<05>知って学ぼう!: 2012年7月アーカイブ

2012年7月20日

7/10(火)「丸の内朝大学」食と農クラス、初回講座レポート

大地を守る会は、「丸の内朝大学」で開講されている
食学部「食と農クラス」とコラボレーションして、
7月10日から食と農のクラスを始めました。

全6回で行われる講座は、定員60名の枠が、
申し込み受付翌日に埋まってしまうほどの人気講座です。

ご報告が遅くなりましたが、7月10日の初回講座のご報告をします。

第1回③-1.JPG

初回は、オリエンテーションということで、
ガイダンスと、大地を守る会のこれまでの取り組みのご紹介をしました。

大地を守る会の直営店、農園カフェ&バル「Daichi & keats」担当している大野から、
食と農のつながり、生活者と農家のつながりについて、
大地を守る会が37年間実践してきた取り組みをご紹介しました。

当日は、60名の受講者が6つのテーブルにわかれ、
自己紹介をしたり、大地を守る会の取り組みを聞くなど、
真剣な表情で、かつ楽しそうに学んでいました。

講座について、詳しくはこちらをご覧ください。


2012年7月 9日

遺伝子組み換え(GM)ナタネ自生調査全国報告集会@福岡


大地を守る会では、1996年のモンサント社の遺伝子組み換え大豆の商業販売開始を

受けて、「遺伝子組み換え食品いらないキャンペーン」と一緒に、反対運動を展開して

きました。同時に、当社として販売する品目にも遺伝子組み換え食品を使用しないことを

宣言しています。



「NEWS大地を守る」6月号、5ページ、で紹介した、遺伝子組み換えナタネ自生問題。

遺伝子組み換え食品いらないキャンペーンは全国の参加組織に呼びかけて、

長年GMナタネの自生調査を実施してきました。2012の調査報告会が福岡で開催されたので、

その様子をお知らせします。


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当日のプログラム(2012年7月7日、福岡建設会館)



全国に広がり続けるGMナタネ汚染

2005年から始まったこの調査なのですが、残念ながら、毎年、自生地域が広がり続けて

います。また、カラシナなどほかの野草との交雑、多年草化、ラウンドアップ耐性とバスタ耐性

品種どうしの交雑による両耐性化などが進行してきました。今年も900地点以上での調査の結果、

100を超す地点の自生ナタネがGMという結果となり、これまでにない高い割合で発見されて

しまいました。毎年、GMナタネが発見された地域の付近で自生しているタナネ様植物を積極的

に抜き取る作業も進めているのですが、自然の力には勝てず、根本的解決にはなっていません。



隠れGMナタネ問題

昨年、この市民による調査で初めて見つかったのが、「隠れGMナタネ」の問題。これまで遺伝子

組み換え食品いらないキャンペーンでは、次のような2段階でGMナタネを調査してきました。

①自生ナタネを見つけ、その場で「簡易キット」による検査
 (ラウンドアップ耐性 or バスタ耐性 or 両方に耐性、のどれかがわかる)
  →タンパク質レベルでの検査

②科学的信頼度を上げるため(念のため)、PCR法によりDNA情報を検査
 →DNAレベルでの検査

基本は、①が陽性であれば②は陽性。①が陰性であれば②も陰性。しかし昨年、「遺伝子組み換え

食品を考える中部の会」と「農民連」から、①が陰性にも関わらず②が陽性のものが見つかりました。
(※この結果は、何十例かで確認されていて、単純な検査ミスでありまっせん)

簡単にいうと、①は薬局で販売している「妊娠検査キット」と同じ原理のもので、費用はかかりますが

キットさえ買えば普通の市民も実施可能だし、なにより野外でその場で結果がわかります。

しかし②のPCR反応は、専用の試薬と器機が必要なので、市民にはできないうえに、野外では

簡単にはできません。これまで①で陰性ならば大丈夫と思っていたものの中に、GMナタネが

混入しているということになります。これは、検出がやっかいというだけでなく、金川貴博教授

(京都学園大学)によると、もっと怖いことにつながる事態が裏に隠れている可能性があるそう

です。しかし、この「隠れGM」の問題、市民でそれ以上のつっこんだ調査をやるには、金川教授

の話しからすると、相当に困難なようです。ぜひとも専門の調査機関、行政の公的な機関

(大学など)にも積極的に参加してもらう必要があります。これから市民運動の力で実現して

いかなければなりません。



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隠れGM問題について議論(左から天笠啓祐さん、金川貴博さん、農民連の八田純人さん)



遺伝子組み換えの問題の根っこは原子力発電と同じ!?

今回は、京都学園大学、金川貴博教授の講演がありました。金川教授は、遺伝子組み換えの

問題の根っこには原子力発電の問題と似たところがたくさんあると説明されました。

・原子は英語で「nucleus」、遺伝子組み換えの正体は細胞の核「nucleus」を操作すること。

・原子力ムラがあるように、「遺伝子組み換えムラ」がある。

といったアナロジーで講演が始まりました。


確かに、両方の問題は、根本的なところでも似ています。

・情報が開示されないまま、あるシステムを押し付けられる。
・そのシステムの安全神話が形成される。
・あることでシステムが崩壊し、市民が被害を受ける。


原子力発電問題
・原子力発電は安全で安価なエネルギーだから推進しようという一方的押し付け。
・情報が開示されないまま、「原子力発電は安全だ」という神話の形成。
・地震により福島原発が崩壊し、市民が被害を受ける。


遺伝子組み換え食品問題
・安全で安価で作りやすいというふれこみで「遺伝子組み換え作物」が押し付けられる。
・情報が開示されないまま「問題が起こらないので遺伝子組み換え作物・食品は安全だ」
 という神話の押し付け。
・あることでシステムが崩壊し、市民が被害を受ける。


市民側としては、遺伝子組み換え問題についてのガバナンスがしっかりされるよう、

行政、政治、企業に対し、常に監視を怠らないようにすることが大切です。


①市民側からの啓蒙活動で、遺伝子組み換え作物が必要だというシステムの押し付けを
 跳ね返す。国産のもの、遺伝子組み換えに頼らない有機農業で、十分においしい食品が
 作られることを実践、広めていく。

②市民で集められる情報については積極的に集め、開示していく。


来年以降も自生ナタネ調査は継続的に実施され、その情報を発信していきます。




2012年7月 2日

NEWS 大地を守る2012年7月号 やっぱり止めよう。TPP

「ちゃんと、たべもの」宣言で、TPPにストップを!

 TPP(環太平洋経済連携協定)のニュースを見ても、「よくわからない」と感じる方が多いかもしれま

せん。環太平洋? 経済連携? 確かに、生活実感とは結びつきにくいですよね。けれど、TPPは、私

たちの生活と確実に深くかかわる問題です。「食」や「暮らし」の安心・安全が大きく損なわれる恐れ

があるからです。大地を守る会はこれまでもTPPに対して「NO」の意思表示をしてきました。今年4 月

には、生協や農業団体と共同で、国内全国紙に「参加反対」の意見広告を出し、農林業団体と消費

者団体と一緒に米ワシントンポスト紙にも意見広告を出しました。

 実は大地を守る会では、震災前にインターネットを利用して、だれもが気軽にたべものについて語り

合ったり、考えたりできる場「ちゃんと、たべもの、プロジェクト(TTP)」の構想をスタートし、昨年8月か

らこのサイトをオープンさせています。(/ttp/

 このサイト上では、ツイッターを利用して「ちゃんと、たべもの」宣言を投稿することができます。

一人ひとりの参加者が、日本のたべものへの思いや決意を発信する。それを見た人が自分なりの食

生活を考える。そんな交流が、TPPに対する「NO」の広がりにつながればと願っています。日本の

「農」や「食」を守るため、ぜひあなたも自分の言葉で宣言してみませんか。

※「ちゃんと、たべもの」宣言については3 ページをご覧ください。

TPPとは?
TPPは、例外なき関税撤廃をはじめ、参加国の金融や投資、医療、保険、労働などのルールを統一

しようという自由貿易協定。医療保険の範囲が狭くなるのではないか、自動車の安全基準が緩めら

れるのではないかなど、食・農業の分野以外でも多くの問題が指摘されています。米国が主導する

形で9カ国が協議中。日本は交渉に参加するかどうか検討中という立場。



私たちの大切な食や農業が危ない

TPPにまつわる7つの不安。

1 GDPが増えたとしても0.05%!?

 内閣府は、TPP参加の利益と損失とを相殺したGDP(国内総生産)の増加額を、10年で2.4~3.2

兆円になるという試算を出していますが、かなり水増しされています。仮に、この試算を認めたとし

て、真中をとって、10年で2.7兆円増えるとしましょう。1年当たりの増加額はわずか2700億円です。

日本のGDPは約500兆円ですから、2700億円というのは、0.054%増えるに過ぎないということにな

ります。

 年収500万円の人に例えるなら、いくら年収が増えることになるでしょうか。たった2700円程度で

す。お父さんが赤提灯でお酒を飲んだら使いきってしまうくらいの金額でしかありません。


2 輸入品が安くなって本当に家計が楽になるの?

日本の市場開放は進んでいて、農産物の場合、品目数の9割がすでに3%程度の低関税となってい

ます。そのため、野菜や加工食品はほとんど安くなりません。日本は農産物に高い関税をかけて保

護しているという指摘があれば、それは誤解です。

 TPPは、日本がこれまで堅持してきた関税の「最後の砦」も明け渡すような徹底した自由化を目指

しています。コメや乳製品、粗糖などがこの「最後の砦」に当たります。農産物は世界人口の増加や

耕地面積の減少などにより需給がひっ迫しています。日本が輸入を増やせば、国際価格も上昇し家

計を圧迫することを忘れてはいけません。


3 遺伝子組換え表示がなくなるかも
 
 TPPでは、貿易促進のためさまざまな分野で国ごとのルールを統一し、大幅な規制緩和を進めるこ

とになっています。そのため、遺伝子組換え、原産地などの食品表示のルールが、「非関税障壁」と

いう理由でなし崩し的に緩和されてしまうのではないか、という懸念が高まっています。

 実際に米国は、ニュージーランドとの交渉のなかで、遺伝子組換え表示を撤廃するよう圧力をかけ

ています。遺伝子組換え食品大国の米国からすれば、遺伝子組換え表示は、米国の食品を販売す

る場合の障害に当たるという考えからです。

 TPPの交渉で主導権を握っている米国流のやり方が統一ルールとなれば、日本が定めている食品

添加物の表示なども廃止、簡素化される可能性があります。


4 牛肉の安心・安全が脅かされる

 日本ではBSE(狂牛病)対策として米国産牛肉の輸入を生後20カ月齢以下としてきました。しか

し、輸入制限の緩和を求める米国の要求を受け、厚生労働省が生後30カ月齢以下に変更する案を

出し、現在、食品安全委員会で検討しています。TPPに参加する場合は、この月齢制限も撤廃され

る可能性があります。食のリスクにつながる問題はBSEだけではありません。米国では、安く効率よ

く家畜を育てるために遺伝子組換え技術で作った成長ホルモン剤も使われています。そのため、ホ

ルモン剤を使った乳製品や食肉が日本国内に輸入されたり、ホルモン剤自体が国内で使用解禁とな

ったりする可能性もあります。国内で使用禁止の抗生物質、体細胞クローンなど、家畜の安心・安全

にかかわる問題はさらに広がる恐れがあります。


5 農業大国が世界の食を独占する

 日本に対する農産物輸出の拡大を狙っている米国など諸外国は、日本と比較にならないほど農業

保護にお金をつぎこんでいます。例えば、WTO(世界貿易機関)に登録されている農業保護指標で

みると、日本の6400億円に対して、米国は1兆7500億円。しかも、米国は過小申告をしていて、本当

は3兆円以上あると言われています。

 農業所得に占める直接支払い(財政負担)の割合をみても、日本は平均15.6%ですが、米国は

26.4%。特に米国は、コメ58%、小麦62%、トウモロコシ44%など、穀物類に多額の予算を投じてい

ます。いかに先進国が農業を大切な産業と考えているかわかります。


6 主食米の90%が海外産に

 関税が撤廃されたら、国内の農産物の生産量は具体的にどう変わるでしょうか。農林水産省による

試算結果は、衝撃的なものでした。主食のコメの生産量減少率は何と90%。ほとんどが、国産米の

約4分の1の安さの外国産に置き換わり、生き残るのは、新潟コシヒカリや有機米など「こだわりのコ

メ」だけとみています。日本の水田の9割が失われると、水田が持つ洪水防止機能や水質浄化機

能、生物多様性の維持などの多面的な機能を大幅に失うことにもなります。

 牛乳・乳製品は56%減少となっています。業務用を中心に2割の飲用乳が外国産と置き換わる見

込みです。牛肉は75%減少で、5段階の肉質等級のうち、生き残るのは上位の2等級という厳しい見

方をしています。テンサイ、サトウキビなど砂糖の原料となる「甘味資源作物」は、品質格差がないた

め、国産が全滅するとみています(※下記コラム参照)。農業がこれほど大きな影響を受ければ、地

域社会の崩壊にもつながるでしょう。


7 日本の食料自給率は14%に低落

 日本の食料自給率はカロリーベースで40%ですが、政府は2010 年、「10 年後に50%まで引き上

げる」という目標を立てました。ですが、TPPに参加して農産物の輸入に歯止めがかからなくなるとど

うなるでしょう。農林水産省が2 年前に発表した試算によると、40%の食料自給率は14%程度に減

少するという結果が出ています(世界全体で関税撤廃した場合の試算)。

 食料自給率を引き上げるためにはコメや畑作の所得補償などに数千億円の予算が必要ですが、農

水予算は毎年削られているというのが厳しい現実です。そういう状況でTPPに参加すれば、食料自

給率アップは遠のき、命に直結する食料を9割近くも輸入に依存することになってしまいます。




NEWS 大地を守る2012年7月号 今月の数字

10倍 → 天然の魚が1kg体重を増やすのに必要な餌の量

        天然の魚が1kg体重を増やすのに何kgの小魚が必要かご存知ですか? 

先月号でもご紹介した『森は海の恋人』牡蠣の養殖家・畠山重篤さんのお話から。例えば、カツオなら

1kgの増加に対し10kgのイワシが餌として必要で、さらにイワシ1kgには10kgの動物性プランクトン、

動物性プランクトンには10kgの植物性プランクトンが必要だとか。

 津波で海が壊れ、魚の姿が見えなくなった気仙沼の唐桑では、調査の結果たくさんの植物性プランク

トンがいることがわかり、畠山さんも大丈夫と確信したそうです。1カ月後、魚たちは戻ってきました。植物

性プランクトンを守るために木を植える。おさかな喰楽部では、今年も9月に厚岸植林ツアー(北海道厚

岸町)を実施します。

(おさかな喰楽部 吉田 和生)



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