日本で流通する牛肉のわずか1%の短角牛。東北と北海道のごくわずかな地域で育てられています。冬は人里で過ごし、春から秋は広々とした牧草地で放牧されます。年に一度、短角牛が仔馬のように牧場を駆け巡る瞬間があります。それが「山上げ」です。新緑がまぶしい5月初旬に行われた「山形村短角牛山上げ&植林ツアー(共催・大地を守る会・森と木の住まいづくりフォーラム、総合農舎山形村)」の様子をお伝えします。
トラックから降りるのを怖がります。牛舎で生まれた子牛たちにとって、広い牧場は初めて見る世界。恐る恐るトラックから出てきます。
1年に一度の山上げの光景を消費者のみなさんにも見ていただきたい! そして、かつて短角牛を放牧していた牧野※に植林をし、再び森に還そうという試みで始まったこのツアー。今回は大地宅配の会員6名と社員10名で山形村(岩手県久慈市山形町)を訪ねました。※「牧場」ではなく、自然な山地の地形を生かした放牧地のため「ぼくや」と呼びます。
ゴールデンウィーク明けのこの日程は、昨年はツアーの直前に雪が降ったという程の朝晩の寒さの一方、里山に山桜やレンギョウの黄色など色鮮やかな春の訪れを感じる季節。
冬の間牛舎で産まれた仔牛たちは、牧野に放されます。最初は見慣れない景色に戸惑うような仔牛たちも、すぐに牧野を自由に駆け回ります。後ろ足をピョンと蹴り上げ跳ねる様子はまるで仔馬のよう。母牛や他の仔牛とじゃれるように駆けっこする無邪気な仔牛たち。時には脚をもつらせそう。
広い青空とまばゆい新緑に囲まれた牧場の中で、生命の喜びを間近に感じるこの体験は、わたしたち参加者にとっても気持ちが良く、癒される時間となりました。
牛ってこんなに走り回る動物なの? 牛のこんな姿を見れるのは山上げならでは。
思いっきり走り回り、牧場を満喫した子牛は、母親を見つけて、寄り添います。
今年は珍しい全身真っ白の短角牛の子牛にも会えました。
4回目を迎えたこのツアー。年に1度の幻の短角牛の特別な時間を満喫しまた。広大な牧場を気持ちよく駆け巡る牛たちの姿は参加者の心に深く焼きついたことでしょう。
山上げを見学した後は、日本有数の木炭の生産者・
谷地林業を見学。電気やガスが普及する前、この地は林業と木炭の生産が盛んでした。林業が衰退するなか、地域の山地を守ってきたという誇り、そして今後も地域の森林資源を活かし、質の良い炭を作り続けたいという工場で働く方の言葉に、力強さを感じました。
通称「岩手大量窯」。こんな大きな釜は全国的にも珍しい。
ボンネット型トラック。都会ではめったに見ないですが、林業地ではバリバリ働いています。
おみやげに、松ぼっくりの炭(化粧炭)をいただきました。家に飾れば、炭の消臭作用で部屋のにおい消しにも使えそう。
後篇では、ツアーのもう一つの目的、使われなくなった牧野に木を植えて、森に還そうというお話です。