松有機農業研究会の野菜がふんだんに使われました。


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                 参加者同士で話をしながら食事を楽しみ、学びを深めます。


 近藤さんは語りかけます。「震災後の放射能の影響もあって、経営的にも心理的にも大きな痛手を受けている。この困難を克服し、農家が誇りを持って取り組めるものの一つとして自然エネルギーに注目している」「スタディツアーで訪れたドイツでは農業者や個人による協同組合の仕組みが整っていて、『自分たちもやればできる』という確信を得た!」と。近藤さんや大内さん、そして古屋さんを囲んで、各テーブルでは参加者同士でゆっくりとお食事と交流を楽しみました。


 持続可能なエネルギーのある社会、地域の人たちが中心になれる社会、そのような未来に向け、ささやかながら有意義な時間になっていればと思います。「自然エネルギー食堂」は、未来を志向して学びと交流を深め、そしてお腹を満たせる(!)場として、これからも展開していきたいと思います。


                                             自然エネルギー食堂事務局 鈴井



2014年6月 3日

イベント「富士酢のお話」を開催しました


5月16日(金)に、大地を守る会・六本木会議室にて、イベント「富士酢のお話」が開催されました。


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120年以上前から伝統の製法で受け継がれ、
作り手の手間と時間をかけて丁寧に作られてきた富士酢。

上の写真の中央、赤ラベルがおなじみの「純米富士酢」です。

富士酢の左は、富士酢をさらに極めた「富士酢プレミアム」。
右が富士酢から生まれた「ピクル酢」です。


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講師は、飯尾醸造の五代目御当主・飯尾彰浩さんです。
京都府宮津市から、お越しくださいました。



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こちらはイベントのようす。
会場いっぱいに参加者が集まりました。


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飯尾彰浩さんのお話を一部をご紹介します。

上の写真は、京都府・宮津にある飯尾醸造です。

京都なのに、なぜ、「富士酢」? と思われることでしょう。
それは、「日本一のお酢を作りたい」という創業者の想いから命名されたからです。

明治時代から続く富士酢ですが、昭和30年代に転機を迎えます。
大量の農薬が使われた戦後の高度経済成長の昭和30年代。
その頃、京都の田んぼにおいても、多量の農薬が使われました。
しばしば田に赤旗が出現したのもこの時代。
赤旗は、農薬をまいた後に、子どもたちが田へ近づかないよう注意喚起する目印であったとか。

農薬のために田んぼで生きる生物が死んでゆく現状をみた飯尾醸造三代目・輝之助さんは、
米から作られる酢にも、農薬の影響が出るのではないか、
人々の健康を蝕むのではないか、と考えました。

そこで、輝之助さんは、地元京都の米農家の皆さんに、
「農薬を使わんと米を作ってくれまへんか」と酢作りのために、
二年の歳月をかけて、周辺の農家さんに農薬を使わない米作りを説得されました。
その熱意に動かされ、ついに数名の農家さんが農薬を使わない米作りをはじめることに。
昭和39年に農薬を使わない米作りが始まり、その5年後昭和44年に無農薬の米から作られた
お酢が誕生したのです。
当時としては、めずらしい挑戦であり、富士酢が富士酢であるための大きな歩みとなりました。



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こちらは、富士酢の原料のお米が育つ宮津の棚田。
「無農薬米」とひと言で言っても、農薬を使わない米作りは、多くの困難があります。
その一つが雑草との戦いです。
特に棚田は、除草のために、大きな機械が入らないばかりか、
畔や土手など、田んぼ以外の草刈りがあり、農家さんの負担は相当なもの。

飯尾醸造四代目・毅さんは、「農家さんがはよう楽できるやり方を」と、
ビニールや液体のマルチなどを試し、さまざな方法に取り組みはじめました。
雑草との戦いは試行錯誤の連続だったのです。
そして、毅さんの模索と心試みは、五代目・彰浩さんの時代にも引き継がれています。



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富士酢は、地元京都の無農薬のお米だけが使われます。

地元の無農薬米を使うという以外も、数々のこだわりがあります。

飯尾醸造では、納品した無農薬のお米以外のものが入らないように、
自社で精米機を持ち、精米も自分たちで行います。

上の写真は、職人さんたちが、蒸したお米に、麹菌をつけ、麹を作っている場面です。
この作業のあとに、日本酒が作られます。

米酢の原料は日本酒。
飯尾醸造は、日本で唯一酒蔵を持つお酢屋さんです。
ほとんどのお酢屋さんは日本酒を作る代わりにエタノールを添加して簡単にお酢を作ります。
こだわったお酢屋さんでも、お酒を酒蔵から買ってきて、お酢を作ります。

飯尾醸造では、お酢屋さん自らが酒蔵をもち、杜氏が泊まり込んで、
1月~3月までの限られた期間で日本酒を作るのです。

この日本酒自体とてもおいしそうですが、法律があり、お酢に使われるためのお酒は
すぐにお酢をまぜ、飲めないようにして、保管しなければなりません。
そして、その中に、酢酸菌というお酢を作る菌を日本酒に入れ、2年の歳月をかけて、
発酵と熟成をさせるのです。

こうして富士酢は完成します。

酸味はもちろん、まろやかで深い旨みを持つ、富士酢の香りと風味の理由が
見えてきました。



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さて、講座では、お酢のテイスティングも行いました。
左から市販品、純米富士酢、富士酢プレミアム。
市販品との色の違いは一目瞭然です。

味の違いは、香りもコクも旨みも市販品と富士酢はまったく違うことは
いうまでもありません。

日本で多く流通しているお酢の発酵は8時間。
すべての工程を合わせて、最短で1日で酢の完成品ができあがるとか。
2年の年月と手間をかけた富士酢とは色も味も大きな違いが生まれるわけです。


富士酢プレミアムは、「大吟醸のように繊細で、しかも旨みがあるお酢」をと、
飯尾醸造四代目・毅さんが夢見て、五代目・彰浩さんに託し、ついに完成した一品です。
酸味はよりおだやかに、円熟した旨み。
会場からは、「お酢が苦手だったけれど、プレミアムなら、そのままいただいても大丈夫だった」
というお声もきかれました。
ちなみに、富士酢には、日本で「米酢」と表示できる量の5倍のお米が、
プレミアムには、8倍のお米がふんだんに使われています。


写真の右隅は、「ピクル酢」で漬け込んだピクルスです。
ジッパー付きの保存袋に切った野菜を入れ、
野菜の3分の1のピクル酢をいれるだけの
手軽さです。
翌日には食べることが出来ます。

ちなみにこのピクルス。大地を守る会の野菜を使い、スタッフでつけたのですが、
本当においしくて、大好評でした。


「富士酢」...その名が示すように日本一のお酢です。

暑さに向かうこれからの季節、皆さんのご家庭で、お楽しみください。






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