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奥出雲、円熟する"食"づくり

【NEWS大地を守る8月号】私たち、山育ち

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奥出雲の山で、斜面でも悠々と逞しく歩く牛たちは、どこか凛としています。

島根県奥出雲の山間地。山に暮らし、山に育てられ、〝命のもと〞となる食べものづくりに邁進する、木次乳業を訪ねました。

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自然の息遣いを感じながら

『古事記』や『出雲国風土記』に記された「ヤマタノオロチ」神話の舞台であり、船通(せんつう)山を源流に宍道湖へと注ぐ斐伊(ひい)川(古事記では肥河(ひのかわ))。その支流である久野川ののどかな流れを眺めながら車を走らせ、さらに登っていく山の斜面には牛が佇み、「誰かが来たぞ」とこちらを見つめています。「この日登(ひのぼり)牧場では、山に牛を放牧する『山地酪農』に取り組んでいます。今日は暑いけん、牛がだれんも木陰に入っちょうわ」。出迎えてくれたのは、パスチャライズ(低温殺菌)牛乳のほか、チーズやヨーグルトなど乳製品でもおなじみの木次(きすき)乳業(島根県雲南市)の代表・佐藤貞之さんです。

山地酪農のため、乳量はホルスタイン種の半分でも、スイスの山岳地帯原産のブラウンスイス種を乳牛として日本で初めて導入。


高度経済成長期から、牛乳は120 〜130℃での超高温殺菌が主流となりました。大量生産・流通のためには長期保存できる方が都合がよいのです。とはいえ超高温であるがゆえに、たんぱく質やカルシウムなど栄養素が変化し、焦げ臭やねばねばとした質感が出てしまい、消化吸収しづらくなるともいわれています。

佐藤さんの父・忠吉さんは、野菜作りはもとよりさまざまなことをこなすと自ら呼ぶ「百姓」で、有機農業を始めた頃、効率化していく牛乳生産に疑問を持ちました。そして、昔から牛乳を飲んできたヨーロッパでは低温殺菌が主流であることに目を向け、試行錯誤を重ねた結果、1978年に日本で初めてパスチャライズ牛乳を流通させることに成功したのです。

「小さい頃から父と一緒に仕事をしていました。1982年には牛乳をコンパクトにした『チーズ』を作り始めました。奥出雲、ひいては日本は山が多い地形だから、それを生かした酪農に取り組もうと、自社の日登牧場では山地酪農も始めました。牛の飼料も、非遺伝子組み換えのものに切り替え、牧草を発酵させたサイレージはできる限り自社で作っています」。佐藤さんの父親ゆずりの百姓精神で、木次乳業は生命力に満ちた大地から生まれたものは身体によいという理念を貫いた、さまざまな取り組みに挑戦し続けています。

耕作放棄地でサイレージを作る、 佐藤貞之さん(右)の友人トリオ。

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山地酪農からチーズ作りまで

「牛と一緒に山を整えてるんです」と話すのは、山地酪農の道40年の成瀬悟さん。親牛と子牛の両方を山に放つことで、牛たちは満遍なく草を食べ、草もバランスよく育つのだとか。また、それぞれの牛には行く場所の傾向があるので、皆が生きられるよう、所々で木を切り水置き場を設置して生活の場を作ります。切った木をその場に置いておけば、土砂崩れ防止にもなり、牛を育てつつ山を整備していると言います。急な傾斜も多いこの山で、悠々と歩き、草を食む牛たちの姿は、逞しさを超えて品位さえも感じられます。午後の搾乳の時間になると、牛舎には牛たちがずらり。「山に迎えに行く時もあるけれど、自分たちで勝手に戻ってくるんです」と成瀬さんは微笑みました。

「牛たちの動きは分かります。いつも一緒だから」と成瀬悟さん。
搾乳時間の午後3時半頃には牛たちが牛舎に戻ってくると聞き、その前に行ってみるとご覧の通り。この日は少し暑かったようです。


搾乳された生乳はすぐにタンクロ ーリーで木次乳業へ。また、別のタンクローリーでホルスタイン種を育てる地元の契約酪農家の生乳を集めて毎日回ります。人にとって有害な菌のみを死滅させる低温殺菌のパスチャライズ牛乳作りは、生乳の中の菌数がもともと低いことが大切です。それは、牛がいかに健康に育ったかに直結し、そして生乳は、生きたものであるがゆえに、まったく同じことはありません。木次乳業では原乳や殺菌後など3回以上、社員が飲んで生乳の質を確認しています。特別にタンクからいただいたパスチャライズ牛乳はさらりとして甘みがあり、まさに生乳の風味が生きた味わいでした。

実は毎日味が微妙に違う生乳。味のバランスに偏りがあると、酪農家に伝えています。
こちらはブラウンスイス種の生乳のみを使用で希少。取り扱いがある時はお見逃しなく。


隣の小さな建物の中では、チーズ作りの真っ最中。生乳にレンネット(酵素)を入れて木のオールでかき混ぜているのは、チーズ担当・川本英二さんです。「水分を抜くためにずっとかき混ぜます。このやわらかい生乳の玉が壊れると風味が失われてしまうので、機械ではなく手作業にしているんです。かき混ぜ方や時間は生乳と相談しながら」。

大手では機械化し、木次乳業でも以前買ってみたもののチーズの味が変わってしまい、「手の方がいい」と感じたことから手作業へ。


この工房ではチーズができあがるまでがすべて手作業。皆が食べやすいものからコンテストで受賞する個性的なチーズ作りまで、基本に忠実に、生乳と会話しつつ静かに行われていました。

温度と圧がかかると固まる性質を持つ生乳の玉をまとめるマッティング。川本英二さん(左)と一緒に行うのは、埼玉県から移住してきた黒川砂代子さん(右)。
微生物に耳を傾けるかのように、静かなチームプレーを見せるチーズチームのメンバー。
最大1年以上かけてとうとう完成。
チーズをピーラーでスライスすると手軽で、自身のご家庭でも人気の川本さんのトマトスープ。トマト大1、水100㎖、コンソメ・塩少々を軽く煮込み、チーズをトッピングすれば できあがりだそう。ぜひお試しを。

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「食べものは命のもと」

「昔は公害があり、今では禁止されている食品添加物が多用された食べものが出回っていて、咳が出たり肌が荒れたりと、もしかするとこれが原因かな?とだいたい予想がついたんです。でも今は、がんや不妊、引きこもり、キレやすいなど、細胞レベルや心の現象まであり、予想もできない怖さがあります。食べものは命のもとです。特に効率ばかりでは、人の体も心も豊かにならんわね」。社員たちで育てたお米や野菜を使ったという社食の列に並びつつ、佐藤さんは言います。

家の台所のような木次乳業の社員食堂「おまかせや」。メニューも家庭的で心が落ち着きます。


「人も牛も、楽をし過ぎず、無理をし過ぎずのバランスが大切だわね」。地元だけでなく、他県からもこの理念に共感した人々が集う木次乳業。山、牛、生乳に生きる微生物、そして人々が調和し、この奥出雲の地で〝命のもとづくり〞は円熟しています。 


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※該当商品の取り扱いがない場合があります。  

大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。