特別対談:フローレンス・駒崎弘樹さん×大地を守る会・藤田和芳 |
2013年10月1日 |
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大地を守る会は、病児保育に取り組む認定NPO法人フローレンスと提携し、8月よりお互いの会員に対して、相互のサービスを提供することで合意しました。この提携は、ソーシャルビジネス同士のコラボレーションともいえます。提携を機に両者の代表が行った対談の様子をご紹介します。
認定NPO法人フローレンス 代表理事
駒崎弘樹さん
大地を守る会 代表取締役社長
藤田和芳
分野の異なるソーシャルビジネスのコラボ
駒崎
フローレンスの病児保育は、発熱や風邪で困っているお子さんをお預かりするサービスです。子どもが熱を出したとき、自分だけでなんとかしようと仕事との両立に悩む親御さんが多いのですが、気を病まずに、フローレンスの病児保育をはじめとする社会の力を利用してほしいと思います。
健康には平時からの備えが大切で、食事は欠かせない備えの一つであり生活の基本です。日ごろの食生活がしっかりしていれば、たとえ病気になったとしても早めに治ることがあるかと思います。今回の提携の根底には、「フローレンスの会員の皆さんに、安全でおいしい食べ物を楽しく食する文化のなかにあってほしい」という願いがあります。また、ソーシャルビジネスのフロントランナーである大地を守る会とタッグを組めることに誇りと喜びを感じています。
藤田
フローレンスも大地を守る会も、ソーシャルビジネスとして社会的課題に立ち向かっています。社会には効率や競争が馴染まない分野があり、農業もその一つだと思います。行政がそれらをくまなくフォローするには限界があり、その実情は、ソーシャルビジネスが生まれてきた背景でもあります。
私はこれまでの経験から、ソーシャルビジネスが自分たちの同心円状だけで成長するには限界があると感じています。同じ志を持ちながら分野の異なる人たちとつながることでより大きな力を行使できるのではないでしょうか。また、大地を守る会とフローレンスは、ともに女性を主な対象としている点は共通していて、提携による相乗効果が期待できると考えています。女性の自立や社会進出は、行政や国家の支援が立ち後れている分野です。だからこそ、ソーシャルビジネスの出番でもあります。
日本の子育て環境のインフラを整える
藤田
これまで駒崎さんは、政策調査員として内閣府の非常勤国家公務員に任命されたり、空き住戸を活用した「おうち保育園」が政府の待機児童対策政策に採用されたりと、さまざまな活躍をされていますね。
駒崎
社会の制度を改善しようとすると、「○○法に抵触するから変えられない」といった現状があります。高度に制度化されたシステムだからこそスピーディな変化が難しいのです。とはいえ、「政治家や官僚がなんとかしろ」と待っているだけでは何も変わりません。「おうち保育園」のときもそうでしたが、概念ではなく、具体的な代替え案を持って動かなければ社会的課題を解決することはできません。ソーシャルビジネスには、具体案を実践するための「現場」を持っていることが強みです。本当の戦いは局地戦にかかっています。
藤田
社会の制度を急に変えられないのは、ある側面で社会の安定につながっているわけですが、現代は、具体的な代替え案をもって現場で成功事例を重ねながらも、社会全体のグランドデザインについても考える必要があります。たとえば、原発の問題にしても再稼働するか否かだけでなく、将来へ向けてどのようなエネルギー政策をもつのか、国としてどういう社会をつくりたいかを、みんなで議論していく必要があります。
駒崎
同感です。病児保育のサービスを始める前、海外の保育の仕組みや習慣に何か答えが見つけられるかと調べてみたのですが、日本の制度に見合うものはありませんでした。社会の課題を解決するには日本に合うグランドデザインが必要ですし、自分たちで仕組みをつくっていかなければと思っています。
藤田
大地を守る会は、1985年に日本で初めて有機農産物の宅配システムを始め、日本の食を支えてきました。創業から35年以上が経ちますが、これまでさまざまな批判を受けることもありました。フローレンスの病児保育も、その分野でやってきた人たちから、批判を受けることがあるのではないですか。
駒崎
行政の人は、子どもの世話は親が見るのが当たり前、子どもが熱を出したら親が会社を休んで看病するのが当たり前という感覚です。でも、決してそれは、当たり前なことではありません。日本は、もともと地域社会で子どもを育てていました。誤解されている人が多いのですが、親だけで子育てしていたのは、戦後の数十年間だけのことです。現代では、一人親家庭もめずらしくありませんし、手助けを必要としている人が確実にいます。そのような世論を冷静にジャッジして病児保育の必要性を伝えていき、制度疲労を起こしている日本の子育て環境のインフラを整えていきたいと思います。
藤田
もっとたくさんの方に、フローレンスの活動を知っていただきたいですね。
認定NPO法人フローレンスとは
子どもが急に発熱!保育園ではあずかってもらえない。でも今日は外せない仕事が・・・こうした悩みを抱える働く親御さんの割合は、実に86%。子育てと仕事の両立の大きな壁となっている病児保育問題を解決するため、NPO法人フローレンスは2005年から全国に先駆けて、日本初の「訪問型」「共済型」病児保育事業を展開しています。
受賞歴
●日本経済新聞「にっけい子育て支援大賞」・サービス産業生産性協議会「ハイ・サービス300選」(2008年)
●経済産業省「ソーシャルビジネス55選」(2009年) ●Newsweek日本版「日本を救う中小企業100」に選出(2011年)
■フローレンスとの提携割引の詳細は、以下のページをご覧ください。
/info/news/2013/0801_4382.html
駒崎弘樹さんプロフィール
在学中に学生ITベンチャー経営者として、さまざまな技術を事業化。卒業後、フローレンスをスタートさせ、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスとして展開。厚生労働省「イクメンプロジェクト」座長など数々の要職を歴任。ブログ:http://www.komazaki.net/
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