<10>農業のこと: 2013年10月アーカイブ

2013年10月 7日

NEWS 大地を守る2013年10月号 「有機米を作る」ということ。

日本全国、さまざまな産地から、個性あるお米が届く。

大地を守る会のお米は、上に挙げた12銘柄のほか延べ40品種、80近い生産団体・生産者から届けられます。コシヒカリやササニシキなど日本を代表する銘柄、ななつぼし、つや姫、ひとめぼれなど近年人気の銘柄はもちろん、登場間もない森のくまさん、さがびよりなど、多岐にわたります。銘柄が非常に多彩なのは、産地もさまざまであることを意味しています。
 お米の品種・年産・産地は、国が定めた「農産物検査法」に則って表示されます。たとえば「つや姫」を作ることはできても、山形県など栽培を認められた4県以外で
作られたものは、銘柄としての「つや姫」とは名乗れず、無銘柄米として非常に安価になってしまいます。必然的に地方ごとの銘柄で稲作することになり、各地でよりおいしく、特徴ある銘柄を作ることにつながっているのです。

国産の1%に満たない有機の米づくり。

日本の米生産量のうち、有機JAS認証を受けたお米は、わずか0・12%ですが、大地を守る会では約4割を占めています。野菜で0・34%、農作物全体で0・24%に比べても、有機栽培のお米が非常に希少なものであることがわかります。
その理由は、雑草対策などの大変さに加え、単純に「売れないから」です。有機栽培のお米は、手間や収量の点から高価になり、ものによっては一般栽培の倍の値段にならざるを得ません。
 それでも、大地を守る会が有機米をおすすめするのは、その価値を認めてくれる消費者がいるからこそ、です。
 5月の小雨、夏の猛暑に悩まされましたが、これまでに長年蓄積してきた経験をいかし、生産者それぞれに工夫をこらしています。今年も日本各地で、生産者が丹精込めたお米をお届けします。

食べものとしてのお米、そして稲作、田んぼ。

生産者の経験と知恵が「有機のお米」を作る。

 大地を守る会には「有機めずらし御馳走米」という、有機JAS認証のお米を週替わりでお届けする商品があります。亀の尾、さがびより、朝日、夏の笑みなど、あまりなじみのない銘柄ばかり。さまざまな生産者が作る、多種多様な新鋭の品種を、少量ずつお届けすることでおいしく食べていただきたい、という企画です。白米と玄米があり、他商品に比べて玄米の人気が高め。玄米にはぬか部分が残るので、農薬や化学肥料の影響を考えて、有機のお米がより求められる
ようです。
 ひと言で「有機の米づくり」と言っても、生産者それぞれに経験と知恵があり、栽培の工夫もさまざま。雑草対策で言えば、合鴨を利用した「合鴨農法」、資材を用いる「紙マルチ」、チェーンを取り付けた除草機で頻繁に除草を繰り返す「チェーン除草」などがあります。除草剤を使わないための手間は、一般栽培の10倍ともいわれます。
 ただ、せっかくの努力も目には見えず、伝わりにくいため、これを証明するために「有機JAS認証」を取得しています。3年間以上、無農薬・無化学肥料で作られていることを証明するもの(2年は転換期間中有機)です。自信を持って「有機のお米です」とお届けするため、大地を守る会では、生産者に「有機JAS認証」を取得するように推奨しています。


米食の減少に反比例して急増した生活習慣病。

 日本人の主食でありながら、米の消費量は年々低下し、平成24年度の一人当たりの消費量は56.3㎏(農林水産省「食料需給表」より)。最大値である昭和35年の118.3㎏に比べ、約半分になってしまっています。意外にも、パンや麺類の消費は微増しつつも飛躍的に伸びているわけではなく、単に「主食」が減っている状況です。
 戦後の貧しさから高度成長を経て、金銭的に豊かになった日本の食は、動物性たんぱく質や脂質の摂取量が増え、それに伴って生活習慣病も急増しました。1977年に米国で発表された食のバランスに関する研究「マクガバンレポート」で、最も理想的とされていたのが、昭和35年頃の日本の食生活。奇しくも、最もお米が消費された時期に重なります。お米をしっかりと食べ、野菜中心の副菜、動物性たんぱく質を控えめに摂るという食生活は、日本人になじみ、そして健康のためにも望ましいのです。


日本の田園風景を守る「一杯のごはん」。

 もしもTPPが強行され、海外のお米が自由に入ってくることになったら......日本のお米の生産コストが1俵(60㎏)あたり1万4000円ほどかかるのに対し、アメリカ産のお米の輸入価格は1俵3000円ほどと予測されています。この差は、耕作面積の圧倒的な違いによるもの。広大な土地にセスナ機を飛ばしてモミを撒く、農薬や肥料を散布する、という規模の農業は、日本では不可能です。稲作農家や農業団体などの努力で縮められる差ではありません。
 その安さにひかれて、日本の主食たるお米を輸入に頼るようになれば、当然、お米の生産者の暮らしは成り立たず、水田の面積も激減していきます。
 洪水を防ぐ機能、地下水の涵養(雨水などを地下にゆっくり染みこませること)、生物多様性の維持や、日本人の信仰、農村コミュニティーの要として......なによりも、春には田を耕して苗を植え、夏には稲の緑が萌え、秋には黄金色の穂が実り、冬には白い渡り鳥が舞い降りる......そんな、四季折々に美しい「日本の田園風景」を失うことになりかねません。「お米は輸入できても、田んぼは輸入できないのです」(大地を守る会 農産担当・海老原)。
 食べ物としてのお米、そしてその向こうにある稲作、田んぼ――綿々と受け継いできた宝を未来へとつなぐのは、「茶碗一杯のごはん」にほかならないのです。



紙マルチ
畑作で行われてきた、土の表面に「マルチングシート」と呼ばれる紙や布など(通称「マルチ」)を張り、日光を遮ることで雑草の発生を抑える農法を応用したものです。稲作では、田植えの際に田んぼの表面にぴったり
とマルチを張りながら同時に苗を植えていきますが、近年では専用の田植え機も開発されています。段ボールなどの再生紙から作られる資材が主流で、2カ月弱で自然に分解されますが、そのころには稲が生長して雑草に負けなくなっています。



棚 田
山あいの急傾斜に作られた、階段状の田んぼ。狭い土地を有効に、また、灌技術が低かった古来には水利に高低差を利用するために作られてきました。山間部に作られるため、良質な水を豊富に利用できること、標高が高く昼夜の温度差があることなど、おいしい米ができる条件が揃っています。農業機械の導入が難しく農業大型化には不適なため、現代では減少する一方ですが、美しい稲作の原風景として受け継がれることが望まれています。



ふゆみずたんぼ
冬から春にかけて田んぼに水を張っておくと、イトミミズや菌類が大量に発生し、それを餌にする虫や水鳥など、たくさんの生き物がやってきます。
その種類は5,668種にも及び、まさに「生物多様性」を実現する農法です。水鳥のフンなどが天然の堆肥になるほか、イトミミズのフンが1 年で厚さ10cmほども積もって雑草の種を閉じこめる、カエルやクモが繁殖して害虫を食べるなど、自然の力を利用して米づくりを行います。



合鴨農法
田植えから1 ~ 2週間して苗の根が定着した田んぼに、合鴨(マガモとアヒルの交配種)のヒナを放します。雑食性の合鴨は、田んぼの雑草を食べ、またウンカなど小さな虫も食べるため、除草や害虫防除ができます。また、合鴨のフンが肥料になったり、合鴨が泳いで水かきで田んぼをかき回すことで、土に酸素が供給される、稲の根がしっかり張るなど「中耕」の効果も。稲穂が付き始めると合鴨の役割は終わり、成長した合鴨は食肉として利用されます。



お米への質問で困るのは「どれがおすすめなの?」(プロ野球でどのチームがおすすめなの?に近い)。どの生産者も自信と誇りを持って安全でおいしいお米を作ってくれています。私も毎日会社で試食してそれを感じ、産地に行くといつも感動を覚えます。
もし、大地を守る会のお米をまだ食べたことがないという方がいらっしゃいましたら、ビビッときたものを、1回でも食べてみていただけるとうれしいです。そして、生産者や産地に行ってみたい、話を聞いてみたい......と興味が広がればなによりです。連絡便やメールでお米に関する問い合わせも歓迎です。

株式会社大地を守る会
農産担当  海老原 康弘




大地を守る会の震災復興支援

生産者に会いに行こう 商品を知ろう! 料理を楽しもう! 知って学ぼう! みんなで話そう!

海外とつながろう! 安心な食べもの 食べて守る生物多様性! 農業のこと 環境のこと 大地を守る会のこと 「NEWS大地を守る」PDF版 大地を守るメディア取材 大地を守る Deli