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海の現状を知って食べてもらいたい

【NEWS大地を守る7月号】仲卸は進化する

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ターレ(電動運搬車)に乗る倉田社長。市場内にはターレが1000台以上走っていると言われる。

市場で買い付けた魚を小売店や飲食店に販売する”仲卸”は、海と消費者の橋渡しをする役割でもあります。「魚離れ」に真っ向から立ち向かう豊洲の目利き、倉田商店の倉田俊之社長に話を聞きました。

流通の真ん中で魚と向き合う

2018年に築地から移転し開場した豊洲市場。近代的な巨大施設だ

水産物の中央卸売市場として世界最大規模とも言われる豊洲市場。築地から移転して開場したのが2018年です。外観は近代的で最新の設備が整いますが、80年以上に渡って〝東京の台所〞の役割を担ってきた築地の伝統が受け継がれています。
仲卸売場には、500近くもの仲卸業者の店舗があります。ターレ(電動運搬車)が行き交い、魚が入った発泡スチロールの箱が所狭しと並んでいます。競りで仕入れたばかりの魚たちです。街の魚屋さんや飲食店などがここに水産物を買いに訪れます。
この仲卸売場に店を構える倉田商店は、1971年創業。社長の倉田俊之さんは2代目です。
深夜1時半、世の中が寝静まる頃に倉田さんの1日は始まります。豊洲に到着したら競り場を回ってさっそく品定め。目利きの腕の見せ所です。産地と違って、国内外から多種多様な旬の魚が集まる流通の中心地だからこそ、いいものを選ぶことができますが、そのためには魚のことを誰よりも深く知っていなければなりません。
「うちのお客さんは、小規模の飲食店など、小ロットで良いものが欲しいという人が多いんです。様々なニーズに応えられるのは豊洲だからこそです」
お客さんのバックヤードとして、責任を持ち魚と向き合っています。

競りで仕入れた魚を店舗に並べる。開店は朝5時半だ
競りに参加するときの帽子には売買参加章と呼ばれるプレートがついている。仲卸業者の証だ

ライフスタイルの変化に合わせて

競りで仕入れ、小売店に売る。かつての「仲卸」の仕事といえば、それだけのシンプルなものでしたが、時代とともに大きく変化しました。
日本の漁獲量は、ピークだった1984年には1160万トンありましたが、2015年には352万トンと約3分の1にまで減少しました。さらに魚の消費量に関しても、下降の一途を辿っているのが現状で、特に若い世代の〝魚離れ〞は深刻です。
魚が減り、そして魚を食べる人が減るという、二つの大きな課題に挟まれた状況で、仲卸としていかにして商品に付加価値をつけていくのか。
「消費者の皆さんにどうやったら食べてもらえるか。毎日毎日頭を悩ませています」
例えば、仕入れた魚の「加工」に力を入れているのも社会のニーズに合わせたもの。アジならば、3枚おろしにして、ピンセットで1本ずつていねいに骨を取り除きます。焼くだけですぐ食べられるようにした上で、両面グリルの場合、片面のグリルの場合などそれぞれの焼き方を説明したラベルも貼ります。イメージしている食卓は30〜40代・共働きの子育て世代の家庭。子どもの頃に魚を食べる習慣がなければ、大きくなってからもなかなか食べてもらえな
いからです。
「本来は骨があるほうがうまみも出るし、骨を自分で取りながら食べるのが食育的には正しいかもしれません。でも、まずは食べて魚のおいしさを知ってもらわないとどうしようもない。そのために簡便性と食べやすさを重視しています」
魚を捌く作業は、手作業で行います。「3枚おろし機」などの機械も世の中にはありますが、水を多く使うために味が落ちやすいうえ、1匹1匹の魚の個性に合わせた調整ができません。
築地市場時代は仲卸店舗内で加工を行っていましたが、豊洲に移ってからは場内の「加工パッケージ棟」に加工拠点を構えています。衛生管理や温度管理も行き届いた豊洲だからこそ、老朽化していた築地市場時代には断念せざるを得なかった事業にも取り組むことができるようになりました。大地を守る会との取引が本格的に始まったのも、豊洲に移ってからだと言います。

アジの骨をピンセットで1本ずつ抜くのも、手軽で食べやすい状態で食卓に届けるため。「普段食べない子どもがペロリと食べた」といったお客さんからの声が届くと、社員みんなで共有して喜ぶのだそう
加工場での作業。アジを3枚におろしているところ。この日は20ケース分のアジが待っていた
アジの尾を落とし、ゼイゴと呼ばれるウロコを取る。作業は丁寧で無駄がない
脂がのって食べ頃のワラサの切り身。新鮮なうちに冷凍されて食卓へと運ばれる

海の恵みをみんなでシェアする

倉田商店では近年、キッチンカーでの販売などの試みも始めています。日本橋や丸の内などのオフィス街や、豊洲のタワーマンションなどに出向いてお惣菜を販売し、買いに来てくれる消費者と直接話をします。「料理の時間がない」「調理の仕方がわからない」など直接聞いた声から、何がネックになっているのか分析し、新たな商品の開発へと繋げているのです。
乱獲、気候変動、海外との奪い合い。さらに燃油高、円安、と懸念材料は山積しています。イカ、サンマ、鮭といった定番品としていつも食卓に乗っていたものが「海にない」という状況も毎年起きています。
それでも日本は海に囲まれていて、魚種も豊富です。海の恵みをどう享受してシェアしていくか。魚を獲る人、売る人、食べる人、それぞれの立場にできることがあります。
「魚が減っている中で、売れるものしか置かない、じゃなく、あるものを売っていかないといけない。『あいつは面白いものを探してきてくれる』と言われるような、既成概念を破ってお客さんに感動を与えられる仲買人になりたいと思っています」
それでは、消費者にできることはどんなことでしょうか。いつも同じ魚を求めるのではなく、その時獲れている魚を、おいしくいただく。食べたことのない魚にもチャレンジしてみる。それが消費者の側として魚を食べつないでいくためにできることの一つかもしれません。
「海の現状を知ってもらって、限りある資源を守りながらどうやって生活していくか、みんなで考えないといけない時がきています。一人ひとりにできることがあると知ってほしいです」

丸々としたアジ。定番の魚だが初夏のアジは特に食味がいいとされる
成長とともに呼び名が変わる出世魚のワラサ。40センチから60センチはイナダ、60センチから80センチがワラサで、80センチを超えるとブリになる

「骨取りぶり(わらさ)切身」はこちら
「骨取り真あじ三枚おろし」はこちら
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大地を守る会編集部

大地宅配編集部は、“顔の見える関係”を基本とし、産地と消費地をつなぐストーリーをお届けします。