放射能汚染問題に関する、消費者向け放射能連続講座(全6回シリーズ) 「低線量内部被ばくを考える」をテーマに、 第6回講座を10月6日(土)開催。 北海道がんセンター院長・西尾正道氏の講演。 |
2012年10月3日 |
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有機食材宅配のパイオニア・大地を守る会では、消費者の放射能にまつわる「食」への不安解消を目指し、専門家を招き、全6回シリーズの放射能連続講座を開催しています。第6回(10月6日)は北海道がんセンター院長で、長年放射線治療の現場で、医療の改善に尽くしてきた西尾正道氏の講演です。年間1500人ほどの放射線治療の必要な患者と向かい合っている放射線治療の専門家から、長崎原爆、チェルノブイリ原発事事故、原発労働者の被ばくなどの事例も紹介してもらい、消費者の関心の高い低線量内部被ばくについて学びます。
これまでの5回の講座では、合計573名の消費者が会場で参加し、インターネット経由での生放送・録画は7400回以上視聴されるなど、多くの関心を集めています。第6回講座には、定員150名のところ、220名以上の申し込みがあり、高い関心を集め続けています。
放射能連続講座では、放射能に関する情報を、消費者が専門家から直接得て理解することで、「食」への不安を解消し、震災前のように信頼を取り戻すことを目指しています。当日は、前半で西尾正道氏の講演、後半は会場からの質問を集め、西尾氏に伺います。また、放射能連続講座の最終回ということで、全6回の振り返ります。
消費者の不安を取り除き生産者との信頼を回復させたい、という想いから企画スタート
大地を守る会では、福島第一原発事故以降、放射能汚染問題への消費者の不安の声に応え、ゲルマニウム半導体検出器など高精度検査機器を用いた自社測定の実施、放射能不検出(※)商品リストの公開、国の基準を大幅に下回る自主基準値の設定など、独自の放射能対策を進めてきました。
しかし、放射能の健康への影響は、専門家の間でも意見が分かれ、消費者が十分な知識を持ち判断しにくいことから、いまだ消費者の不安が解消されずにいます。この連続講座では、様々な立場の専門家を呼び、消費者が直接情報を得て考えられる場を作ることで、放射能汚染問題を乗り越え、「食」への信頼を取り戻すことを目指しています。
※ 放射性セシウム134、137及び放射性ヨウ素131の検出限界が、概ね10ベクレル/kg未満を不検出と表記。
第6回 イベント概要、講師プロフィール
■タイトル:「低線量内部被ばくを考える」
■講師:西尾正道氏((独)国立病院機構・北海道がんセンター院長)
■コーディネーター:戎谷徹也(㈱大地を守る会・放射能対策特命担当)
■日時:10月6日(土)13:30~16:00
■場所:会場:YMCAアジア青少年センター 地下スペースYホール(住所:東京都千代田区猿楽町2-5-5)
■参加者:大地を守る会の宅配会員・ウェブストアユーザー、WEBで申し込んだ一般消費者。
西尾正道氏((独)国立病院機構・北海道がんセンター院長)
函館市出身。1974年札幌医大卒業後、国立札幌病院・北海道地方がんセンター放射線科勤務、1988年同科医長。2004年、機構改革により国立病院機構北海道がんセンターと改名後も同院に勤務し現在に至る。がんの放射線治療を通じて日本のがん医療の問題点を指摘し、改善するための医療を推進。「市民のためのがん治療の会」代表協力医。著書に『がんの放射線治療』(日本評論社)、『放射線治療医の本音-がん患者2万人と向き合って』(NHK出版)、『今、本当に受けたいがん治療』(エムイー振興協会)、『放射線健康障害の真実』(旬報社)他。
●前半は、低線量内部被ばくの専門家・西尾正道氏の講演。
西尾正道氏は、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」のメンバーであり、放射線治療の第一線でがん患者と接してきました。年間1500人ほどの治療を行ってきた放射線治療の専門家です。がんと放射線の関係、これまでの放射線に関する研究から考える低線量内部被ばくの問題、急性被ばくと慢性被ばくの違い、今後取るべき対策など、医療の専門家としてのアドバイスをしていただきます。
●後半は、パネルディスカッション。これまでの6回のまとめも。
連続講座全6回を振り返り、専門家から得た知識を参加した消費者がどう生かしていくのか を考えるディスカッションを行います。コーディネーターは、弊社放射能対策特命担当の戎谷徹也が担当します。これまでの講座でテーマとなった、食事による放射能からの防護、測定を生かすための陰膳法、海の汚染実態なども振り返ります。
大地を守る会では、東北・被災地の農業の支援、放射能汚染問題への不安のない社会を目指 し、2011年10月1日より大地を守る会内に「放射能対策特命担当」を設置しました。担当には、産地開拓・仕入・栽培管理を統括する農産グループ長等を歴任した戎谷徹也が就任。今までの経験をいかし、特命担当として産地の除染対策支援や、各地での講演会や勉強会への参加、他団体と共同で進める基準策定プロジェクト「食品と放射能問題検討共同テーブル」などに取り組んでいます。
参考:大地を守る会のエビちゃんブログ「あんしんはしんどい」
(/blog/ebichan/)
ジェイラップ(福島県須賀川市)との取り組み
具体的な産地の除染対策として、福島県の生産者団体ジェイラップに高精度放射能「NaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」を無償貸与し、測定に基づく除染対策の支援をしました。団体に所属する生産者の田んぼ全てを対象に、「土壌~稲わら~もみ殻~玄米~米ぬか~胚芽~白米~炊飯」の移行データを測定。
土壌から白米への残留状況の測定を実施したり、セシウムの作物への移行抑制につながると言われるカリウム分の資材散布など、対策の効果検証をしました。結果として、玄米にて測定した341検体中337検体が不検出となり、検出された4検体も、クロスチェックをした外部機関の測定で、白米では不検出となりました。
2011年10月「大地を守る会の備蓄米」の収穫祭の様子。
子連れの家族も含め、例年以上の参加者が集まった。
●第1~5回の概要
放射能連続講座では、消費者の関心の高い6つのテーマを設定し、汚染の実態と今後の予測、海の汚染状況、低線量内部被ばくの問題など、それぞれの専門家にお話をうかがってきました。また、全6回でUSTREAMでの生中継を行い、会場の参加者やツイッターからの質問を受け、双方向の議論を実施しています。以下は、これまでのテーマと講師、コーディネーターのご紹介となります。
・第1回 6月2日(土) 「今後の影響をどう予測し、どう心構えをするか」
講師:上田昌文氏(NPO法人市民科学研究室代表)
コーディネーター:山本謙治氏(株式会社グッドテーブルズ代表取締役社長)
・第2回 7月7日(土) 「正しい食事こそ最大の防護」
講師:白石久二雄氏(元・(独)放射線医学総合研究所・内部被ばく評価室長)
コーディネーター:鈴木菜央氏(NPO法人グリーンズ代表理事)
・第3回 7月21日(土)「測定を市民のために~陰膳法から学ぶ~」
講師:早野龍五氏(東京大学大学院理学系研究科教授)
コーディネーター:(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
・第4回 8月18日(土)「海の汚染を考える」
講師:勝川俊雄氏(三重大学生物資源学部准教授)
コーディネーター:佐々木俊尚氏(作家。ジャーナリスト)
・第5回 9月15日(土)「いのちを生きる~放射能とたたかい続けた医師からのメッセージ)
講師:肥田舜太郎氏(被爆医師、元・埼玉協同病院院長、全日本民医連理事)
コーディネーター:吉度日央里氏(オーガニック・ジャーナリスト。マクロビオティックインストラクター)
【参考】大地を守る会の放射能連続講座 特設サイト (/cp/renzokukouza/)
※過去の講演内容を録画で確認できます。
●第1~5回の参加者の声
■参加理由:漠然とした不安から、情報収集を意識した参加者が多数。
・子供が小さく(5歳、3歳)、子供の健康を守るために、何ができるか模索している。正しく勉強したいと思った。
・外食の多い家族の内部被ばくが心配だった。
・放射能の影響は長期的に続くと思うので、長い目で対策を取るべく勉強したかった。
・ツイッターで講座の情報を知り、興味を持った。
・原発事故後、ほとんど魚を食べていない。不検出と言われても不安で、答えを探すために参加した。
・こういう時代の食生活のヒントが得られると思った。
■イベント後の感想:冷静な判断の大切さ、情報を知ることの重要性についてのコメントが多数。
・ただやみくもに不安になるのではなく、きちんとデータをみていくことが大事であると思いました。
・親が勉強してバランス良く、いろんな食材を子供に食べさせてあげたい。
・生産者のご苦労を改めて感じました。農業・漁業について、自分のできることをしたい。
・国の対策の程度もわかった。情報をオープンに積極的に公開してほしい。
・日々の食事には、ひとまず不安に思わなくて良いと思った。
ご参考:大地を守る会の放射能対策
①ゲルマニウム半導体検出器など、高精度検出機器を使った放射能自社測定
高精度検査機器の「ゲルマニウム半導体検出器」1台、「NaI(Tl)ガンマ線スぺクトロメータ」4台を導入。これまでに業界トップクラスの8179検体(※)を測定。
農産物は、全産地・全品目を流通前に測定しています。
・「ゲルマニウム半導体検出器」
放射性ヨウ素131、放射性セシウム134、137の核種が確定でき、検出限界値概ね3ベクレル/kg。行政等の検査機関でも用いられる高精度検査機器。検査時間は、10~20分と短く、多くの商品を高精度で測定することが可能。
・「NaI(Tl)ガンマ線スぺクトロメータ」
鉛シールド(厚さ50mmの鉛+厚さ3mmの無酸素銅)の利用で環境値の影響を1/10程度に減らし高感度な測定が可能。放射性セシウム134、137および放射性ヨウ素131の核種の検出限界が概ね10ベクレル/kg。測定時間は2~10時間程度。
ゲルマニウム半導体検出器で玄米の放射能測定をしている様子。
※2011年3月8日~2012年2月8日の実績。ゲルマニウム半導体検出器、NaI(Tl)ガンマ線スぺクトロメータによる自社測定と、外部機関による測定。
②消費者の不安に対応し、放射能不検出を確認した商品を充実。
・毎週約700品目の「放射能不検出」確認済み商品の販売
毎週、宅配注文者に対し、「放射能不検出」確認済み商品のリストを配布。注文当週に掲載する商品のほとんどを網羅する約700品目を掲載。全産地・全品目を流通前に自社測定にて検査。
・北海道や西日本の野菜を集めた「子どもたちへの安心野菜セット」が好評。
北海道と、甲信越(新潟・長野・山梨)、愛知以西の産地からの野菜を7~8品詰め合わせた「子どもたちへの安心野菜セット」を2012年6月より販売開始。週平均、5000セット、売上1000万円以上を販売する人気商品となっている。「NaI(Tl)ガンマ線スペクトロメータ」にて測定し、検出限界値(核種ごと概ね10ベクレル/㎏)以下であることを事前確認しています。
③2012年2月、国の基準値改定に先駆けて「自主基準」を設定。
2012年2月20日に、4月からの国の基準値改定に先駆け、食品中の放射性物質に対する「自主基準」を設定。
・乳幼児食品が6ベクレル/kg
(国の基準値50ベクレル/kgの1/8以下)
・米・パンが10ベクレル/kg
(国の基準値100ベクレル/kgの1/10)
など、国の基準値を大幅に下回る厳しい基準。
独自基準作成にあたっては、「内部被ばくはできるだけ低く」の考え方に立ちつつ、生産者とともに達成すべき指標として「基準値」を位置づけています。また、生産者の放射能対策の支援も行っています。
④食べて復興応援:「福島と北関東の農家がんばろうセット」の販売
放射能問題で買い控えに苦しむ福島と茨城など北関東の農家を支援するための野菜セットとして、2011年4月から、福島県、茨城県、群馬県を中心に、4~5品の野菜をセットし販売しています。
生産者の声:福島わかば会会長 丹治昭治氏
「がんばろうセット」の企画ありがとうございます。福島わかば会の生産者は福島市から二本松、郡山と県の北から南にかけて中通りと呼ばれる地方で、30名が有機農業に取り組んでいます。幸いにもこの度の震災で家屋や農業施設への直接的被害はほとんどありませんでした。停電や断水で不便でしたが心配したきゅうりやトマトも順調に生育してくれました。
しかし、福島県の野菜は福島原発事故の影響で葉物類を中心に出荷できなくなり、キュウリやトマトも県内消費だけという事態になりました。もう福島の野菜はおっかなく思って大地を守る会の会員さんに食べてもらえないんじゃないかというのが正直なところでした。これまで、20年、30年とできるだけ農薬や化学肥料に頼らないで育てた野菜を届けてきたのに、なんだったんだろうとも思いました。今は自分たちが出来ることをやるだけです。育てたキュウリやトマトなどがお届けできてうれしいです。
下記のようなことが取材できます
- 放射能連続講座の様子
- 大地を守る会の放射能対策や自主基準についての取材
- 放射能対策特命担当・戎谷徹也へのインタビュー
この他、ご要望に応じて対応させていただきますので、ご相談ください。
大地を守る会とは
自然環境と調和した、生命を大切にする社会の実現をめざし、1975年に設立のソーシャルビジネス(社会的企業)。安全・安心とおいしさにこだわった農・畜・水産物、加工食品、雑貨等をお届けする宅配サービス他を運営しています。現在、利用者数は約14万3千人、生産者会員は全国に2,500人(2012年3月末現在)
取材に関するお問い合わせ(取材ご希望の場合は、下記担当までご一報下さい)
広報担当:栗本遼、宇田川千夏、百瀬武彦
- 連絡先
- 〒261‐8554 千葉県千葉市美浜区中瀬1-3
幕張テクノガーデンD棟21階 - TEL
- 043-213-5860
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