<05>知って学ぼう!: 2013年5月アーカイブ

2013年5月23日

遺伝子組み換えサケとアメリカでのGM表示運動



大地を守る会も構成メンバーである、「食と農から生物多様性を考える市民ネットワーク

(以下、食農ネット)が、国際生物多様性の日(5月20日)を記念して、アメリカ食品センター

のペイジ・トマセリさんをお招きしました。

トマセリさんは、弁護士として、モンサントなどを相手に、アメリカ市民の食の安全を求めるため

の訴訟活動をされています。アメリカでは裁判は一つの市民運動の武器なのです。



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今、アメリカでは遺伝子組み換えサケがFDA(アメリカ食品医薬品局)によって認可されようと

しています。このサケには、オオカミウオの成長ホルモンプロモータ遺伝子が挿入されており、

普通のサケより 3 倍の速度で成長するそうです。





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遺伝子組み換え作物大国のアメリカにあっても、動物性の食品が認可されるのは初めてのこと。

しかも、現在流通している遺伝子組み換え作物は、大豆、トウモロコシ、ナタネなどで、

ほとんどが動物の飼料か、加工食品の原料であって、アメリカ人にとっては、直接食べるもの

ではありません。

相当なアメリカ人が、このサケにはかなり面食らっているらしく、「表示くらいしてくれよ」と

いう運動が各州で広がっているということです。


トマセリさんによると、ことの始まりは、カリフォルニア州の主婦たちの草の根運動

だったということです。「Right to Know」、知る権利くらいは欲しいということで、

遺伝子組み換えの表示を求める運動が展開されました。


そして住民投票が実施されましたが、これに対抗して、モンサントやデュポン、バイエル

などのGM推進企業は、なんと4千5百万ドル(日本円で約40-50億円)ものコマーシャル費用を

投票前の3週間に投下し、残念ながら、49:51で、表示にNOの結果となりました。


これが昨年末(2012年末)のことなのですが、カリフォルニアという大きな州でのこと

だったので、この騒ぎは全米に広がりを見せたのです。その後、多くの州(19ほど)でなんらか

市民運動が活性化し、連邦議会にも影響が及んでいるということです。


しかし、遺伝子組み換えサケ、残念ながら認可され、販売される見通しです。

そうすると、切り身やスモークサーモンなどとして商品化されます。


次には、日本への売り込みがされるでしょう。手順としては、

1.食品安全委員会での安全性審査
2.安全だと認める
3.パブコメなどで市民へ意見を求める
4.厚生労働省での流通へむけての許認可作業
5.流通

ということになります。市民としては、3 で、いかに強く反対運動を展開するか。

日本には遺伝子組み換えサケなんていらいなという意思表示をするかになるかと思います。


今回、ペイジ・トマセリさんの話をお聞きし、遺伝子組み換え大国であるアメリカにも、

頑張っている市民運動はある、連携できる市民がいるということがわかりました。

ペイジ・トマセリさんが弁護士になるきっかけのひとつは、学生時代に、モンサントと闘う、

パーシー・シュマイザーさんのことを知ったことだということでした。パーシー・シュマイザーさん

とは、日本各地を講演活動で巡り、一緒に温泉にも入ったこともあります。

国や立場は違えども、目的をともにする仲間を見つけることができたシンポジウムでした。




2013年5月 1日

NEWS 大地を守る2013年5月号 このお弁当、「ルーツ」は見えていますか?

このお弁当、「ルーツ」は

見えていますか?

主菜は魚、副菜には野菜のおかず、乾物の煮ものや、フルーツも添えられていて、

一見しただけでは和風の、バランスよくヘルシーなお弁当に見えませんか?

けれど、この小さなお弁当にも、目には見えない"食の安全"の問題が潜んでいるかもしれません。

食品添加物、農薬、遺伝子組み換え......どこから来たのか、誰が作ったのか......

ルーツが見えない食べものに感じる、さまざまな「?」を、一緒にひもといていきましょう。


実はこのお弁当は、大地を守る会の" 顔が見える"食材を使って作りました。

国産のサバ、じっくり寝かせた味噌、新鮮な野菜、希少な国産のごま、昔ながらの梅干し......
すべて、大地を守る会のカタログで購入できます。
作り手や原料が見える安心を私たちは運び続けています。

このお弁当に使われている食材は......

サバ梅煮/真サバ(長崎県)、国産大豆使用しょうゆ(淡路島)、砂糖・練り梅(梅干し)・梅酢・赤じそ(奈良県、

三重県)、酒

いんげんのごま和え/いんげん(沖縄県、熊本県)、ごま(国産)

切り干し大根の煮もの/切り干し大根(九州)、「大地を守る会の油揚げ」、ニンジン(大地を守る会の生産者)

肉ジャガ/豚肉・ニンジン・ジャガイモ・玉ねぎ(大地を守る会の生産者)、だし汁(カツオ節、宗田節、サバ節、

干し椎茸、昆布)、国産大豆使用しょうゆ(福岡県)、三河みりん(愛知県)

梅干し/梅(奈良県、三重県)、桜(奈良県)

オレンジ/福原オレンジ(静岡県)


遺伝子組み換え  世界で一番輸入しているのは日本

 遺伝子組み換え(GM)とは、ある生き物の遺伝子を、他の生き物の遺伝子のなかに組み込むこと。たとえば、大

豆の中に除草剤が効かない遺伝子を組み込めば、農薬を撒いたときに、雑草は枯れてもその大豆は枯れません。

除草作業の軽減や収穫量の増加が見込めると言われますが、消費者のリスクについては、まだ不明な点が多い

のが実情です。とはいえ、動物実験での悪影響が報告されているほか、除草剤を撒いても枯れない雑草が現れ、

かえって農薬の使用が増えてしまっているとか。

 国内栽培のGM作物はまだ流通していませんが、実は、日本は世界一のGM作物輸入国です。日本の大豆の

自給率はたった6%。おもな輸入元であるアメリカの大豆は作付面積の9割以上がGM大豆なので、輸入大豆は

ほとんどがGM大豆と考えられます。

GM大豆の多くは油脂用ですが、油を搾ったあとの大豆は高たんぱくの飼料として

使われています。家畜の飼料は、食品表示の義務がありませんから、GM飼料で

育った牛や豚を知らずに食べている可能性があるのです。

 大地を守る会では、GM作物を原料とした食品は取り扱っていません。

国産原料の確保が難しいなたね油のなたねも、非GMであることを確認したオースト

ラリア産かカナダ産を使用しています。


放射線照射 食品にわざわざ放射線を照射する?

 殺菌、殺虫、発芽抑止、カビ防止などのために、放射線をあてた食品を照射食品といいます。日本では1972年

にジャガイモにのみ放射線照射が認められ、北海道士幌町農業協同組合の放射線照射施設は、今も稼動して

いています。

 照射食品の人体への悪影響を示す、多くの研究結果があります。オーストラリアでは、カナダから輸入した照射

ペットフードを食べた猫が神経障害を起こして死亡する事故が相次ぎ、2009年に政府によりキャットフードへの

照射が禁止されました。

また、照射食品自体から放射線が出る(誘導放射能)という米軍の研究もあります。

 一方、日本では、あまり知られていませんが、内閣府原子力委員会と全日本スパイス協会は香辛料への照射

解禁を求めています。スパイス協会は、野菜や香辛料など94品目への照射を求めて厚生労働省に許可を要請

しているのです。

 大地を守る会では、照射食品反対連絡会の事務局を担い、食品照射問題に関する情報発信や、スパイス

協会に対して、要請を取り下げるよう文書で伝えるなど、働きかけも行いました。照射食品問題は今が分岐点。

私たちが反対の声をあげれば、必ず止められます。

放射線照射が要請された香辛料(スパイス)
ウコン、エシャロット、オレガノ、カモミール、カルダモン、カレーリーフ、キャラウェイ、クチナシ、クミン、クレソン、クローブ、ケシノミ、ケーパー、コショウ、ゴマ、コリアンダー、サフラン、サンショウ、シソ、シナモン、ショウガ、スペアミント、セージ、セロリー、タイム、タマネギ、トウガラシ、ナツメグ、ニラ、
ニンジン、ニンニク、ネギ、バジル、パセリ、ハッカ、パプリカ、ペパーミント......、他、計94種類


食品添加物 巷にあふれる食品添加物、本当に必要?

商品を長持ちさせる保存料、鮮度が悪くても加工しやすくする結着剤、見た目を良くするための着色料、人工的

なうまみ成分である化学調味料......実に多種多様な食品添加物が用いられます。ただし、ひとことで添加物と

いっても、すべてが悪いというわけではありません。たとえば、とうふに欠かせないにがりや、こんにゃくを固める

ための水酸化カルシウムも添加物であり、これがなくては作れませんし、日本では古くから用いられてきました。

けれども、たいていの添加物は、「これがなくては作れない」というものではありません。

 大地を守る会では、食品添加物について、「製造上不可欠なもの以外、使用しな

い」というポリシーを貫いてきました。それは、「使わなくても作れるから」です。添加

物を使わない食品作りは手間も時間も費用もかかります。それでも、大地を守る会

が37年間続けてきた、食材の持ち味を大切にする食品作りには、添加物は必要

ありませんでした。

 添加物が氾濫する現代、添加物をまったくとらない生活は難しい、という方はまず、「添加物を減らす」ことから

始めてみませんか。たとえば、調味料を変えること。子どもたちに本当のおいしさを教えるという食育の観点から

も、効果的な方法です。


残留農薬・ポストハーベスト 栽培中も、輸送中も。想像以上に使われている!

農作物を栽培するときに散布した農薬が農作物や土壌の中に残ったもの、それが残留農薬です。日本では、

食品衛生法によって、野菜やくだもの、飼料ごとに基準値が決められ、基準を超えると回収命令を受けることも

あります。少し前になりますが、中国産の冷凍ほうれん草から基準値以上の農薬が検出され話題になったことを

覚えている方も多いかもしれません。

 一方、ポストハーベストは、収穫(=ハーベスト)の後(=ポスト)、穀物や野菜に

直接農薬を散布することです。なぜ、収穫後に農薬を使うのかといえば、輸送中、

害虫・カビの発生や劣化を防ぐためです。つまり、日本に輸出されている小麦、大

豆、米(ミニマムアクセス米)、とうもろこし、オレンジ、レモンなどには農薬が

散布されている可能性が高いのです。ポストハーベスト農薬は収穫前に散布する農

薬と比べて、農作物に残留しやすく、人体への影響も大きいとされています。

 大地を守る会の食品は、残留農薬やポストハーベストの心配のない国産品が基本です。やむをえず使用する

場合は、「有機」や「フェアトレード」のものを優先しています。


輸入依存 国産食材を食べるだけでCO2を削減できる!?

輸入食材は、遺伝子組み換えやポストハーベストなどさまざまな問題を含んでいますが、日本への輸送も重要な

ポイントです。輸送にともなってエネルギーが燃やされ、たくさんのCO2が排出されるからです。

 大地を守る会は、2005年からフードマイレージ・キャンペーンを始めました。フードマイルとは、もともとは食べも

のが運ばれた距離を意味しますが、輸送距離が短い国産を選べばフードマイルは小さくなり、遠くから食材を

運ぶ輸入食材は大きくなります。そこで、さまざまな食材の移動距離と輸送手段から排出CO2を割り出し、poco

(ポコ/1poco=CO2100g)という新しい単位をつくり、食べることとCO2排出のつながりをわかりやすくしまし 

た。宅配の請求書に「今週あなたが減らしたpoco」という欄を設け、啓蒙活動を行いました(現在は終了)。

 2009年には生協などの消費者団体も参画し、取り組みは一気に拡大しました。

食べものでCO2を減らすのは、「賢く選ぶ」ことで実現します。これからも、安全や

おいしさに加えて、フードマイレージのことも考え、なるべく"身近な"食べものを選

びましょう。


食品表示、TPP問題...... 食の安全が脅かされている!?

 ザッとひもといただけで6つの項目、一つひとつを取り上げればそれぞれに分厚い本が作れるような食の問題を、

今回まずは簡潔にご紹介しました。私たちのまわりには、添加物が使われていることが読み取りにくい食品表示

の仕組み、遺伝子組み換え作物やポストハーベスト作物の輸入を容易にするTPPなど、食の安全にまつわる問

題が山積しています。こうした問題はどれも、自給自足の昔はもちろん、食べものが作る人から食べる人へ直接

渡っていた時代には、起こることがなかった問題です。


生産者と消費者の間に結ぶ絆、「安心して食べられる食べもの」を

 誰が、どこで作ったのかわからない食べものは、逆にいえば、誰が、どこで食べるかわからない食べものです。

人としてのつながりが希薄な分、その食べものが安心できるものであることの保証も希薄になりがちです。

 大地を守る会では「ルーツがわかっている食べもの」「作り手の顔が見えている食べもの」をお届けしています。

生産者と消費者の間に絆を結び、強い信頼が築かれることで、安心して食べられる食べものを作り、届け、食べ

られるーーそんな関係を目指しているからです。さらには、私たちの食を脅かすさまざまな問題に積極的に向き

合い、解決に向けて努力を重ねていきます。

 本紙では、これからも食の問題を取り上げたり、イベントや講座などを通じて、会員の皆さんに「知る」場を提供

していきたいと思います。

大地を守る会のお弁当はここで買えます 
○東京駅の大地を守るDeliエキュート東京店
○銀座三越地下2階デリカショップ DAICHI


大地を守る会の震災復興支援

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