<08>安心な食べもの: 2012年9月アーカイブ
2012年9月24日
GMOフリーゾーン欧州会議報告会(2012年9月20日)
「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」ではこれまで、遺伝子組み換え作物のない地域、
GMOフリーゾーン、というアイデアを日本に紹介し、生産者(農家)、販売店、消費者の人々に
宣言してもらうという活動を展開してきました。その結果、日本でも多くの地域がGMOフリーゾーン
となってきました。遺伝子組み換え作物は、現在、日本では商業栽培はされていませんが、いつ
なんどき、商業栽培をする農家が出るやもしれません。今のクリーンな状態を守るためにも、日本中
を巻き込んで、GMOフリーゾーン運動を展開していかなければいけません。
当日のプログラム
アメリカ(モンサント社)の隙を突いたとんでもない戦略~ラムサール条約会議において
当日(9月20日)は、GMOフリーゾーン欧州会議報告の前に、国際的に重要な事件についての
レポートがありました。それは、今年の7月6-13日にブカレスト(ルーマニア)で開催された、
ラムサール条約締結国会議でのできごとです。ラムサール条約についてはリンクの「ウィキ」を参照
していただきたいのですが、世界に残された貴重な湿地の保全に関する国際条約です。その会議に
アメリカ(その背後にはモンサントなどの種子多国籍企業があります)が、「水田(これも一つの湿地)
の農薬を減らすために、遺伝子組み換え稲の導入を許可する」案を、提出したきたのです。ラムサール
条約に参加する各国の代表者は、環境系の人の中でも、どちらかといえば遺伝子組み換え技術に
ついては不案内の人が多いのです。なので、反対の論陣なども張りにくいということが想定され、
そこの隙をつく作戦をアメリカはとってきたと思われます。 しかし、そこは遺伝子組み換えに否定的な
EU各国の代表団や、日本から事前にこの情報をキャッチして反対の論陣をはった、日本消費者連盟
国際部から派遣されたマーティン・フリッドさんらの努力によって、なんとか今回の提案は阻止され
ました。しかしながら小さな隙も見逃さない遺伝子組み換え推進派の動きには驚かされます。
この経緯については、消費者レポート1518号(9月21日発行)に詳しく掲載されています。
日本消費者連盟までお問い合わせください。
ラムサール条約の会議で活躍された、日本消費者連盟のマーティン・フリッドさん
世界に拡散する遺伝子組み換え作物
まずはとても残念な状況から。2011年現在、遺伝子組み換え作物は、17ヶ国以上で、160万km2
で栽培されています。世界の耕地面積のほぼ 10% が遺伝子組み換え作物で覆われてしまって
いるのです。2000年のときで約 40万km2 であったので、急速に拡大しているのが実情なのです。
一方で、GMOフリーゾーン運動も世界で拡大している
市民側も嘆いているばかりではありません。1999年、スローフード運動で有名なイタリアで生まれた
GMOフリーゾーン運動。生産者(農家)、流通、消費者が以下のことを宣言していく運動です。
・
遺伝子組み換え作物を作らない(生産者)
・ 遺伝子組み換え食品を買わない、売らない(流通)
・ 遺伝子組み換え食品を買わない、食べない(消費者)
2005年にドイツで第1回GMOフリーゾーン会議が今年で7回目。9月4-5日に、ベルギーは
ブリュッセルで開催されました。そこに、遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーンから西分千秋さん
日本消費者連盟から纐纈美千世さんが出席されました。2010年現在、GMOフリーゾーン宣言をした
地域は、169都道府県、123の地域、4,713の市町村、31,357人の個人がいます。
GM大国、アメリカの市民の間でも広がる、表示運動
世界最大のGM作物栽培国、アメリカでは、現状、遺伝子組み換え食品にはまったく表示はありま
せん。1996年の栽培開始依頼、表示を求める小さな市民運動はあったのですが、モンサント社に
よる妨害工作などによって、ことごとく黙殺されてきました。しかし、ついに、市民運動の先進地域で
あるカリフォルニアで、大掛かりな市民運動が展開され、議会にかけられ、住民投票にまだいたって
います。この運動の基本理念は明確で、遺伝子組み換え食品の安全性などではなく、「知る権利」
の要求です。市民には何を買って食べているか、「知る権利」があるだろうということ。運動の標語も
「 Right to Know 」。日本からも大いにエールを送りたいし、日本における表示問題(→過去記事)
も頑張らなければなりません。
「 Right to Know 」運動
EUでの食品表示、遺伝子組み換え食品表示の実態
いま、日本では食品表示一元化問題で法案が作成されつつあります
(→過去記事) 。
食品表示先進国であるEUでは、遺伝子組み換え食品についても先駆的な取り組みをしています。
まず、2点で大きく日本と違っています(→参照記事)。
1. DNA、タンパク質の検出できる残留物がなくても表示 → 日本で対象外の油に表示義務
2. 輸入時の混入について、0.9% まで許容 → 現在の混入が 1% 以上なので、全体が表示義務
この2点のしばりがあるため、EUでは多くの食品に遺伝子組み換え表示があります。
写真はないのですが、例えば日本からEUに輸出している「ミツカン酢」。酢には添加物的に、
トウモロコシ由来の抽出物が入っていて、それにはアメリカ産が使用されています。日本では、
「輸入時の混入について、5% まで許容」のルールによって表示されていませんが、EUでは
「遺伝子組み換え」の表示がされています。
EUでの表示で、とても意味があると思った、「飼料の表示」
いま、日本では食品ではない、家畜の飼料、については、遺伝子組み換えの表示規制はありません。
しかし、EUでは、「家畜の飼料」、が遺伝子組み換えの表示対象となっています。これは、家畜生産者
の意識を高める上で、非常に意味があると感じました。日本に入ってくる、大豆、トウモロコシ、ナタネ
などの家畜飼料は、現在、輸出国(主にアメリカ、カナダ、ブラジルなど)で、IPハンドリング、分別生産
流通管理システムによって、遺伝子組み換えのものと、非遺伝子組み換えのものが分けられて
います。しかし、これら輸出国の輸出港などは広大で、分別していても、「意図せざる混入」があります。
また、現実は不明なのですが、すでに畑の段階で、交雑していることも考えられます。結果として、
非遺伝子組み換えのものにも、数%、遺伝子組み換えが混ざってしまっているのが現状です。
そのことを、飼料の袋に、「非遺伝子組み換え(混入有)」、「不分別(ほぼ遺伝子組み換え)」、の
ように表示すれば、使用する生産者も、それを意識すると思います。反対運動は、まずは意識する
ことからがスタートだと思います。その点、EUの制度は大いに参考になります。
2012年9月 3日
NEWS 大地を守る2012年9月号 放射能に克つ!
東京電力福島第一原発の事故から1年半が経ちましたが、生産者と消費者の方々の不安はまだまだ続いています。食品の安全性と持続的な農業を実現していくために、放射能汚染をどう乗り越えていけばよいのか......。
まさにこれからが正念場だと大地を守る会は考えています。
(NEWS大地を守る編集部)
流通レベルの検出は低減
今後のカギは産地での対策
大地を守る会は昨年の原発事故後、食品中の放射性物質に対する自社測定を強化してきました。測定している検体数は業界トップクラス。外部機関にもサンプリング測定を依頼して、検査の客観性が保てるように努めています。
その結果は、どうだったのでしょうか? 昨年はまだ放射能が微量ながら検出される食品もありましたが、今年に入ってからは、ほとんどの食品において不検出という結果が続いています。
流通段階での放射能汚染を別の角度から確かめるため、大地を守る会は、「放射能測定おうちごはん」の取り組みも始めました(コラム参照)。
「消費者の間では放射能に対する不安がまだ根強いので、入荷した食材を測定して『ご安心ください』というだけでは不十分だと考えました。高精度の測定機器を消費者のためにもっと活用しようと始めたのが『放射能測定おうちごはん』です」(大地を守る会放射能対策特命担当・戎谷徹也)
7月21日段階で21家庭のサンプルを測定しましたが、こちらの調査でも、いずれのご家庭のサンプルにおいてもすべて不検出という結果が出ています。
ただ、流通している食品の測定結果がほとんど不検出だからといって、それだけで安心できるわけではありません。水産物や果樹をはじめ、放射性セシウムがどのように移行していくのか、今後も注視しなければいけないからです。
「これからは流通レベルだけではなく、その上流に当たる生産地の対策をさらに強化していきます。そのために測定機器を生かしていくことも重要だと考えています」(戎谷)
流通レベルにとどまらず、生産地での根本的な対策も拡充すること。それが、安全な食品と持続可能な農業への大きなカギとなります。
2~3ページでは、消費者とともに放射能について学ぶ「放射能連続講座」、農家と協力して進める産地での活動など、大地を守る会の取り組みについてさらにご紹介します。
株式会社 大地を守る会
放射能対策特命担当
戎谷徹也
1日分の食事を丸ごと検査
放射能測定おうちごはん
実際に口にする食事にはどの程度の放射性物質が含まれているのか? それを確かめるための取り組みが「放射能測定おうちごはん」です。※現在は受付していません(8月24日現在)。
インターネットでモニターを募集。ある日の3 食分のサンプルを送っていただき、それを丸ごとミキサーにかけて測定する「陰膳方式」で測定しています。モニターの方々の食事の中には、大地を守る会以外の食材も含まれています。測定機器はゲルマニウム半導体検出器。検出限界値はセシウム134などの核種ごとにキロ当たり約1 ベクレルと、高い精度で測定しています。7月21日段階で21 家庭のサンプルを測定しましたが、調査結果はいずれも不検出でした。
モニター会員の感想
実際に食卓に並んだ
食材を少しずつ取り
分けてもらったものを
サンプルとして測定。
農業の未来と食の安全を守るために
大地を守る会では、高精度の測定機器の導入や放射性物質の独自基準の設定など、
さまざまな対策をとってきました。しかし、測定や基準値だけで
消費者や生産者の皆さんが納得する安全対策がとれるわけではありません。
放射能への理解をともに深め、生産者と一体になった取り組みを通して対策を進めていきます。
さまざまな専門家を招いて理解を深める試み
放射能の不安と向き合うために必要なことは何なのでしょうか。消費者にとっては、より広く、より正確に放射能の知識を深めることが役に立つはずです。そこで大地を守る会は、6月から、専門家を講師に招いた「放射能連続講座」を開催しています。
第1回では、NPO 法人市民科学研究室代表の上田昌文さんをお招きし、放射能汚染の状況と今後の影響について、データをもとにお話をしていただきました。また、第2回では、元放射線医学総合研究所内部被ばく評価室長の白石久二雄さんをお招きし、内部被ばくを防ぐための食事のあり方についてお話しいただくなど、放射能問題について、各分野の専門家と直接交流できる連続講座となっています。
この連続講座では、放射能問題の根深さを思い知らされる場面もありました。第1回目の講座の冒頭と最後に、会場に向けて次のような質問をしたときのことです。
「検査して、ND(検出限界値以下)が確かめられたものであれば、福島県産の野菜を購入しますか?」
冒頭での回答は、イエスとノーがほぼ半分ずつ。そして、講演の最後での回答もイエスがほんのわずかに増えるにとどまりました。
インターネット中継で参加した視聴者からは、ツイッターで「購入できないという消費者を敵視しないでください」という意見も寄せられました。
「消費者と生産者のつながりを取り戻したいと考えていますが、その壁は思ったよりも高いなと感じました」(戎谷)
連続講座の企画者にとっては重い課題が残りましたが、率直な意見交換のなかから、より深い理解が生まれることが期待されています。
子どもたちの世代まで有機農業を引き継ぎたい
大地を守る会は、苦労の多い有機農業に取り組んできた貴重な生産者を、放射能汚染を理由に切り捨ててはならないと考えています。環境や食の安全をきちんと考えて取り組む農家を、将来の子どもたちの世代まで残していくことも大切だからです。
「この先、放射能に限らず、どんな化学物質によるリスクが発生するかもわかりません。ですから、将来の世代のためにも、農地を守ってくれる農家を育てていくことは、とても大事なことだと思うのです」(戎谷)
地球規模でみると食料・水不足が進んでいます。食料安全保障を考えたとき、生産技術のレベルの高い日本の有機農家を支えていくことは、重要になってくるのではないでしょうか。
連続講座のなかでは、「放射能で汚染された地域の農家は、生産するより国や東京電力に補償を求めるべきではないか」という意見もありました。
たしかに補償金をもらえれば、農家も一時的にしのげるかもしれません。しかし、たとえ1~2年でも農地を放っておけば、農地は一気に荒れてしまいます。
いったん荒れた農地を元に戻すのはとても難しくなってしまうのです。
「日本はいま、耕作放棄地が広がって、食料自給率を高めるのにも苦しんでいます。そうしたことを考えると、補償金で済ませるのではなく、大切な農地や生産者を将来に引き継いでいくことが大切ではないかと思うのです」(戎谷)
一部の流通業者のなかには、放射能が検出された農作物があった場合、その地域全体の取引をやめると発表しているところもあります。
しかし、大地を守る会では、これまでつながりを深めてきた農家たちを、そんな形で切り捨てることは考えていません。
それよりも、放射能が検出されないよう、また、検出値が1ベクレルでも低くなるよう、産地において対策を進めることこそ大切だからです。
そのために進めてきたのが、生産地への測定器の貸し出しです。例えば、福島県須賀川市・ジェイラップでは稲田稲作研究会生産者のすべての田んぼの土壌を測り、玄米への移行を調べ、今年は反転耕を実施するなど、継続的な対策に活かしています。
また岩手県釜石市・NPO法人東北復興支援機構では、釜石市のバックアップも受けながら三陸の水産物の測定を継続的に行っています。漁業の再興が放射能によって妨げられないためには、生産基地でしっかりとチェック体制を築くことが必要です。
こういった応援ができるのも大地を守る会ならでは、だと思っています。
生協など4団体と協力して社会的モデルをめざす
大地を守る会では、国の新基準値に先立って、独自の流通基準値を2月20日から運用開始しました。国の基準値に比べて、乳幼児食品は8分の1、米は10 分の1など大幅に低い値を設定しています。また、基準値や分類は、継続して見直す方針です。
「この基準値は農家にとって、放射能と闘うための出発点であり、闘うための励みとなるものにしたいと思っています。その基準値をクリアしていくためには、やはり当事者である農家を支援していく必要があります」(戎谷)
大地を守る会は、同じく独自基準を設定して内部被ばくを抑える取り組みをしている4団体とともに、昨年9月、「食品と放射能問題検討共同テーブル」を発足させました。これまで「共同テーブル」は、厚生労働省に対して、よりきめ細かい基準値の検討や検査体制の拡充を要望するなどの活動をしてきました。今後は、各団体の放射能の測定結果を共有して、対策に生かすことができるよう協議していく方針です。
「それぞれの測定結果を共有すれば、全体の傾向もより正確につかめます。私たちのネットワークの信頼性を高めて、社会的なモデルになれるようにしたいと考えています」(戎谷)
日本の食の安全を守っていくためには、消費者と生産者、そして流通業者が一体となって、失われかけたつながりを取り戻すことが不可欠です。大地を守る会は、これからも生産者と消費者とを直接つなぐ場をつくりながら、この放射能の問題に正面から向き合っていきます。
10月6日(土)は連続講座第6回「低線量内部被ばくを考える」を実施します。また冬頃に連続講座の第2クールの開催も検討しています。興味のある方はぜひご参加ください。
放射性物質に対する大地を守る会の主な取り組み
自社測定
ゲルマニウム半導体検出器、NaIガンマ線スペクトロメータ(昨年6 月購入)など高精度機器を導入して、業界トップクラスの検体数の自社測定を行っています。
食品と放射能問題検討
共同テーブル株式会社カタログハウス、パルシステム生活協同組合連合会、生活クラブ事業連合生活協同組合連合会、グリーンコープ連合とともに、昨年9月に設立。
放射能測定おうちごはん
モニターの1日分の食事を全部ミキサーにかけて測定する「陰膳方式」で調査し、その結果を、大地を守る会のホームページで公表しています。
産地への測定機器の貸与
2台のNaIガンマ線スペクトロメータを、ジェイラップ(福島県須賀川市)とNPO法人東北復興支援機構(岩手県釜石市)に貸し出しています。
自主基準の設定
2 月20日から運用開始。国の新基準値に比べて、牛乳は1/5、乳幼児食品は1/8、米は1/10と大幅に低い値を設定。
基準値や分類は、これからも継続して見直す方針です。
放射能連続講座
放射能汚染の実態を見すえ、どう立ち向かっていくかを考えるため開催。インターネットのユーストリームでも中継を見ることができます。
放射能連続講座をインターネット動画で見ることができます
これまで開催してきた放射能連続講座の様子を大地を守る会のホームページ上で動画公開しています。専門家のわかりやすい説明や、ワークショップを通じた消費者同士の交流など、講演の具体的な内容や会場の雰囲気をご覧いただくことができます。
詳細はこちら
/cp/renzokukouza/