
この春リニューアルした大地を守る会の料理酒が生まれる現場を訪ねます。創業二百年の大和川酒造店(福島県喜多方市)が醸す、「料理を支えること」に徹した酒の力。
料理酒が生まれる場所へ
郡山駅から西へ向かう磐越西線に揺られること2時間。「磐梯熱海を過ぎると雪国だからね」。そんな声が聞こえるころ、車窓からの眺めは趣を変え、やがて一面の雪景色に変わりました。雪原と冬木立が続くモノクロームの世界を抜けると、大和川酒造店のある喜多方の町が現れます。私たちが訪ねたのは、春の足音がまだ遠い2月初旬。しんとした冷気が町を包み、酒蔵では新しい料理酒の仕込みが始まっていました。
大地を守る会のこれまでの料理酒は、「飲んでも良し、料理にも良し」と一品二役の酒としてお届けしてきましたが、新しい『うまみ引き立つ純米料理酒』は、〝料理酒らしさ〞に特化して造った料理酒です。料理酒らしさとはどういうことでしょうか。
家庭料理を陰ながら支える料理酒の秘密を、蔵人の皆さんに伺います。



日本酒に味噌の麹を?
「日本酒の造り方とは真逆なんです」と話すのは、大和川酒造店で酒造りを担う板橋大さん(45歳)。飲用の日本酒と料理酒は似ているようで、じつは目指す方向がまったく違うのだといいます。まず大きく異なるのが精米歩合です。
「大吟醸なら一粒の米を半分以上削るんですが、料理酒は15〜20%(精米歩合80〜85%)に留めます。日本酒では外側の層が雑味になるので削る。料理酒ではその部分が料理を支えるうまみになるので残すんです」
直接飲む日本酒がすっきりとした味わいを目指すのに対し、料理酒は素材と合わさって初めて完成するもの。だからこそ、米の持ち味を残す方向で造るのだといいます。大地を守る会の旧・料理酒は精米歩合65%でしたが、新しいものは80%へ。より料理酒らしい〝うまみの厚み〞を求めて辿り着いた精米歩合です。
さらに板橋さんは、「料理酒には強い麹が必要なんです」と続けます。強い麹とは、うまみとなるアミノ酸を米からたっぷり引き出す力のある麹のことで、あえて味噌造りに使われる麹菌を選んでいるそうです。
「10年ほど前からいろいろ試すなかで、味噌用の麹菌に出会いました。大豆のたんぱく質をしっかり分解する力がある麹菌なので、米のたんぱく質にもよく働いて、アミノ酸に変わる量が桁違いに多かったんです」「米のうまみをのせられるだけのせたい」と、精米歩合と麹菌を見直し、さらに米麹の量を日本酒よりも多く使用。そうして生まれた料理酒を口にしてみると、香りも味わいも濃厚かつ幾重にも広がり、奥からほのかな麹の甘みも感じられます。素材の味を支え、料理を完成に導くという力強さが迫ってくるようでした。


米も水もすべて喜多方で
米と米麹、水から造られ、発酵によって素材の力がうまみへと変わっていく酒。今回の料理酒のリニューアルでは、原料の米も大和川酒造店が自ら営む大和川ファームのものに変わりました。
「この喜多方の地で作られたもので造っていきたいという思いがあるんです」と社長の佐藤雅一さん(46歳)は話します。
「田んぼの米を育てるのも飯豊山からの伏流水。50年前の雪解け水が流れ出ているといわれていて、非常にやわらかい味わいの軟水です。この母なる水で育った喜多方の米を、その水で醸す。私たちは地酒の先の〝郷酒〞を造りたいんです」
春の田植えから秋の稲刈り、精米、酒造りまでを喜多方で、自社で一貫して担う体制は、農業への思いとも深くつながっています。
「大地を守る会との出会いは1992年の冷害の年だったと思います。米を何とかしなくてはということで、『純米吟醸 種蒔人』の前身となった『夢醸』の酒造りからお付き合いが始まりました。当時から農業の先行きには危機感があった。未来に米を作る人が残るのかという問題は30年以上たった今も解決していません。うちが農業法人を立ち上げた目的は、そうした社会的課題の解決のためでもあります。当初は1haにも満たなかった田んぼが、今は60haになりました。喜多方の米を絶やさず、この地の酒をつないでいきたいと思っています」
喜多方の水が育てた米を、喜多方の人が醸す。その一貫した営みの先に、この料理酒のうまみが生まれています。そしてその営みは、料理を支える酒の未来を照らしています。







私の料理がおいしくなる
自分の料理の格が上がる。何でもない煮物の味が締まる。「この料理酒でなければ」と目が覚めるような経験のある方もいるでしょう。一方でレシピに沿って何となく使っている方もいるかもしれません。料理酒は調味料の中でも隠れた存在ですが、意識を向けて選ぶと、料理を支える名脇役であることを実感します。
新しい料理酒について蔵人の皆さんに伺うと「玉子焼きに少し入れるだけでふっくらとして、じゅわ〜っとだし感が出る」「ごはんを炊くときにはキャップ一杯。粒が立ってうまいんです」と、皆さん一様に「料理が一段上がる」と話します。しゃぶしゃぶのだしに、唐揚げの下味にもおすすめ。「新しい料理酒はうまみがたっぷり詰まっているので、これまでのものより少なめに使っても大丈夫」とのことです。ぜひ普段の料理に試してみてください。
COLUMN
一般的に料理酒として流通しているものの多くは食塩などを加えてそのままでは飲めない状態にする「不可飲処置」が施されています。不可飲処置をすることで酒税がかからず、「酒類」ではなく「食品」として扱われ、販売免許のない店舗でも取り扱えます。
一方、日本酒は米と米麹と水で造られますが、醸造アルコールを加えることが認められており、食品表示には「醸造アルコール」と記載されます。これを使わないお酒は、特定名称酒の規定により「純米」と名乗れます。
大地を守る会の料理酒は、食塩や醸造アルコール、風味調整の糖類やアミノ酸等も加えていません。原材料は米と米麹のみ。不可飲処置を施していないため「酒類」として扱われ、造りは純米酒と同じです。料理のために純米で仕込む、ぜいたくな料理酒なのです。
大和川酒造の「うまみ引き立つ純米料理酒」はこちら
※該当商品の取り扱いがない場合があります
写真:寺澤太郎














