<05>知って学ぼう!: 2013年6月アーカイブ

2013年6月14日

世界が食べられなくなる日上映+トークショー

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いよいよ6月8日から映画「世界が食べられなくなる日」の公開が始まりました。

有機農業の重要性を提起されている監督による今回の映画では、
遺伝子組み換え"と"原子力"
有機農業とは相容れない、
いのちの根幹を脅かす二つのテクノロジーの意外な共通点を明らかにしています。

6月17日(月)には、上映後のトークイベントに、
大地を守る会CSR推進課の前川隆文が、
この映画に登場するカーン大学のセラニ―ニ教授の論文についての解説を行います。

映画の中で、
「(遺伝子組み換えに対して)賛成とか反対とかではなく、影響を知りたいのだ。」
と科学者が語る場面が印象に残ります。

今回はそうした視点からの論文解説を試みます。
どうぞご来場ください。

ご予約はアップリンクさんにお申し込みください。

日時:6月17日(月)
12:15~14:23上映後 約40分

内容:
「世界が食べられなくなる日」カーン大学セラリーニ教授の論文解説
~遺伝子組み換え作物を与えたラットの長期実験、
カーン大学セラリ―ニチームの実験について~

講師:前川隆文
CSR推進課:学校給食運動、照射食品反対運動、
遺伝子組み換え作物(GMО)反対運動などを担当しています。
(履歴)--------------------------
東京大学大学院にてPh.D取得(トランスポゾンの研究)
大阪大学において色素性乾皮症(遺伝性皮膚がん)の研究
専門:分子生物学 --------------------------



2013年6月 3日

NEWS 大地を守る2013年6月号 『世界が食べられなくなる日』公開記念スペシャル対談

大地を守る会                                    
代表取締役社長                                
藤田和芳

映画監督
ジャン=ポール・ジョー
2004年、自らが結腸がんを患ったことを機会に、『未来の食卓』を製作。2010年の『セヴァンの地球のなおし方』では、すでに遺伝子組み換え食品と原発の危険性を示唆していた。その際の来日で、東日本大震災後の日本を取材し、今作を完成させる。


新作ドキュメンタリー『世界が食べられなくなる日』の公開を迎え、ジャン=ポール・ジョー監督が来日。

大地を守る会の藤田社長と、本紙2011年8月号以来となる、対談を行いました。

(聞き手...NEWS大地を守る編集部)

人類の歴史における2つのスキャンダル

―― お二人が対談されるのは2年ぶりですね。

藤田 前回は福島の原発事故の数カ月後でした。監督が、祝島(山口県上関原発反対の運動が長年行われている瀬戸内の島)で使われている「原発絶対反対」のはちまきを巻いて現れて驚きました。原発がこんな状況になって日本人はなぜ怒らないのか、と叱られたのを覚えています。大地を守る会の多くの会員は、監督の作品を観て、いろんなことに気付かされたことと思います。

―― 今回の映画についても教えてください。あのような映画を撮った、モチベーションはどこからきたのでしょうか。

ジョー 私は、このような状態の地球を残すことが、とても恥ずかしい。未来の世代に毒の入ったプレゼントを贈らなければならないことをすごく恥だと思っているんです。なぜ、毒が入ってしまったかというと、遺伝子組み換え(GM)作物と原子力のせいです。人類の歴史における2大スキャンダルがあるとしたら、この2つではないでしょうか。

 前作の撮影をしているころに、その作品にも参加してくれていたセラリーニ教授から、打ち明けたい秘密がある、と言われました。「5カ月前からGM作物に関する実験をしている。われわれが目にしていることは、誰も想像ができなかったことだ。だから今この問題に関する映画をつくるべきだ。それを君の手でやってもらいたい」と。 そして、この映画の撮影中に、福島の事故がありました。この映画では、原子力とGM作物のテクノロジーを結びつけて扱っています。この2つは密接につながっているのです。つまり、反民主的に、人間に押しつけられたもの、しかも人間には制御不可能なテクノロジーで、取り返しがつかないという性質を持ち、同じような病気を引き起こします。しかも、それらがもたらす汚染は一日や二日で消えません。何世紀にもわたって残り続けます。だからこそ、この映画をつくったのです。

藤田 映画を観て真っ先に思ったのは、世界中の政治的なリーダー、あるいは世界中の研究機関に、セラリーニ教授が行ったのと同じような実験をしてほしいということです。いかにGM作物が人間に害を与えるのかということを、あのラットの映像と同じように、世界中の人に向けて明らかにしてもらいたい。あの実験の前までは、モンサントのたった3カ月の実験の結果で、人間の体には害がないという根拠となり、GM作物が流通することになりました。セラリーニ教授は、そうではないということを明らかにしてくれた。監督はわかりやすいように、それを映像に撮って世界中の人に広めようとしている。とても重要だと思います。

ジョー 皆さんにも受け入れてもらえるとうれしいです。

藤田 映画は大きな役割を果たすと思います。第一に、本来なら人類がみんなで使うべき種を、モンサントという一つの企業が独占しているという大きな問題を皆さんに知ってもらうこと。第二に、GM作物の特徴ですが、ある特定の除草剤、ラウンドアップをいくらでも使ってしまうということ。

 私たちが勉強してきたこの2つの問題は、日本の消費者にはわかりにくい面もありました。しかし、GMトウモロコシやGM大豆が、私たちの体にどんな悪さをするのか、具体的なことを知らせるのが一番わかりやすいし、とても大事なことです。今回の映画はそういうインパクトがあります。

ジョー ありがとうございます。

彼らの商品を買わないという一票を投じること

藤田 モンサントや原子力など、巨大な企業、産業に対するレジスタンスをしていると、圧力や弾圧はありませんか。

ジョー ありますよ。たとえば経済的な嫌がらせ。彼らはお金を持っていて、それを武器としています。でも彼らがどうやってそのお金を手に入れたかというと、私たちが払っているのです。私たちが消費することで、彼らにお金を渡しているのです。私たちは、彼らにお金を与えるのをいつやめられるのでしょうか。

 フランスの大手テレビ局でジャーナリストが私にインタビューをしたのですが、検閲されました。私の映画は一度も、その国営テレビで放映されません。なぜなら、テレビ局の一番の広告主は、世界を汚染している企業で、私はその企業を糾弾しているわけですから......。

国家に属する警察の人たちが、映画館の館主に対して脅迫じみたことを言って、私の映画が上映されないということもありました。日本でも、前回の来日のとき、ラジオ局が私にインタビューをしたのですが、カットされてしまいました。おそらく私がしていたはちまき(原発絶対反対)のせいでしょう。はちまきしている姿を電波で流せるなんて、日本のラジオはすごいですね(笑)。



「彼らの商品を買うということは

未来の世代を担保に入れているようなもの。」





―― そのような巨大な企業に対して、私たち一人ひとりは何をすればよいのでしょうか? どうしたらより良い未来がつくれるのでしょうか。

ジョー さっきも言いましたけれども、彼らは私たちのお金を搾取して自分たちの武器にしています。だから、彼らのために消費してはいけない。つまり、スーパーに行って、カートを押したら、「買わない」という一票を投じることが大事です。彼らの商品を買うことは、未来の世代を担保に入れているようなもの。そういうことはストップしましょう。

藤田 そのためには事実を知らないといけません。日本人はここ数十年の間に、肉を食べる食生活に変わりましたが、その穀物飼料の97%以上は海外から輸入したものです。そのうちのほとんどはアメリカからのGMトウモロコシです。でも、安全でおいしい国産の肉を食べていると日本人は錯覚しています。

 私たちもいろいろと取り組んでいますが、GM作物にただ反対するだけでは力がわいてこないので、別の「これを食べるといいよ」と消費者に伝える必要もあると思っています。大地を守る会では、日本の伝統的な種を、生産者の人たちに栽培してもらい、それを消費者の人たちに食べてもらっています。もちろん反対は必要ですが、こうした取り組みも必要だと思っています。



「GM作物が、私たちの体にどんな悪さをするのか、

具体的でわかりやすく描かれている。」





ジョー それはいいことですね。でも、今起こっているこの状況をストップすることも忘れないでほしいと思います。たとえば、排気ガスを出す車に乗らないとか、有機の綿でない服を買わない、というように。私たちは責任をもって「ノン」と言うことも必要です。

 では、この世で一番安価で、クリーンなエネルギーは何だと思いますか?

藤田 太陽ではないですか。

ジョー 違います。答えは、消費しない、ということです!(一同笑いがおこる)でも、これは大事です。ちょっと例をあげましょう。2年前、環境に関するフランスでのシンポジウムに招待され、セヴァンさん(※)と一緒に出席しました。太陽が燦々と輝いていた午後......、討論会場は、天井からどこからすべてのライトがついていました! このライト、本当に必要ですか、と私は言いました。私たちは、ライトを全部つける必要はないということを意識しなければなりません。ときどきは全部つけても良いと思いますが、たまにはつけないことや、ちょっとしかつけないことが蓄積されていくんです。

藤田 大地を守る会ではキャンドルナイトというイベントを10年前から行っています。夏至と冬至の日に、2時間電気を消して、電気ではなく、ロウソクの灯で過ごそうというものです。1000万人もの人が参加しています。この2時間は電気を消費しません。

ジョー セビアン。ブラボー。とても重要ですね。 たしか原子力は日本では30%くらいの供給量だった思います。自宅に照明が3つあるとして、一つをつけないだけで、原子力の30%分です。みんながそれをやれば、解決できますね。いくつかついていればちゃんと歩けるでしょう。


モントリオール映画祭ではすごく好評でした!

藤田 私は、映画の冒頭の台詞を書き留めました。「アメリカにとって、GM作物は第三世界から経済的な自立を奪うための兵器です」と。とても印象に残りました。

ジョー ニクソン大統領時代のキッシンジャー長官は言いました。世界を制覇するには、食糧を制覇するのが手っ取り早いと。だからアメリカで、GM作物が推進されたわけです。種子を私有化するなんていうのは、生物、個人を私有化するのと同じです。

藤田 監督の映画は、アメリカの国内では上映されないのですか?

ジョー されていません。

藤田 モンサントのような企業のある国の国民にこそ観てほしい映画です。

ジョー モントリオール映画祭では上映されました。主催者はカナダで配給したかったようですが、できませんでした。阻止されてしまったのです。でも、映画祭では、すごく好評でした。

藤田 アメリカやカナダで上映されない分、私たちが日本で頑張りましょう!

 日本は広島と長崎、そして福島も経験して、世界中で誰よりも原発の問題に反対して、明らかにすべきだと私は思っています。

 それと、監督が言っているように、原発の問題と遺伝子組み換えの問題は、テクノロジーとしては根っこが同じです。監督の映画をぜひたくさんの人に観てもらいたいと思っています。モントリオール映画祭ではすごく好評でした!

※セヴァンさん......12歳のときに環境サミットで伝説のスピーチを行った、セヴァン・カリス=スズキさん。20年後、ジョー監督の『セヴァンの地球のなおし方』に主演。現在も地球のために活動中。


『世界が食べられなくなる日』

6/8(土)より、渋谷アップリンクほか全国順次公開。

詳しくは、公式ホームページをご覧ください。

http://www.uplink.co.jp/sekatabe/



NEWS 大地を守る2013年6月号 GLOBAL REPORTS

エコシュリンプの新加工場が完成!

インドネシアで紡ぐ

フェアトレードの新たな物語

インドネシアのスラバヤ郊外シドアルジョで、エコシュリンプの新加工場(PT. Alter Trade Indonesia社(ATINA社))が完成しました。自然が育てる養殖エビに取り組んで20年。その歴史を振り返りながら現状を報告します。
(広報・国際課 豊島洋)








エビによく使われる黒変防止剤や保水剤などを使用せず、一度凍結したら解凍、再凍結はしません。鮮度が命。殻むき一つをとっても熟練した技術が必要です。








スラバヤ郊外シドアルジョの養殖池。
産地はほかに近郊のグレシック、スラウェシ島にもあり、合計3カ所です。
シドアルジョではプラヤンと呼ばれる竹かご(写真のもの)で収獲されます。





エコシュリンプってなに?

 かつての高級食材であったエビは、1961 年の輸入自由化以降、輸入量が急増し大衆食材の一つになりました。その多くは東南アジアから輸入され、乱獲による漁場の荒廃、養殖場の乱立による自然環境の破壊につながってきました。1992 年、(株)オルター・トレード・ジャパン(以下、ATJ)は、自然にまかせ、環境に負荷を与えない粗放型養殖をする生産者と出会い、生協などとともに取り扱いを始めたエビをエコシュリンプと呼んでいます。



エコシュリンプはブラックタイガーという種類。
自然の力で大きく育ちます。
池のほとりで食べた獲れたてのエビは美味でした。
皆さんにお届けするエビは冷凍した状態ですが、
おいしさは変わりません。
できるだけ鮮度を損なわずお届けいたします。






貴重な粗放型養殖

 養殖と聞くと、人工飼料や抗生物質などを多用するものを想像しますが、粗放型養殖はまったく異なります。300 年以上前からジャワ島に伝わる魚(ミルクフィッシュ)の養殖法とエビの習性に合わせた飼い方を組み合わせることにより、薬剤や人工的な飼料を一切与えることなく、自然のままで養殖できる方法です。

広々とした養殖池は海水と淡水が混じる汽水に満ち、魚やエビ、カニなどが共生しています。放流された稚エビは、水草が発酵して発生したプランクトンや虫を食べて大きくなります。エビの収獲は海水の干満を利用した仕掛けや網などを使い、収獲後できるだけ素早く氷で締められ、収獲日時、場所、収獲者を記載したカードとともに封印され加工場まで運ばれます。


新加工場が完成

 3月24日に開所式を迎えたエコシュリンプの加工場は、以前にも増してより安全で衛生的な加工場となっていました。ハセップ(HACCP)の管理手法を採用し、日本の食品加工場同様の衛生基準を満たしています。

さらに排水にも気を使い、BMW(バクテリア・ミネラル・ウォーター)技術を取り入れています。BMW技術とは、自然の自浄作用をモデルにバランスよく微生物を活性化し、生き物にとって「よい水」「よい土」を作り出す技術です。工場で働く人びとの労働意欲も高く、チームワークも良い職場となっています。自分たちの仕事が全体のどの部分を担っているのかを認識すること、安定した収入と良いコミュニケーションにより、働きやすい職場であることが感じられました。エビを育てる人、運ぶ人、加工する人、それぞれ責任感を持ってエビを扱うこのシステムが、何ごとものんびりしたインドネシアで実現できたことは20 年間にわたる試行錯誤の賜物と思われました。信頼なくして成り立たない安全性は日本と変わりません。


村井吉敬先生のご遺志をついで

 ATJの母体であるAPLA(あぷら、旧日本ネグロス・キャンペーン委員会)の共同代表、村井吉敬先生が3月23日に永眠されました。村井先生は、エコシュリンプの取り扱いのきっかけをつくってくれた方です。『エビと日本人』その他の著作で、日本と東南アジアの関係を明らかにし、新しい関係づくりを提案された村井先生のご遺志を継ぎ、開所式では全員が黙とうを捧げ、ご冥福を祈りました。よりおいしくより安全なエビを届けること、さらに現地の人々の生活に寄与し、自然環境を守る生産と流通のあり方を考えること。現地で各担当者と話をして、これからもこの模索は続いていくことを実感しました。





エビは手でも収獲されます。
腰をかがめて底を探ると、エビが驚いて水面高く跳ねますが、
熟練者は後ろに逃げるエビを上手に捕まえます。
薬剤漬けの養殖池では見られない風景です。



大地を守る会の震災復興支援

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