国の放射能新基準より厳しい自主基準設定。基準値は国と比較して、牛乳1/5、乳幼児用1/8、米1/10。2月20日より運用開始。 |
2012年2月20日 |
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要 旨
有機食材宅配のパイオニア・大地を守る会は、食品中の放射性物質に対する「自主基準」を2月20日に設定します。基準値は、飲料水や乳幼児食品などは1kgあたり6ベクレル、米や飲料は10ベクレル、野菜や肉は20ベクレルとしました。4月からの政府の新基準値と比較すると、乳幼児食品は1/5、米は1/10と大幅に低い値に設定しています。これは消費者の不安を払拭するためと、長期的な低線量内部被ばくの影響が未解明な段階では、食品による内部被ばくはできるだけ低く抑える必要があると考えたためです。
この基準値は、大地を守る会が福島第一原発事故以降に実施してきた4300を超える放射能測定のデータと、産地と共同で行う除染対策による成果を踏まえて、生産者とともに達成できる指標として設定しています。食の安全を可能な限り向上させる努力をするのが生産者ならびに流通者の使命と考え、これからも継続的に基準の見直しを行い、安心な食べものを届けるための取り組みを続けます。
食品中の放射性物質に対する「自主基準」概要
- ■基準適用開始:
- 2012年2月20日
- ■目的:
- 子どもの健康や未来を守るために、食品による内部被ばくはできるだけ低く抑え、生産者とともに食の安全性を可能な限り向上させる。日本人の食文化に合わせた細かい分類とそれぞれの規制値を常に検証し、「基準値」未満の達成をめざすことで、生産と消費の信頼関係をより強く、確かなものにすることをめざす。
- ■流通基準値:
※乾燥食品については、原材料の状態及び水戻しを行った状態の両方に基準値を適用する。
※1 飲用に供する茶については、原材料の茶葉から浸出した状態に基準値を適用する。
■食品中の放射性物質に対する「自主基準」設定にあたっての基本姿勢
①「内部被ばくはできるだけ低く」の考え方に立ちます
- 長期的な低線量内部被ばくの影響がまだ未解明な段階では、予防原則の視点と、「しきい値なし直線説」※を採用し、「食品による内部被ばくはできるだけ低く抑える」考えに立つべきと考えます。
- ※放射線の被ばく線量と影響の間には、「ここまでは安全」という値(しきい値)がなく直線的な関係が成り立つという考え方
②その上で、生産者とともに達成できる指標として、「基準値」を位置づけます
- この「基準値」は、上記①を基本姿勢としつつ、一年間の測定体制の進化、測定データの蓄積、産地での対策の成果などを踏まえ、現時点での目標として、かつ達成可能な水準として設定したものです。
「食の安全」を可能な限り向上させる努力をするのが生産者ならびに流通者の使命と考えます。あらゆる食品において指標としての「基準値」未満の達成をめざすことで、生産と消費の信頼関係をより強く、確かなものにしていきたいと考えます。
③基準値や分類は継続して見直してゆきます
- 「基準」とは常に見直していくべきものだと考えます。新しい知見やデータを集めながら、見直し・検討を重ねていきます。また食品には日常的に多く摂取する物とそうでない物があります。摂取量の多い食品には厳しい基準値を設定すべきだと考えます。日本人の食文化に合わせた細かい分類とそれぞれの基準値を常に検証しながら、内部被ばくを少しでも減らす研究と努力を、生産者とともに進めます。
④測定体制の強化と「情報公開」を継続して進めます
- 「基準」を設定するということは、「基準」に則ってただしく流通されていることを担保するための測定体制と情報公開が前提となります。引き続き測定体制を継続・強化するとともに、情報公開の原則を厳守します。
■「基準超過」した場合の対応について
- 仮に基準を超えてしまった生産物が発生した場合においても、けっして生産地を切り捨てることなく、可能な限り支援策を講じ、生産基盤を維持します。基準値を超えてしまった契約生産物については買い取りを基本姿勢とします。また「測定結果の公表」と「消費者の選択権の保証」を前提として、お知らせした上で取り扱う場合もあります。
<各基準値の補足説明>
- ・基準値「6」:
- ゲルマニウム半導体検出器における検出限界値(概ね3ベクレル)のセシウム2核種合算値相当。飲料水は、すべての生命の健全な生存のための基盤となるもので、検出されるレベルであってはならないと考える。乳幼児食品も同レベルが指標。卵は現状においても達成できていると判断でき、それを後退させてはならないと考えた。
- ・基準値「10」:
- 米およびパン・牛乳については、摂取量の多い基礎食品として、できるだけ低減させることが望ま しいと考える。ただし生産地が広範囲に及ぶことと汚染にばらつきがあること、牛乳については放牧による餌の影響に不安定さが残っていることに鑑み、引き続きモニタリングを進めながら、すべての産地において安定的に基準値「6」水準を達成すべく、生産者とともに対策を継続する。
- ・基準値「20」:
- NaI(Tl) ガンマ線スペクトロメータにおける検出限界値(概ね10ベクレル)の放射性セシウム2核種合算値相当として、設定した。
- ・基準値「50」 :
- 水産物は汚染動向や影響が不明な点が多く、また汚染に対する対策も困難な面があるため、推移を見守りつつも、「魚中心の食生活」を営む消費者への配慮をもって設定した。
- ・基準値「100」:
- 現状においては、政府の新基準値案(食品合計で年間1mSv未満と前提とした配分)をもって判断することはやむを得ないと考える。
大地を守る会の放射能対策
大地を守る会では、放射能の影響を懸念する消費者の要望にこたえるために、放射能検査機器をそろえて自主測定体制を整え、さらに放射能特命担当を社内に設置するなど、徹底した放射能対策を実施しています。消費者に対しては放射能不検出商品の販売やホームページやチラシでの測定結果の報告で積極的に情報提供を行い、生産者に対しては放射能測定機器の貸し出しや、共同実施の除染プロジェクト等を行っています。また大地を守る会やカタログハウスなど4団体で食品の放射能基準について検討する「食品と放射能問題検討共同テーブル」を開始し、国に対して食の安全を守るための提言を行うなど、多方面での放射能対策を実施しています。
■大地を守る会の放射能測定体制
- その1 :
- 簡易測定器「NaI(Tl)シンチレーションサーベイメータ」で毎日、青果物全品目検査
- その2 :
- 高精度検査機器「NaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」で牛肉、豚肉、野菜、加工品等を検査(検出限界値:核種ごと概ね10ベクレル/㎏)
- その3 :
- 超高精度検査機器「ゲルマニウム半導体検出器」で子どもが食べる頻度が高いと想定される商品の重点検査を実施(検出限界値:核種ごと概ね3ベクレル/kg)
- その4 :
- 外部機関でサンプリング測定を実施
■これまでの放射能測定合計数:4,303検体
そのうち放射能不検出は約96%。ただし12月以降は5検体(7~27ベクレル/kg)のみが検出で、検出検体は減少している。※2011年3月8日~2012年2月8日の実績。スペクトロメータ、ゲルマニウム半導体検出器による自社と外部機関による測定。
ゲルマニウム半導体検出器で玄米の放射能測定をしている様子。
■これまでの放射能対策の経緯:
- 2011年5月
- 簡易測定器による青果物全品目の放射線量検査を開始。
- 2011年7月
- 牛肉、豚肉を自社の「NaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」にて放射能測定を開始。
放射能不検出を確認済の西の産地の野菜を集めた「子どもたちへの安心野菜セット」販売開始。
福島県の米生産団体「ジェイラップ」にNaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」を貸し出し、産地と共同の除染プロジェクト開始。 - 2011年9月
- 大地を守る会やカタログハウスなど4団体で食品の放射能基準について検討する「食品と放射能問題検討共同テーブル」を開始。
「ゲルマニウム半導体検出器」の運用開始。 - 2011年10月
- 社内に放射能対策特命担当を設置。
- 2011年11月
- 三陸の水産業復興のため、岩手県釜石市のNPOにNaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」を貸出。
- 2012年2月
- 「共同テーブル」として、政府にさらに低い放射能基準値の検討などを提言。
大地を守る会とは
自然環境と調和した、生命を大切にする社会の実現をめざし、1975年に設立のソーシャルビジネス(社会的企業)。安全・安心とおいしさにこだわった農・畜・水産物、加工食品、雑貨等をお届けする宅配サービス他を運営しています。現在、利用者数は約13万6千人、生産者会員は全国に2,500人(2011年12月末現在)。
お問い合わせ(取材ご希望の場合は、下記担当までご一報下さい)
広報担当:中川啓、齋藤史恵、宇田川千夏
- 連絡先
- 〒261‐8554 千葉県千葉市美浜区中瀬1-3
幕張テクノガーデンD棟21階 - TEL
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- FAX
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