<05>知って学ぼう!: 2013年7月アーカイブ
2013年7月 1日
NEWS 大地を守る2013年7月号 食品表示の摩訶不思議
食品表示を知ることで、食の安全の問題が見えてくる食品表示の摩訶不思議
去る4月、食品表示法案が閣議決定されました。
2015年春からの施行に向けて、具体策の検討も始まっています。
遺伝子組み換え食品、食品添加物、原産地などの表示問題をどう扱っていくのか、
私たちは、これからの数年間、注意深く見守っていかなければなりません。
食品表示の「今」を知ることは、賢い買いものにつながり、
食の安全の問題を垣間見ることができるでしょう。
(NEWS大地を守る編集部)
基本編
食品表示の基本的な読み方
1 名称
食品の内容を的確に表現するため、一般的に通用する名称を表示。畜産物は、部位(バラ、ロースなど)、用途(焼肉用など)が、水産品は、生食用・加熱用、天然・養殖が併記されることもある。
2 原材料名
原材料と食品添加物が、それぞれ多い順(重量比)に書かれている。「保存料」などの用途名は、食品添加物とわかる。原材料の原産地や、アレルギー物質を含むか、遺伝子組み換え作物を使用したかもここに表示される。使用した原材料はすべて表示するのが原則だが、例外規定も多い。
3 賞味期限(期限表示)
未開封、適切な保存状態で、品質が保持される期間。
「賞味期限」は、期限内であればおいしく食べられるという意味で、期限を過ぎてもすぐに食べられなくなるわけではない。スナック菓子や缶詰など、3カ月を超える場合は年月表示だけでOK。
「消費期限」は、食べても安全性を欠くおそれがない期限を示す年月日のこと。そうざいや生鮮品など、日持ちが悪い食品が該当する。弁当などは、年月日に加えて時間まで表示するのが望ましいとされる。
どちらも、具体的に表示場所を示せば、別の場所に表示することもできる。
4 製造者
製造者の名称、工場の所在地。消費者庁に製造所固有記号を届ければ、製造者の本社住所や、販売者としての表示も可能。輸入品の場合は輸入者となる。
新しい表示は消費者本位?
従来の食品表示は、いくつかの法律で定められ、規定している表示項目もバラバラで、非常にわかりにくいのが問題です。それぞれの法律の管轄省庁が異なることも、事態の解決の足かせになっていたかもしれません。
新法は、「食品衛生法」「日本農林規格(JAS法)※」「健康増進法」の表示規定を一元化して、わかりやすい表示を目指すものです。4月に発表された法案の骨格には、「消費者の権利」が明記され、大きく前進した印象です。しかし、法律は「枠組み」を決めただけで、食品添加物や遺伝子組み換え食品の表示など、個々の問題については、まさにこれから検討されるのです。
思い出されるのは、およそ20年前、「製造年月日」表示が消えた日のことです。食のグローバル化がすすむなか、製造年月日の代わりに賞味・消費期限を表示することになりました。このときによくいわれたのは、「いつ作ったのか」よりも「いつまで食べられるのか」を表示する方が消費者にとっても便利、という理屈。いかにも消費者のために変更したような言い分ですが、実際は国外のメーカーに不利になるという理由で、外国政府・企業の圧力があったといわれています。
※ 農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律
食品表示、見てますか?
食品表示は、「いつ」「誰が」「どんな材料」で作ったのかなどがわかり、消費者の食品選びのよりどころとなるべきもの。
しかし実際には、消費者が望むような、十分な情報が開示されているとはいえません。食品表示から食品について読み取るのが難しかったり、残念ながら、そのまま鵜呑みにできない情報もあるようです。
今回の特集では、食品表示の基本をはじめ、現状の問題点を取り上げました。
自分や家族のために、納得して食品選びができるように、食品表示について学びましょう。
現状の問題点を、食品表示を考える市民ネットワーク・西分さんが解説
食品〝表示〞なのに、
なぜ〝表示〞されない?
応用編
いくつかの法律にまたがっていることや、さまざまな例外や条件のせいで複雑化している食品表示。
新しい食品表示法によって、改善の方向に向かうのか見守っていくことが大切です。
そのためにも、ここでは現状の問題点を確認しておきましょう。
大地を守る会も参加している「食品表示を考える市民ネットワーク」事務局・西分千秋さんに食品表示の〝本当の読み方〞を教えていただきました。
☆一緒に勉強しましょう
食品表示の問題は、法律以外の部分でも、作る側の責任を追及してよいと思いますが、私たち消費者も勉強しなければなりません。現在は、食に対する意識がまだ低いと感じることもあるので、食品表示を学ぶことが食生活を見つめ直すきっかけになるとよいですね。
お話を伺った方 西分千秋(にしぶんちあき)さん
生協の組合員活動から食の問題に興味を持ち、「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」の活動に参加。現在は、「食品表示を考える市民ネットワーク」事務局も担当。
加工食品の原料原産地
国産の表示がある加工食品に輸入原材料が入っている!?
ケース1
キャベツ単品のカット野菜は生鮮品なので原産地表示が必要だが、ドレッシングをかけると加工食品となり、表示されない。
ケース2
国産キャベツ60%・輸入レタス40%のカット野菜の重量比50%未満のレタスの原産地は、表示されない。
原材料:キャベツ(国産)、 レタス( )←どこ産かわからない!
西分さんコメント
野菜や肉・魚などの生鮮品は、国産か外国産かが必ず表示されます。一方、加工食品はというと、原料原産地の表示義務があるのは、決められた4品目・22食品群※だけ。さらに、重量割合が50%以上のものだけ表示すればよいというルールがあります(農産物漬物と野菜冷凍食品は重量割合が5%以上の主な原材料)。
ケース1のように、笑ってしまうようなおかしな例もたくさんあります(下図参照)。もう、ほとんどの加工食品は、原料原産地を知ることができませんね。なるべく国産のものを選びたいと思っても、どうしようもないのが実情です。
ケース2のような場合は、すべて国産のつもりで選んでいる人も多いかもしれません。
また、輸入した果汁を、国内の工場で加工した濃縮還元ジュースが、「国産」として売られていることがあります。ある企業に問い合わせたところ、制度上は問題ないという答えでした。確かにその通りなのですが、果汁まで国産と誤解を与えてしまう可能性が高いので、消費者の立場にたった表示とはいえません。
※4品目
1:うなぎ加工品 2:かつお削りぶし 3:農産物漬物 4:野菜冷凍食品
22食品群
農産加工食品(きのこ類・野菜・果実):1.乾燥したもの 2.蔵したもの 3.ゆで・蒸したもの、あん 4.異種混合したもの 5.緑茶、緑茶飲料 6.もち 7.いり豆類、あげ落花生 8.黒糖及び黒糖加工品 9.こんにゃく
畜産加工食品(食肉):10.調味したもの 11.ゆで・蒸したもの 12.表面をあぶったもの 13.フライ種として衣をつけたもの 14.異種混合したもの水産加工食品(魚介類・海藻類):15.乾燥したもの 16.塩蔵したもの 17.調味したもの 18.こんぶ巻 19.ゆで・蒸したもの 20.表面をあぶったもの 21.フライ種として衣をつけたもの
その他:22.4.または14.に掲げるものの他、生鮮食品を異種混合したもの
これって生鮮品? 加工食品?
加工食品は原料原産地の表示義務はありません。
表示義務アリ 表示義務ナシ
カット野菜 ← キャベツ → ドレッシングをかけたカット野菜
炒り落花生 ← 落 花 生 → 砂糖をからめた落花生
揚げ落花生
ゆでだこ ← た こ → 酢だこ
刺 身 ← ま ぐ ろ → ツナ缶
遺伝子組み換え(GM)食品
GM作物が入っていないものを、消費者は選べない!?
ケース1
しょうゆやコーン油、なたね油は、遺伝子組み換え作物を使っていても使っていなくても表示の義務がないので、表示されない。
原材料 :大豆、小麦、塩
↑
GMかどうかわからない!
ケース2
GM大豆を使っているが、その製品の原材料の重量比で上位3つに入っていないので、表示されない。
西分さんコメント
遺伝子組み換え作物かどうか、表示が義務づけられているのは、8種の農作物(大豆、トウモロコシ、てんさい、なたね、パパイヤ、アルファルファ、ジャガイモ、わた)と、それらを原料とする加工食品33食品群だけ。しかも、「製造工程などでの混入を考慮して」という理由で、5%以下であれば表示しなくてよいことになっています。さらに、5%以上だったとしても、ケース2のように上位3つに入らなければ、表示の義務がないのです。
もちろんGM作物自体に反対ですが、百歩譲って、GM作物を使っていることを「表示」してほしい。現状の制度では表示の義務がなく、「消費者の選ぶ権利」が行使できないのです。私たちは知らずのうちにGM作物を食べているのでしょう。
また、家畜の飼料はGM表示の対象外です。牛、豚、鶏の飼料は、その多くに輸入トウモロコシが使われ、GMトウモロコシが含まれています。これは、間接的にGM作物を口にしていることになりませんか?
最後に、遺伝子組み換えの表示はTPPの成り行きによって大きく変わります。まったく表示できなくなってしまうかもしれません。こちらも見守る必要がありますね。
食品添加物
"わかりやすい"表示は使用目的が伝わらない!?
ケース1
ビタミンC(L-アスコルビン酸)は、「ビタミンC」とだけ表示されているので、その使用目的がわからない。
ケース2
「調味料(アミノ酸等)」と用途を表示すればまとめて表記できるので、L-グルタミン酸ナトリウなどの物質名は、表示されない。
原材料: 調味料(アミノ酸等) 、 ph 調整剤
↑
等ってなんだろう?
西分さんコメント
食品添加物は、ケース1のように、簡略名や別名などで表記した場合、その使用目的がわからないことがあります。また、あるビスケットの例ですが、ビタミンB1、B2、B6と書いてあり、栄養強化のために使われていると思いこんでいましたが、B2の使用は着色のためでした。これも誤解を与える可能性が高い書き方ですね。
逆に、ケース2のように、用途が同じであれば、まとめて表記することが認められています。企業は、消費者の拒否反応がおこらないような言葉を、あえて選んで使っているので、注意が必要です。ある添加物の代わりに、聞こえの良い名前の添加物を使って、それを表示したら売上が伸びたという例もあるくらいです。
アレルギーの問題もありますので、原則のとおり、すべての化学物質名を表示することも重要だと思います。
その他の表示免除例
例外規定が多すぎて、たくさんの抜け道がある。
ケース1
テイクアウトしたソフトクリームは容器がないので、表示されない。
ケース2
コーヒーフレッシュは、表示スペースが小さいので、表示されない。
ケース3
せんべいの製造に使われたしょうゆの保存料はキャリーオーバーにあたり、表示されない。
キャリーオーバー:原材料を製造するときに使用された食品添加物が最終製品に移行しても、微量で最終製品に効果を及ぼさないとされる場合
ケース4
豆腐を作るときに、大豆汁の消泡のためにシリコーン樹脂を用いたが、加工助剤なので、表示されない。
西分さんコメント
これらケースのすべてが悪いというわけではありませんが、例外規定が多すぎるのは問題だと思いますね。今度の改正でも、消費者が見やすいように文字を大きくしようという動きがあります。でも、そのせいで表示内容が省略されては本末転倒です。
食品表示法案は、理念の部分が示されて、個々の問題についてはこれから検討していくという段階。現在のように例外規定がたくさんできるようだと、骨抜き法案になってしまいます。そのあたりもきちんとチェックしていかないといけません。
大地を守る会編
大地を守る会の取り組み
基本姿勢は、「確かな情報を集めて、開示する」
大地を守る会では、商品ごとに「生産基準・取り扱い基準」を定めています。基本的には、「誰が、どのように作り、どのように届けたか」という道のりの正確な情報を把握し、公開しています。
● 農産物・菌茸類は、ホームページに全項目表示
● 使用した農薬は、ホームページで表示
● 加工食品は、ホームページで「原材料の原材料」までを表示
詳しくは、大地を守る会ホームページ「あんしんの約束」をご覧ください。
大地を守る会 あんしんの約束
NEWS 大地を守る2013年7月号 GLOBAL REPORTS
収穫間近のミニトマト。北京の消費者の方を招いて試食したところ、スーパーのものより甘いと好評でした。
大地を守る会の農産担当・長谷川満取締役の指導にも熱が入ります。
キュウリ、ズッキーニ、トマト、絹さや、レタス、ホウレン草などが入った野菜セット。
週1回、北京市内にお届けしています。
大地を守る会が全面協力している中国での宅配事業がプレスタートしました。
宅配の概要と現地の様子をお伝えします。(広報国際課 高橋哲)
5月7日、北京市内で試験配送開始
北京富平(フーピン)学校はマイクロクレジット(少額融資)や家政婦養成学校などを通じて、中国の農村貧困問題
に取り組んでいるNGOです。富平学校と当社が出資する合弁会社・富平創源が立ち上がって早や半年。ようやく
天津市郊外にある自社農場で野菜の収穫が始まり、5月7日より北京市内で試験的に配送をスタートしました。
野菜は、大地を守る会の生産基準を参考に、中国の有機・減農薬基準がクリアできるように、できるだけ農薬を
使わずに栽培(大地を守る会と同様、原則的に葉物類は農薬不使用)。4kg相当の野菜セットを毎週火、木、
土曜日のいずれか1回、ご家庭までお届けします。
正式スタートまで最後の詰め
7月の正式スタートに向けて、大地を守る会の社員も現地に入り、中国人スタッフと現在最後の詰めをすすめてい
ます。畑の状態、野菜の品質、物流のインフラなど大地を守る会と比べるとまだまだ改善の余地が多くあります
が、作る人、食べる人が信頼で結ばれるよう、安全でおいしい野菜を育てお客さまにお届けする第一歩を今まさに
踏み出そうとしています。